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空の検索で1006件の結果が見つかりました。

  • ワインにマメがでたらどうすれば良い?

    ナチュラル・ワイン最大の難敵が、通称「マメ」と呼ばれる欠陥です。 ワインが酸素に過剰に晒された時に起こるとされている、 細菌汚染 の一種で、主因は 乳酸菌 である可能性が高いとされていますが、酵母菌の ブレタノミセス との関連も指摘されています。 海外では、 Mousiness=ネズミ香 と呼ばれています。 マメには、 pH値が上がらないと揮発しない という性質があり、極めて厄介な存在です。 (一部のマメ関連物質の中には、通常のワインのpH値の中でも揮発できるものがあるとの研究報告もあります) マメが酷く出てしまったワインを、ワインだけで楽しむのは(個人差もありますが)、一般的には非常に困難です。 しかし、様々な方法で、マメの発現を多少は抑え込むことができます。 マメが発生したワインを無駄にしたくない時の参考になればと思います。 1. pH値が上がりすぎないようにする 実験したところ、レモン果汁を飲んで口内のpH値を下げた後で、マメの発生したワインを飲むと、マメをほとんど感じなくなりました。この現象を応用すると、酸味の強い料理(ピクルス、ヴィネガードレッシング、酢の物等)とマメの発生したワインを合わせると、非常に高い可能性でマメを封じ込めることができます。 更なる応用としては、マメの発生してしまったボトルに、 抜栓したての同じワイン を少量混ぜると、マメの発現がかなり抑えられます。 逆に、 強い塩分はpH値を上げてしまう 可能性があるので、要注意です。 2. 同系統のより強い風味で印象を薄める 主に スパイス と分類される風味は、 マメの「印象」を抑え込む (pH値のコントロールとは違い、マメの発現を抑え込むわけではない)ことができます。特に、 ニンニク、生姜 は、この効力が強いようです。 3. 銅と接触させる 推奨はしませんが、効果はあります。銅イオンは結合力が強く、 マメもかなり吸着 してくれますが、同時に他の香味成分とも結合するので、 少し味が抜けてしまいます 。綺麗な十円玉等をワインに少し漬けておくだけです。ただ、銅はガラスよりも硬いので、ワイングラスやデキャンタに10円玉を入れるときは細心の注意を払ってください。 4. 放置する 極稀にマメが鎮静化しますが、確実性は無く、どれくらいの時間が必要かも千差万別です。ほとんどの場合、マメが感じられなくなったとしても、その頃には ワイン自体の変質 が相当進んでいます。 5. 可能なボトルを限り動かさない マメを抑え込むというよりは、 悪化させない ための手段です。 可能な限りボトルを動かさず揺らさず、注ぐ時も液体に刺激が強くいかないように、ゆっくりと注ぎましょう。 6. 料理酒に使う 飲むことが難しいレベルでマメが発生してしまった場合は、料理酒にしましょう。しかし、マメの特徴が完全に消失するわけではありませんので、赤ワインソースのようにワインの風味が全面的に出るような料理への使用は控えましょう。 7. サングリアにする pH値とマメの関係性を念頭に、サングリアにする歳は、柑橘類をできるだけ多く使いましょう。強くマメが発生してしまったワインの場合は、サングリアにしてもマメの風味が残ってしまうこともあります。

  • 初心者にお勧めのワインオープナー特集

    初心者必見のワインオープナー選びのコツをご紹介いたします。 弘法筆を選ばず。 とは良く言ったもので、実際ワインオープナーも熟練してくるとなんでも良くなったりはしますが、初心者の方はちゃんと選ぶことをお勧めいたします! 検討ポイントは以下の通りです。 1. ダブルアクション or シングルアクション 2. ホールド部分の素材(硬さと手触り) 3. 重量 4. スクリューの長さ 1に関しては、ほとんどの方が ダブルアクションの方が楽 だと感じるでしょう。 実際、ダブルの方が総合的に使いやすいですし、難しいコルクも開けやすいと思います。 2に関しては、思いのほか重要です。 素材は出来るだけ硬いものの方が良い です。つまり、硬い木やカーボン、メタル等ですね。素材が硬いと、 力が分散しにくい ので、より少ない力で抜栓できます。プラスチックは力が分散してしまうので、あまりお勧めしません。 3に関しては、2と関連しておりますが、 ある程度の重量 があったほうが、力が分散しにくいです。ただ、持ち運びをする方には重すぎると難しいですね。 カーボン素材だけは例外 的に軽くても大丈夫です。 4に関しては、スクリューが短くてシングルアクション、のタイプだと抜栓しにくいコルクがたまにありますので、注意してください。 高価ですが、 電動式 というのもあります。優れたものは、非常に抜栓が容易ですが、せっかくワインを開けるのでしたら、もう少し、風情を楽しみたいものですよね。 バタフライ式 は簡単に思えますが、失敗することも多々あります。 レバー式 は優れたものでしたら、非常に楽に、そして素早く抜栓することができます。 どんなオープナーでも、使い慣れることが何よりも重要です。 このオープナーじゃないとダメ!ということはありませんので、予算や見た目、基本スペックで選んで、あとは使い込んでいきましょう。

  • 最近よく聞くオレンジワインって何?

