2023年12月19日4 分

Let’s drink more Port!!!

ポートは偉大な飲み物だ。

そのことに疑いの余地は微塵も無い。

 

しかし、2005年以降、ポートの売り上げは右肩下がりの状況が続いている。

 

今回訪問したポート・ハウスでも、その苦境ぶりが例外なく聞こえてきた。

 

「甘口離れ」は世界的な潮流であり、「辛口マッチョ信仰」の勢いは止まることを知らない。

 

だが、本当にポートが売れなくなっている理由は、「甘いから」なのだろうか、と疑問が湧いてくる。

 

確かに、甘いというだけで無条件毛嫌いするワイン消費者が多いのも、甘口ワインに対して全く理解を示さないプロ(立場を考えれば恥ずべきことと思うが)が一定数いることも事実だが、問題の本質は少し違うところにあるような気がするのだ。

 

筆者が感じている問題点は2つある。

 

一つは、ポートの飲み方と扱い方が周知されていないこと。

 

大別すると、ルビー、トゥニー、ホワイト、ロゼの4カテゴリーとなり、それぞれ推奨される飲み方も、提供温度や抜栓後の保存期間も含めた扱い方も異なっている。

 

*各スタイルに関する詳細は、以下の過去記事にて。

ポート1

ポート2

ポート3

 

ポートはなぜか、抜栓後は永遠に近いほど保つ、と思われているふしがある。

 

トゥニーなら1~2ヶ月程度(熟成年数が古いほど、落ちるのが早い)、ホワイトロゼは冷蔵庫でしっかりと管理して2~3週間程度、ルビーはもっとややこしく、中でもヴィンテージは抜栓後1~3日以内に必ず、Late Bottled Vintageは二週間程度でなるべく