    しかし、このカテゴリーは、数多くの誤解をされているため、 いくつかのテーマに分け、改めて整理整頓しながら検証していきます。 1. 名称 オレンジワインという名称は、イギリスのインポーター発祥だそうです。 オレンジワインが必ずしもオレンジ色をしていない、オーストラリアにオレンジという産地がある(この理由を気にする人はほぼ居ないようですが)、と言った理由で、アンバーワイン、醸し発酵ワイン(オレンジワイン以前の一般的な呼び名)、ブラウンワイン等々、様々な名称が乱立しました。 しかし、この名称論争に関しては、圧倒的な市民権を獲得したオレンジワインの圧勝と言っても良いでしょう。 ワインのカテゴリー名とは、 ただのシンボル です。 必ずしもそのシンボルが示す色と一致する必要など全くありません。 真っ赤な赤ワインなどありませんし、 ロゼワインのどのあたりが薔薇色なのかも曖昧ですし、 真っ白な白ワインも存在しません。 これらの事実からも、オレンジワインがオレンジ色じゃない、という論争が本質的に破綻している事は明白です。 2. オレンジとナチュラル オレンジワイン=ナチュラルワイン では決してありません。 赤、白、ロゼ、スパークリングと同様に、カテゴリー名とは、「 製法に付与される 」ものです。 つまり、 「クラシックな白ワイン」というフレーズが、 「クラシック」と「白ワイン」という二つのシンボルを用いて表現されているように、 「ナチュラルなオレンジワイン」という言葉の使い方が正しいとするべきでしょう。 3. 特徴 ①タンニン 僅かにでも(樽由来ではない)タンニンが存在している。 果皮や種子ごと漬けこんで発酵させるので、 正しいオレンジワインには、必ずタンニンが相応に存在しているはずです。 正し、タンニン量は、葡萄品種や生育環境、浸漬時間にも左右されますので、 オレンジワイン=タンニンが強い、とは限りません。 ②酸化的特徴 酸化的特徴(褐色化した色調と、フレッシュナッツの様な香味)は、 しばしばオレンジワインと結び付けられますが、 これは正しいとは言えません。 確かに、オレンジワイン復興の初期には、酸化的特徴が強くでたワインが多かったのも事実ですが、現状は異なると明確に言い切れます。 発酵容器の種類、目減り分の補充頻度、発酵温度等の管理などで、 酸化的特徴のコントロールができるからです。 ③土甕発酵 オレンジワイン=土甕発酵ワイン、では決してありません。 4. 製法上の特徴(総体的定義) オレンジワインというカテゴリーの定義は、 製法上の特徴に限定するべきです。 そうすることによって、オレンジワインというカテゴリーが、 赤、白、ロゼ等と同じラインに立つことができる からです。 では、総合的に見た定義を、いくつかの項目に分けて検証していきましょう。 ①葡萄品種 白葡萄 、もしくは グリ系葡萄 の 単独使用 、もしくは 混醸 ②醸造方法 葡萄の果皮 (場合によっては、 種と果梗 も)を 果汁と共に発酵 させる。 漬け込み期間に関しては議論の余地がありますが、 「3日以上」が妥当と思われます。 まとめますと、つまりオレンジワインとは、 1. 白葡萄、グリ系葡萄の果汁を三日以上、果皮(種と果梗もOK)を漬け込んだ状態で発酵させたワイン 2. 実際のワインの色は関係ない 3. ナチュラルワインと同義ではない 4. 必ず葡萄由来のタンニンを含む 5. 酸化的特徴は必須ではない 6. アンフォラ等の土甕で発酵させる必要はない という条件を満たしたワインのことです。

  • 熟成ポテンシャルの謎に迫る

    “熟成のポテンシャル”と言うと、様々な角度からの見解があります。 どんな年のものか? 醸造によるアプローチは? 生育環境の特徴は? これらはつまり、 “いつ・誰が・どこで” というキーワードに集約できますし、そのポテンシャルを図る上でそれはとても重要です。 今回ご紹介する イランシー というアペラシオンは、多くのソムリエにとってそれ程魅力を秘めたアペラシオンではないかもしれません。 シャブリの南西部、グラン・オーセロワ地区にあり、石灰岩質の土壌からは限りなくピュアで、やや内向的ながらチャーミングな表情のピノ・ノワールが生み出されます。しかし、1999年にヴィラージュとして認定されるまでレジョナルの1つであり、ブルゴーニュという産地からこの土地だけを切り取ってみた時、果たしてこの偉大な産地を愛して止まないワインラヴァー達の目にどう映るか、というのは明白です。 話を元に戻します。 “いつ・誰が・どこで” 2003年から。 ドーヴィサ(*1)が。 イランシーで。 生産者 : Vincent Dauvissat / ヴァンサン ドーヴィサ ワイン名 : Irancy / イランシー 葡萄品種 : Pinot Noir / ピノ ノワール ワインタイプ : 赤ワイン 生産国 : France / フランス 生産地 : Bourgogne / ブルゴーニュ 地区 : Chablis(Grand Auxerrois) / シャブリ(グラン・オーセロワ) ヴィンテージ : 2018 インポーター : Luc Corporation 参考小売価格: 7,000円 ご紹介しているのは2018年ですが、私の手元にあった2006年との比較を楽しみながら、彼のワインの魅力について。 お食事との組み合わせについて。 あれこれ考えてみました。 2018年はコート・ドール(有名な村が集まるブルゴーニュの中心地)同様、イランシー擁するシャブリ地区も恵まれた明るいヴィンテージだった様です。 私の経験上、彼の赤はどの年もこの土地の赤としては色調が濃いと感じますが、実際口にしてみても、集中力のある果実の充実感が感じられます。 余韻までも、一定の緊張感を保つ所は未だに、幾重にも織り重なった糸の如く、簡単にはほどけてくれない予感がします。 2006年のヴィンテージは、コート・ドールの難解さとは異なり、この土地の評価は比較的良好です。 12年の経過というと、いわゆる偉大なワイン達にとってはまだまだ序の口 でありますが、ピノ・ノワールは 熟成のどの段階で楽しみたいか 、という 飲み手の趣向がとても前向きに捉えられる 点も、良い葡萄だと思っています。 このワインに関しては、抜栓直後より濃密な黒い果実のキャラクターがしっかり表現され、それも限りなくリキュールの様に滑らかな溶け込み方をしていた事に、とても驚きました。 決して後ろ向きな意味でなく、味わいがシンプルな構図である事にも笑みが零れます。 何故、この様な熟成の経過であったのか。 それを解いてゆくのは、答えのない考察かもしれませんが、この時ほどワインの本質に触れていると感じる事はありません。 彼のイランシーのみで、コース料理にデギュスタシオンを組んでみたいと思えるほどの味わいの幅を感じましたが、季節の食材との組み合わせ、という点では南瓜(カボチャ)を合わせてみたいと思います。 若々しさとシリアスさが伺える2018年は、加熱していない極薄くスライスにした南瓜、アンディーブ、胡桃に鴨や鹿の生ハムを使ったサラダ。 入荷して2日目までの、新鮮な白トリュフをかけても良いかと。 2006年であれば、熱を加えて甘味を引き出した方が良いでしょう。 飴色玉ねぎ、カーボロネロ、菊芋、厚切りのベーコンとキッシュにするととっても美味しい組み合わせになりそうです。 誰が言ったか “たかがイランシー。されどイランシー。” 今、私が言ったものです。すいません。 “熟成のポテンシャル” とは、自 身の経験値とセンス、そして一口含んだその瞬間の閃きから感じる、あるいは予測するもの で、 対象がグランヴァンである必要は無い と思います。どんなワインにも、その可能性はあるのかもしれません。 それは4年かもしれませんし、15年かもしれませんし、50年かもしれませんが、金額と関係なく、自分の手元で熟成させる。もしくは時の経過を待つ。 そんな喜びを、より多くのワインラヴァーと共有したいものです。 (*1)ドーヴィサ:シャブリ地区最高の生産者の一人。葡萄畑ではビオディナミ農法を採用し、熟成にはシャブリ伝統のフュイエット(132ℓの小樽)を用いる、シャブリきっての伝統派として知られる。 <ソムリエプロフィール> Sourire de cheucho Inc. Sommelier 若山 程映(ワカヤマ ノリアキ) 1986年 神奈川県出身。 目黒ホテルクラスカにてサービスマンとしてキャリアをスタート。 ブルゴーニュ地方で修行経験があり、当時からシェフであった湯澤秀充氏からの影響が大きく、ソムリエを志す。 その後、赤坂のセレブールでソムリエとしてのキャリアをスタート。 銀座のレストランエール、中目黒のCRAFTALEにてシェフソムリエ、支配人として勤務。 株式会社スーリールドシュシュの本部ソムリエとして、アサヒナガストロノーム、レグリス、ランベリーに勤務する傍ら、自由が丘ワインスクールの講師や他企業のワイン監修などコンサルタント業務、プロ向けのワインセミナーなども行っている。

  • Advanced Académie <1> (ワイン産地と歴史の関係)

    Advanced Académie では、 中級者以上を対象 として、ワインにまつわる様々な謎を紐解いていきます。正しく、そして冷静な理解は、必ず皆様のワイン愛好家としてのレベルを引き上げてくれでしょう。

  • ブルゴーニュラヴァーにとって、今、南アフリカが面白いワケ

    この一年は、海外のワイン産地に行くことも、海外から生産者が来日することもなく、テイスティングの機会が圧倒的に少なくなってしまっていた。そんな中、年の瀬迫った12月上旬、筆者自身の念願のラインアップでのテイスティングが叶ったので、今回のコラムでレポートしようと思う。 フォーカスしたのは、南アフリカのテロワールの表現を追求する気鋭の2生産者、 ストーム・ワインズとクリスタルム で、 シャルドネとピノ・ノワール の シングルヴィンヤードワイン を揃えた。 ストーム・ワインズ 最初のフライトは、 ストーム の4アイテム。ファーストリリースとなった リッジ・シャルドネ 2019 と、 ピノ・ノワール3部作リッジ、イグニス、フレダのヴィンテージ2018 。 Storm Wines / Ridge Chardonnay 2019, W.O. Hemel-en-Aarde Ridge Storm Wines / Ridge Pinot Noir 2018, W.O. Hemel-en-Aarde Ridge Storm Wines / Ignis Pinot Noir 2018, W.O. Upper Hemel-en-Aarde Valley Storm Wines / Vrede Pinot Noir 2018, W.O. Hemel-en-Aarde Valley これらのワインが生産される へメル・アン・アールダ・ヴァレー は、ケープタウンから東へ約120キロ、ヘルマナスという小さな海辺の街を拠点に見ると、北東方向に形成された渓谷で、 自然の冷却効果をもたらす海の影響を強く受ける海洋性気候 。 この海は、南極からの冷たいベンゲラ海流がインド洋と合流し、大西洋へと北上する。 南緯34度付近に位置する南アフリカのワイン産地 にとって、 暑さを和らげる重要な自然要因 となっている。 ウォーカー・ベイ 地区のまだ比較的新しい産地だが、海側から内陸へと順に、「 へメル・アン・アールダ・ヴァレー ( 以下ヴァレー )」「 アッパー・へメル・アン・アールダ・ヴァレー ( アッパー )」「 へメル・アン・アールダ・リッジ ( リッジ )」という3つの小地区(Ward)に分類されている。 この土地でピノ・ノワールの可能性を切り開いた先駆者 ハミルトン・ラッセル で、10年間チーフワインメーカーを勤めた ハネス・ストーム は、こ の3つの小地区それぞれの単一畑からピノ・ノワールを生産する唯一の生産者 である。というのも、このエリアではほとんどの生産者が第一世代としてブドウ畑を切り開いているため、3つの小地区のいずれかに属し、その表現に終始しているのだ。 つまり、 ハミルトン・ラッセルやブシャール・フィンレイソン なら、 最も海に近いヴァレー 、現在は2世代目が参画している ニュートン・ジョンソン は、 谷の中間に位置するアッパー 、 アタラクシアやクリエイション は、 谷の最も奥のリッジ に、それぞれ自社畑を持ち、その小地区の表現にフォーカスすることになる。 造り手が変われば、純粋なテロワールの比較は困難になるため、 同一生産者が同一品種ピノ・ノワールでそれぞれの小地区から生産したワインを比較することで、はじめてこの細分化された小地区のテロワールの違いを確認することができる 、というわけ。 耳慣れない固有名詞が並んで、少々混乱されたかもしれないが、ブルゴーニュやアルザスのワインがお好きな方ならそろそろお気づきだろう。小さなエリアに異なるテロワールがあり、それをピノ・ノワールという繊細な品種でなるべく忠実に比較する醍醐味を、ワインラヴァーなら共感してくれるはず・・、と願いたい。 リッジ・シャルドネ2019 は、蜜りんごやかりんのようなフルーツに、岩塩や石を思わせるミネラル感があり、上品なオークがワインによく溶け込んでいる。 標高330メートルの南東向き斜面で、 石が多い頁岩粘土土壌 。同じ畑から造られる リッジ・ピノ・ノワール2018 は、軽やかでチャーミングな赤系果実、オレンジピール、旨味を伴うフィニッシュ。 3つの小地区の中で最も冷涼で収穫時期が遅くなる特徴 が、新鮮な果実味と骨格を成す酸味から感じられる。 渓谷の中央に位置するアッパーの土壌 は、他の二つと違い 風化した花崗岩が基調 になる。 イグニス・ピノ・ノワール2018 は、やや閉じ気味のアロマだがスミレやバラのような華やかさが妖艶に開いてくる。かみごたえのあるタンニンの存在感があり、美しいバランス。 最も温暖なテロワールのヴァレー から造られる フレダ・ピノ・ノワール2018 は、果実の熟度とボディの厚みがあり、わずかにスパイスのアクセント、ジューシーで柔らかい印象だ。 いずれの畑も2008年から2010年の植樹でまだ若い樹齢ながら、こんなに繊細な表現ができる ハネス・ストーム には、国内外から大きな期待が寄せられていて、 すでに入手困難となっている 。 クリスタルム セカンドフライトは、現地とオンラインで中継して クリスタルム のピ ーター・アラン・フィンレイソン がテイスティングをガイドしてくれた。 ピーター・アラン は、ヴァレーの老舗メーカー、 ブシャール・フィンレイソンの3世代目 で、 2007年に兄弟で独立してクリスタルムを設立 。現在は妻の実家であるボット・リヴァーのガブリエルスクルーフを拠点にしている。 ストームのリッジの畑から50メートルの至近距離にあるシングルヴィンヤードから、 クレイ・シェルス・シャルドネ2019とキュヴェ・シネマ・ピノ・ノワール2019 。そして、 お隣オーヴァーバーグ地区のエランズクルーフ という標高700メートルの山の中にある畑から造られる マバレル・ピノ・ノワール2019 と、 同じワインの2014 を比較に用意した。 Crystallum / Clay Shales Chardonnay 2019, W.O. Hemel-en-Aarde Ridge Crystallum / Cuvée Cinéma Pinot Noir 2019, W.O. Hemel-en-Aarde Ridge Crystallum / Mabalel. Pinot Noir 2019, W.O. Overberg Crystallum / Mabalel. Pinot Noir 2014, W.O. Overberg ピーター・アラン によると、「 2019ヴィンテージは数年続いた干ばつが解消した年で、収量も程よく、両品種にとって良いヴィンテージになった 」とのこと。特に、「リッジの特徴である 鉄分や粘土を多く含む土壌 では、果実の凝縮度とフレッシュな酸味が表現され、クレイ・シェルスはとても香りが豊かで複雑」とコメント。 ストームのシャルドネと比較すると、果実やミネラルの特徴が共通して感じられるが、 クレイ・シェルス・シャルドネ2019 は 2600リットルのフードル (Stockinger製*1)を発酵・熟成に使用しているので、より果実の特徴がピュアに感じられた。 キュヴェ・シネマ・ピノ・ノワール2019 は、繊細な赤いベリーにザクロのような風味で、瑞々しい透明感のあるワイン。きめ細かなタンニンで、わずかに ストームのリッジ・ピノ・ノワール2018 よりストラクチュアを感じる。 ピノの醸造に全房をなるべく取り入れたいというピーター・アラン だが、2019は果梗の熟し具合もよかったため、これまのキュヴェ・シネマで最も多い70%の全房使用率になっている。とはいえ、全房発酵による梗の特徴が目立つワインではない。 「この畑のピノは十分に凝縮感のあるワインになるので、発酵中に パンチングダウン (*2)は行わず、数回の ポンピングオーヴァー (*3)を行い、4〜6週間かけてゆっくりと穏やかな抽出を行っている。ヴィンテージの特徴を表現しつつも、どんな年でもテロワールの一貫した個性と品質のワインが造れる畑」と評価した。 一方、 マバレル の畑は、 海岸線からはおよそ50キロ内陸にあり、標高700メートルの高地という全く異なるテロワール だ。高い山に囲まれているため、 日照量も少なく なり、 冬は雪が積もるほど冷涼な気候 で、 ブドウの成熟期間はより長くなる 。果皮が厚いブドウになり、果梗まで熟しにくいため、 多くても全房比率は10%未満 にとどまるという。 「2019年は開花時期の悪天候により収量が三分の一に減ってしまった。その分、果実の凝縮度は通常より高く仕上がった」と、解説。ダークフルーツの特徴に、スパイスやミネラル感が加わり、複雑な味わいで、熟成のポテンシャルも感じられた。 そして、この マバレル がどのように熟成をしているかをみるため用意した ヴィンテージ2014 については、「この10年間で最も涼しく、雨も多かった年。そのため、全房は使わず、ライトなワインで、そうしたヴィンテージの特徴が今飲んでもよく表れている」とコメント。紅茶や土、キノコのような熟成による特徴が綺麗に出ていて、とても繊細だが、発達した果実風味も保たれていて、ちょうど今がいい飲みごろと感じた。 日本に行くのを毎年楽しみにしているという ピーター・アラン 。 今年は画面越しになったが、来年は直接会って、また一緒にテイスティングしよう、と約束してzoomの画面を閉じた。 (*1) Stockinger:ワインメーカーにとってのストラディバリウスと称される、オーストリアの樽製造メーカー。近年、気鋭のテロワールワイン生産者から絶大なる支持を得ている。 (*2)パンチングダウン:発酵中のタンクに上部から棒などを押し込み、タンク上部に滞留した果帽を崩しながら沈めることによって、タンニン、色素、香り等の抽出を促す手法。かつては、フランス語の「ピジャージュ」という呼称の方が一般的であった。 (*3)ポンピングオーヴァー:発酵中のタンク下部から液体を吸い上げ、タンク上部から再びかけ流す手法。果帽の液体内での循環を促す為、より均一的な発酵が実現できる。また、抽出もパンチングダウンに比べるとソフトになる。かつては、フランス語の「ルモンタージュ」という呼称の方が一般的出会った。 生産者 :Crystallum / クリスタルム、Storm Wines / ストーム・ワインズ 生産国 :南アフリカ インポーター :Raffine 参考小売価格(税別) :全て¥6,300(最新ヴィンテージ) <ライタープロフィール> 高橋 佳子 / Yoshiko Takahashi DipWSET Y’n plus 兵庫県生まれ。 2000年、大阪北新地のワインバーでソムリエ見習いとしてワインの世界に足を踏み入れる。 2002〜2003年渡豪、ヴィクトリアとタスマニアのワイナリーで研修。帰国後、インポーター勤務時に上京。ワイン専門卸会社勤務を経て、2013年よりフリーランス。 ワインスクール講師、ワイン専門通訳&翻訳、ワインライター、ワインコンサルタントなど、ワイン業界でフレキシブルに活動する。 2016年、WSET® Level 4 Diploma取得* 2017年、PIWOSA Women in Wine Initiative 南アフリカワインのインターンシッププログラム参加 2018・2019年、Royal Hobart Wine Show International Judge 2019年より、WOSA Japan 南アフリカワイン協会 プロジェクトマネージャー *WSET®は、イギリスロンドンを拠点に世界70カ国以上で提供されている世界最大のワイン教育プログラム。Level 4 Diplomaはその最高位資格。

  • 家庭でのワイン保存

    ワインを開けたらいつまでに飲めば良いのか? 抜栓後はどのように保存すれば良いのか? ご家庭でワインを開ける時、こんな悩みを抱えてませんか? まず、色々なパターンをご紹介する前に、ワイン業界最大の嘘の一つについてお話します。 「ワインは抜栓後、時間と共に劣化していき、そのうち酢になる」 このような古い誤情報に騙されないでください。 ワインは抜栓後、時間と共に「変化」致しますが、必ずしも「劣化」するとは限りません。 ワインが酢になるには、酢酸菌が繁殖する必要がありますが、酢酸菌繁殖の適温は25~30℃ですので、室温管理では抜栓後に危険が生じますが、セラーや冷蔵庫に保存している限りは、抜栓後でも酢になる可能性は極めて低いです。 変化と劣化の違いを知ることは、とても重要な意味をもちます。 今回ご紹介する保存手段は、どれも変化のスピードを緩やかにする機能を有していますので、より鮮明に変化と劣化の違いを知ることができるでしょう。 では、様々な保存方法を状態保存能力、メリット、デメリット、注意点と共にご紹介していきます。 【製品名:コルク/スクリューキャップ】 Amazon価格:—— 状態保存能力:ちゃんと挿しこめば密閉力は高いので意外と有能。スクリューは抜群に密閉力が高いので、より安心。 メリット:ワインに付属しているので無料。 デメリット:抜栓したら、コルクによっては膨張してしまい挿し込みにくい。 注意点:ワインに触れていた側のコルク面がブショネでなくても、 逆側がブショネ になっているケースがあるため、挿し易いからと確認せずに逆側から挿し込むのは辞めましょう。 DIAM等の合成コルク はこういう用途には使い易いので、キープしておくことをお勧めいたします。スクリューキャップは回すだけなのでとにかく楽です。 【 製品名:ワインストッパー 】 Amazon価格:色々あります 状態保存能力:コルクをやや下回るものが多い。 メリット:コルクよりも挿し易い。 デメリット:瓶口の口径によってはうまく挿さらない。 注意点:密封力がコルクよりも弱いものが多く、特にボトルを寝かせて保存する場合は 液漏れの危険性 が高い。 【 製品名:アルゴン ワインセーブプロ 】 Amazon価格:¥4,000程度  状態保存能力:平均して1週間程度は大幅に状態の変化を緩やかにできる。 メリット:ガス添加系の中では比較的低コスト。 デメリット:抜栓して注ぐガス添加が必要になり、手間がかかる。 注意点: 優秀なストッパーとの併用 で真価を発揮するので、単体での使用の場合は過信は禁物。 【 製品名:ヴァキュヴァン 】 Amazon価格:¥3,000程度  状態保存能力:コルクをやや上回るが、ワインセーブプロとの併用を推奨。 メリット:密閉力が高く、瓶口の口径を選ばない。 デメリット:空気を抜き忘れると、栓をしていないのと変わらない。 注意点:空気を必要以上に抜こうとし過ぎると、ワインの香気成分まで抜いてしまう。 【 製品名:アンチオックス 】 Amazon価格:¥2,000程度  状態保存能力:コルクを大幅に上回るが、ワインセーブプロとの併用を推奨。 メリット:密閉力が高く、被せやすく、瓶口の口径を選ばず、何より手軽。 デメリット:頻繁に再開封するとそのたびに酸素がたっぷり入ってしまうため、カーボンによる吸着が追いつかない。 注意点:手軽なタイプとしては現状最高レベルであるが、ワインセーブプロとの併用が好ましい。 【 製品名:コーラヴァン 】 Amazon価格:¥34,000〜 状態保存能力:正しい使用法を守る限りは最強。抜栓しない状態での通常の経年変化との差異は、ほぼ判別できないレベル。 メリット:超高級ワインであっても、少しずつ飲める。抜栓後の変化が早いワインでも問題なく使用できる。 デメリット:コルクの状態が悪いワインには向かない。スクリューキャップやガラス栓、プラスチック製コルク等には使用できない。本体価格、カプセル価格共に高価なため、デイリーワインには使用する意味があまりない。 注意点:コーラヴァンは、コルクの自然な収縮力を利用をした機器であるため、コーラヴァン使用後、コルクが収縮しないうちにコルクがワインに触れると隙間からワインが染み込んでしまい、コーラヴァンの真価が発揮されない。 いかがでしたでしょうか? 手軽なタイプとしてはアンチオックスがオススメです。 より変化を緩やかにしたければ、ワインセーブプロとの併用を。 最強はコーラヴァンですが、価格と正しい使用法を守ることが重要です。

  • ポルトガル・プレミアムワイン

    「世界でも最もコストパフォーマンスに優れた国の一つ」 これが、ポルトガルというワイン伝統国の、ワイン市場における現代の一般的評価だろう。 現代の、と付け足したのには理由がある。 ポルトガルと言えばポートワイン、というイメージからの脱却が、 ヴィーニョ・ヴェルデの躍進、ドゥロにおけるスティル・ワイン革命、 そして近年では、リスボン周辺のダイナミックなナチュラルワインの隆盛によって、 見事に成されたからだ。 しかしポルトガルワインが、プレミアムワインと関連付けて語られることは、今でも非常に少ない。ポルトガルでは、数々の生産者がプレミアムワインと呼ぶにふさわしい品質と高価格のワインを、20年以上前から手がけてきたにも関わらず、である。 プレミアムワインの産出国として盛り上がらなかった理由はいくつも考えられるが、その最たる理由は、ポルトガルのプレミアムワインは、他国の最先端のワインに比べ、「時差のある味わい」が非常に多かったことにある。 10年遅れている。 筆者がポルトガルのプレミアムワインをテイスティングする度に感じてきた、他国との時差である。 2020年11月18日に、「ポルトガル投資・貿易振興庁(AICEP)」が「ポルトガルワイン試飲会実行委員会」との共催した「プレミアム・ポルトガルワインテイスティング」においても、私の時差に関する印象を完全に拭い去ることは叶わなかった。 しかし、眠れる巨人と呼ばれ続けてきたポルトガルが、ついに目覚めたと確信するような、偉大な先進性と将来性に満ちたプレミアムワインが少なからず存在していたことには、大変驚いた。 これまで通りのポルトガル・プレミアムワインと、それらの新たな潮流を分けるものは何なのか。 いくつかのキーワードが見えてきたので、ワインと共にご紹介したい。 ①ビオディナミ 湿潤地が多いポルトガルにおいて、多くの産地ではビオディナミの導入は容易ではない。しかし、強い志をもった少数の造り手たちが、その圧倒的に優れた品質という結果でもって、ポルトガルにビオディナミ革命をもたらす未来が来るかも知れない。 温暖化対策としても有効と考えられるビオディナミ農法は、酸の保持に期待がもてる。 また、忘れ去られたマイナー品種の復興にも、一役買う可能性が示されている。 ご紹介するワインは、「ビオディナミ x マイナー品種」の好例である。 生産者:Casal do Paço Padreiro ワイン名:Phaunus Vinhão 2017 葡萄品種:ヴィニャオン 産地:Vinho Verde 参考小売価格:4,800円 インポーター:岸本 年間降雨量が1,200mmと非常に多く、常識的にはビオディナミに向かない産地と考えられるVinho Verdeにおいて、これほど素晴らしいビオディナミワインが存在することは、ポルトガル中のワイン生産者にとって、力強い励ましになるはずだ。 現在では、僅かに発泡し、ほんのりと甘味の残った、低アルコール濃度の白ワインの産地として、ワイン市場における確固たる地位を築きつつある産地だが、50年ほど前までは赤ワインの産地として知られていた。 固有品種であるヴィニャオンをビオディナミで育て、限りなくナチュラルに、亜硫酸の添加も限界まで抑えて醸造したこのワインは、広範囲に広がる鮮やかな芳香、絶妙なスパイス感を伴った果実味、鋭角で無骨な酸が、柔らかいテクスチャーと見事なコントラストを描く、快作である。 ②混植混醸 ポルトガル・プレミアムワインにとって、彼の地固有の魅力として最大化できる最も重要な要素は、混植混醸である可能性は高い。全ての産地で、古の混植畑が産業規模で残されているわけでは無いであろうから、限られた地域においては、とだけ補足しておく。 特にドゥロやダオンにおいては、混植混醸によって、まさに圧巻の品質を誇るプレミアムワインが誕生している。 また、混植された全ての葡萄を同じタイミングで収穫するという、伝統的な方法をとった場合、相当程度の「熟度の低い」葡萄が混ざることになる。かつては嫌悪されたネガティブ要素であるが、温暖化の影響が否定しきれない現代においては、そういった葡萄がもたらす強い酸と、低い糖度によるアルコール濃度の低下効果は、温暖化対策としても有効に働く可能性が非常に高い。 生産者:Nieport ワイン名:Coche 2018 葡萄品種:混植 産地:Douro 参考小売価格:10,000円 インポーター:木下インターナショナル 1842年に創業された歴史あるポルトの造り手であるニーポートは、傑出したスティルワインも手掛けている。ラビガド、コデガドラニーリョ、アリントといった固有品種が混植された樹齢80年を超える畑から生み出されたのは、現在のポルトガルにおける最上の一つと断言するにふさわしい、驚異的な白ワインだ。 混植混醸の副次的な効果として、「果実味が控えめになり、ワインのミネラル感が全面的に押し出される」ことがあるが、このワインもまた、巨大ミネラルの塊のごとき質感に圧倒される。それでいてアルコール濃度は11.5%。 余計なものは全て削ぎ落とされ、必要なものだけが極めて洗練された形で残ったかのような、究極的な「引きの美学」が込められた大傑作。 生産者:Casa de Mouraz ワイン名:BOT 2015 葡萄品種:混植(黒葡萄と白葡萄の混植) 産地:Dão 参考小売価格:9,900円 インポーター:岸本 混植がより一般的であるドゥロに比べると、トゥリガ・ナシオナル(黒葡萄)やエンクルサード(白葡萄)から単一品種ワインを作ることも多いダオン。しかし、この産地においても、混植の畑は残されており、圧巻の品質と個性を誇るプレミアムワインが生まれている。 ティンタ・ロリス、バガ、ジャエン、アルヴァリーニョ、アルフロシェイロなど、7品種を越える葡萄(黒葡萄も白葡萄も)が混植された樹齢100年を超える畑。 黒白混植タイプの畑はさらに歴史が古く、現在この種の畑は世界的に絶滅に瀕していると言えるが、ポルトガルにはまだまだ残っている。黒白混植混醸のワインは、赤ワインと白ワインの両方の美点を兼ね備えた非常に魅力的なワインである。このワインも、14%というアルコール濃度を全く感じさせないほどに、飛翔感あふれるアロマと果実味が極上。控えめなタンニンと、チャーミングな酸のバランスも素晴らしく、Casa de Mourazの卓越したビオディナミ農法も相まって、まさに自然の美しさがたっぷりと込められた輝きに満ちた味わいは、衝撃的である。 ③自根 フィロキセラに耐性のあるアメリカ系品種の台木と接木しない自根の葡萄は、当然甚大なリスクを背負っている。しかし、自根ならではの、伸びやかな果実味、嫌味の無い自然な凝縮感、柔和なテクスチャーと堅牢な骨格の共存は、捨てがたい魅力である。 残念ながら、ポルトガルに自根の畑が多く残されているわけでは無い。しかし、フィロキセラに対するリスクが低減される砂地の畑などで、自根に挑戦する造り手が増えてくれることを、個人的には強く願っている。否定派も根強くいる自根の効果だが、自根の葡萄による隔絶した品質のワインを味わった時には、やはりその効力を認めざるを得ないだろう。 生産者:Lois Pato ワイン名:Quinta do Ribeirinho Pé Franco 2011 葡萄品種:バガ 産地:Bairrada 参考小売価格:24,200円 インポーター:木下インターナショナル ポルトガル中部の銘醸地の一つであるバイラーダにおいて、「反逆者」とも罵られながら、様々な革新的挑戦を続けてきた偉大な造り手がルイス・パトである。この産地を代表する固有品種であるバガは、近年大きく注目を浴びている品種の一つ。ルイス・パトは、砂地に広がる僅か2haの畑で、自根のバガを栽培している。 その葡萄から生まれたこのプレミアムワインは、自根ならではの非常に伸びやかで開放的な芳香と、垂直方向に極めて強い推進力をもった果実味が圧巻だ。極めて凝縮しているにも関わらず、微塵も重さを感じさせない点も、自根の明確な優位点と言える。 バガはイタリアのネッビオーロと比較されることもしばしばあるが、確かに似通った点も多い。特にこのワインは、疑いようもなく、最も偉大なバローロやバルバレスコと比肩する品質を誇っている。 ポルトガルが世界に誇る、最上の赤ワインの一つ。 ④ターリャ(アンフォラ) ポルトガルではターリャと呼ばれるアンフォラも、プレミアムワインの手法として、徐々に浸透してきた。一度ほぼ途絶えてしまったとは言え、ポルトガルでは2000年以上もワイン造りにターリャを使用してきた、長い歴史と伝統がある。 ターリャの最大の特徴は、非常にニュートラルな特性をもちながらも、独特の柔和なテクスチャーをワインに付与する点にある。他国におけるプレミアムワインの手法を真似て、バリック等の使用が過度になると、「分かりやすさ」を得る代償として、「ポルトガルらしさ」を簡単に喪失してしまう可能性が高い。だからこそ、個性を重要視する現代の風潮の中では、数多くの固有品種が根付くポルトガルにおいては、ターリャの使用というのは、明確な利点となるだろう。 生産者:XXVI Talhas ワイン名:Mestre Daniel Lote X 葡萄品種:アンタン・ヴァズ、ペルン、ロウぺイロ等 産地:Alentejo 参考小売価格:6,280円 インポーター:ポルトガル・トレード 全てのワインをターリャで仕込む、ターリャ専門のワイナリー。このワインは、複数の固有品種(白葡萄)を果皮に漬け込んだまま発酵させているためオレンジワインである。僅かに残糖を感じさせる果実味に、揮発酸由来のパッションフルーツ的な酸が交差する、魅惑的なワインに仕上がっている。ターリャならではのソフトな質感と、滋味深い味わいも極めて完成度が高く、世界でも指折りの品質のオレンジワインと言っても過言では無い傑作ワイン。

  • 無添加リースリングの真価

    亜硫酸、俗に酸化防止剤とも呼ばれるこの物質は、超長距離輸送と長期保存が常識化した近代ワイン産業にとって、欠かすことのできないものとされている。 しかしいつの時代も、近代化と原点回帰は交互に繰り返されるものだ。近年の世界的な亜硫酸無添加ブームは、一歩間違えれば盲目的な思想を消費者に押し付けているにも関わらず、明らかな欠陥ですら美点と勘違いさせるような、不可思議かつ強力無比な洗脳力を時に発揮して、世界のワイン市場を席巻した。 誤解なき様に先に断言するが、私自身は亜硫酸無添加のワインで、心を激しく揺すぶられるような感動を幾度となく体験している。正しく作られた無添加ワインは、普通のワインには決してなし得ない未知の魅力を教えてくれる。だが無添加ワインの中には、許容範囲を大きく超えた欠陥だらけのどうしようもないワインが、真っ当な無添加ワインよりも遥かに多く存在しているのもまた事実だ。 「正しい場所に、正しい葡萄が植えられ、正しくオーガニック(ビオディナミ)で栽培され、天候に恵まれ、清潔なセラーで、造り手の卓越した観察眼と判断力と献身をもって作られたら、無添加でも可能になることがある。」(マルク・アンジェリ) フランス・ロワール地方で、多大なる尊敬を集めるナチュラルワインの賢人の言葉を借りるなら、本来無添加でのワイン造りとは、非常に厳しい条件が必要となるものだ。そして、葡萄品種によっても、無添加への向き不向きというものがある。 ©︎(株)ラシーヌ 無添加にとっては尚更重要な選果。左は加えるが、右は廃棄する。全て目で見て判断するそうだ。 私は世界中の相当な種類の葡萄で、通常のものと無添加のものを比べる機会に恵まれてきた。その中でも、群を抜いて無添加に向いていないと考えてきた葡萄がある。 リースリングだ。 より正確にいうと、無添加リースリングの魅力が、なかなか理解できなかった。リースリングを無添加で造ると、まさに原型を留めないというか(無添加の方が本来は原型なのだから、これはパラドックスだが)、これまで知ってきた「リースリングらしさ」がどこにも見当たらないという経験を何度もしてきたのだ。 しかし本日のテイスティングは、その考えを改める大きな一歩となったので、ここにレポートする。 比較というのは、正確な検証をする上で非常に重要なものであるが、今回のテイスティングでは、同一生産者、亜硫酸無添加と添加、同一ヴィンテージの畑違い、同一畑のヴィンテージ違いと、検証に必要なあらゆる縦軸と横軸が揃っていた。 生産者は1978年からビオディナミ栽培を続けるRita&Rudolf Trossen。(ドイツ・モーゼル) 1. 亜硫酸無添加と添加 添加されているリースリング(と言っても一般的な添加量に比べれば、遥かに少ないが)は、いわゆるリースリングらしさがしっかりと表現されているが、無添加のものはやはり「らしさ」を見つけることが難しい。リースリングは抗酸化能力が非常に低い葡萄であることから、無添加の場合、酸化のニュアンスが大きな比重を占めてしまう。しかしこれは、「らしさ」を求めた場合の価値判断であり、品質の優劣とは一切の関連性が無い部分である。亜硫酸にはワインを型にはめる性質がある。それが、リースリングの場合はより顕著に現れるというだけだ。 亜硫酸を添加したキュヴェ。クラシックな味わいで、極めて完成度が高い。 2. 同一ヴィンテージの畑違い テロワールを正確に表現するなら、最低限の亜硫酸は必須、と語る生産者は多い。事実、無添加によって生じた風味は、テロワールをマスキングすることが多々ある。しかし、今回テイスティングした同一ヴィンテージ畑違いの無添加リースリングは、どれもが明確に畑のテロワールを刻んでいた。むしろ、生々しいほど克明に刻んでいたと言える。これが造り手の力によるものなのか、リースリングの特性なのかは現時点では判断が難しいが、少なくとも事実として体験したことだけはお伝えしておきたい。 どれも明確にテロワールを表現。樹齢100年以上で自根のSchiefergold Purus 2014はまさに圧巻の出来。 3. 同一畑のヴィンテージ違い テロワールと同様に、ヴィンテージの個性も、無添加風味が覆ってしまうことが多々あると考えてきた。しかし、この点に関しては、今回私は完全に考えを改めるべきだと痛感した。それほどまでに、恐ろしく精密かつ緻密に、ヴィンテージの違いが表現されていたのだ。この違いの幅は、私が過去に経験したあらゆる垂直テイスティングの中でも、最も広いものであった。貴腐菌が多く発生した2013年はグリップの強い果実味と酸があり、冷涼な2014年は抑制の効いたエレガンスを讃えており、温暖な2015年は太陽のエネルギーが詰まったような明るい味わいであった。亜硫酸はワインを型にはめる性質があると書いたが、ヴィンテージの個性もその型にはめていた可能性が高いのでは無いだろうか。無添加ワインは、こういう発見を時折もたらしてくれるのだから、本当に興味が尽きない。 ここまで明確にヴィンテージの個性を刻んでしまうのは、造り手にとって恐ろしいことでもあるはずだ。 総括の代わりに、改めて無添加リースリングの魅力に迫ってみる。 無添加にすることによって、確かにこれまで慣れ親しんできた「リースリングらしさ」は、他の葡萄の無添加の例と比べても、遥かに見つけにくくなる。そして、ただでさえリリース直後は硬いリースリングが、無添加だと尚更時間がかかるのも難点だ。しかし、本日テインスティングした2014年の神々しいまでの風格と、緻密で繊細なバランス、全方位に広がる奥深さ、滋味深くどこまでも優しい味わいは、無添加ならではのものであり、何物にも変え難い至福の体験であった。そして、無添加リースリングの、畑のテロワール、ヴィンテージの個性を余すことなくパッケージする能力にも、心底驚かされた。

  • 固定観念を覆す白ワインに出会った

    スペインワインの虜となり、20年の月日が経つ。 固定観念に縛られ、探究心を失った自分を責めるべきか、それとも従来の常識を打ち破る生産者を褒めるべきか。 読者の中で、アイレンという品種の名前を聞いたことがある方は多いと思う。 それはスペインで最も栽培されている白葡萄品種であるとか、少し前なら世界で最も栽培面積が多い葡萄品種であるとか、ワイン関連資格試験の経験者なら一度は覚えた品種だと思う。 しかし、実際ティスティングをしたことがある方が、どれほどいるであろうか。 アイレンのワインは日本では1000円前後がほとんど。ボックスワインも数多く日本で出回っている。あまりワインとしての市場価値は、高くない。味わいも複雑なものは少なく、シンプルな構成。 アイレンはスペインで最も栽培されている品種だが、その大半は4ユーロ以下のテーブルワインか、酒精強化ワインのブランデーとして使用されている。 そんな大量生産されるアイレンで、今までとは全く違うスタイルを生む生産者が、世界的に話題を呼んでいる。 生産者 :Bodegas y Vinedos Verum / ボデガス イ ヴィニェードス ヴェルム ワイン名 :Las Tinadas Airen de Pie Franco / ラス ティナダス アイレン デ ピエ フランコ 葡萄品種 : Airen / アイレン ワインタイプ : 白ワイン 生産国 : スペイン 生産地 : ヴィノ デ ラ ティエラ デ カスティーリャ(ラマンチャ) ヴィンテージ : 2018 インポーター : アルカン 希望小売価格 : 2500円 エリアス・ロペス・モンテロ氏。1979年生まれ。 2005年からボデガ(ワイナリー)を始めた。 スペイン中央部にあり、「ドン・キホーテ」の舞台ともなった広大なカスティーリャ・ラ・マンチャ州で、18世紀末からワインと蒸留酒造りを続けてきた家系に生まれ、長年ベガ・シシリア(*1)で醸造責任者を努めていたマリアーノ・ガリシア氏に師事。 リベラ・デル・ドゥエロ(*2)を中心に南アフリカでも研修を重ね、アルゼンチン・パタゴニア(*3)でもプロジェクトを興し、研鑽を重ねている若手醸造家の注目株。世界的なワイン雑誌で、「スペインのワインを変える10人の醸造家」の一人として紹介されるほどだ。 ヴェルムという名は、ラテン語で「真実」を意味。 大地に対し、また全てに対し真実でありたい、というロペス・モンテロ家が代々受け継いできた思いを表している。 ヴェルムは4つの畑をもち、石灰岩比率が高く、風も吹き、湿度が低いので、オーガニック農法に向いている。灌漑(*4)はせず、株仕立て(*5)を採用している。 株仕立ての葡萄畑(カスティーリャ・ラ・マンチャ) 最も標高が高く、古い畑でもあるラス・ティナダスには樹齢70歳の自根(*6)のアイレンが健在していて、この貴重な樹からラス・ティナダス アイレン・デ・ピエ・フランコは生まれる。 「ピエ・フランコ」とは台木をしていない樹(自根)を指す。フィロキセラがヨーロッパ中で大流行し、スペインも例外ではなかったが、内陸部の寒暖差が激しい厳しい大陸性気候では、生き残る葡萄の樹も多少はあった。 また熟成は、ティナハと呼ばれる100年使用した5000Lの素焼きのアンフォラ(*7)を使用。オリとともにバトナージュ(*8)を行い、奥行きと複雑さをだしている。 ティナハで澱と4ヶ月、さらにステンレスタンクで4ヶ月熟成。 国や地域によって形状や大きさが異なるアンフォラ 香りは白い花をベースに、ハーブなどの爽やかな印象に、黄桃、洋ナシなどの甘い香りが豊かな印象を与える。口に含むと滑らかタッチで、アンフォラで寝かすことにより複雑かつデリケート。厚みもあり、ミネラル感とともに余韻へ変わってゆく。ややしっかりとした魚料理はもちろん、名物である山うずらにも対応できるしっかりとした骨格。暑いところで生まれ、彼の情熱との相乗効果で躍動感さえ感じることができる。 エリアスは語る。「庶民的とみなされているアイレンから、高品質のワインができるポテンシャルは感じていた。アンフォラを使用する理由は、樽の香りがつかず、石灰岩土壌が生むミネラル感をキープしながらも、酸化させすぎることがない。我々の1番古い畑は1950年に植樹され、灌漑無しで育てる。これらの畑は長い年月により、テロワールとミネラルを生む。自根の樹はバランスよく仕上がり、手入れの必要はほとんどない。アイレンの本当の魅力を感じてもらえると思う。」 眠れる獅子と長年例えられていたラ・マンチャ。 もともとポテンシャルはあったというが、それはあくまで生産者以外の第三者の意見。 評論家による「奇跡」はいつも情熱溢れる生産者によって「必然」だ。 それでいて値段はリーズナブル。 エリアスが長年に渡り築かれた「常識」に立ち向かう、あたかも彼自身がドンキホーテのように躍動感と可能性に満ち溢れたワインが、新しい時代を作っていく。 (*1)スペイン全土を代表する偉大な造り手。トップ・キュヴェの「ウニコ」は世界最高の赤ワインの一つとして称賛されている。 (*2)スペインを代表する赤ワインの名産地の一つ。主要葡萄品種はTinta del Pais(テンプラニーリョ)。特に高名なワイナリーとしては、ベガ・シシリアやピングスがある。 (*3)アルゼンチンとチリに跨った南米大陸南部の産地。近年、その限界的な冷涼気候がもたらす個性的なテロワールに注目が集まっている。 (*4)葡萄に水を供給するために畑に張り巡らされる設備。溝を掘って水を流すという旧式の「フラッド方式」と、葡萄樹にパイプを這わせて、点滴のように少しずつ水を供給する近代的な「ドロップ方式」が主流。灌漑が過度になると、葡萄の根が水分を求めて地中深くまで伸びなくなる。 (*5)乾燥した温暖な地域で今でも見られる原始的な葡萄樹の仕立て方。ワイヤーに蔓を絡めて伸ばすという方法を取らないため、背は低く、幹は太く、枝は短く育つ。近年、品質面において再注目されているが、機械収穫がほぼ不可能であり、背の低さゆえの作業効率の悪さも相まり、新しく株仕立てで植樹される畑は非常に稀。 (*6)フィロキセラ(葡萄樹の生育を阻害し、枯死させてしまう害虫)に耐性のあるアメリカ系の台木と接木せず、「自」らの「根」で育てられた葡萄樹。自根の意義に対する懐疑論は根強いが、一般的には葡萄の品質にとってプラスであると考えられている。フィロキセラという「リスク」を背負う代わりに、品質という「ハイリターン」を得る方法とも言える。 (*7)古代ヨーロッパの時代から、ワインに限らず、オリーヴや穀物等、あらゆる生活必需品の運搬や保存に使用されてきた陶器の一種。各地域によって、素材や形状、大きさが異なる。ワイン醸造に使用される場合は、内側に蜜蝋を塗ることも多い。余談だが、ローマ帝国では、ワインの量を表す「アンフォラ」という名の単位が用いられ、おおよそ39ℓが1アンフォラだったと考えられている。 (*8)熟成中のワインをかき混ぜることによって、澱(酵母の成れの果て)との接触が促進され、主にアミノ酸等の旨味がワインに加わる。 <ソムリエプロフィール> 菊池 貴行 / Takayuki Kikuchi  ヒノモリ シェフソムリエ 1978年 東京 深川生まれ。 大学在学中、月島の「スペインクラブ」でスペインワインに目覚める。 本場のワイン、料理を触れにスペインへ。 帰国後2004年のオープンから日本橋サンパウにソムリエとして勤務。 バルセロナのサンパウ本店での研修を経て、2006年、同店のシェフソムリエに就任。 その間スペイン政府貿易庁が主催した第1回「ICEX」(シェフ要請プログラム)の日本代表、世界唯一のソムリエとして選ばれ、2007年10月からスペインに国費留学。リオハの二つ星「エチャウレン」や南スペインの二つ星「アトリエ」で研修を積みながら、ワインの作り手と交流を重ねる。 第4回マドリッドフシオンのソムリエコンクールでは、実技試験審査員。 2010年5月、第1回の「カヴァ騎士団(シュバリエ)」に選ばれる。 2020年7月、三重県アクアイグニス内「ヒノモリ」のシェフソムリエに就任。松坂牛などに代表される地元の熟成肉や伊勢の魚介類など三重の豊かな食材に惹かれ、現職。 ワイン雑誌への寄稿やワインセミナー多数。 ワインスクール、レストランマナー講師も勤める。

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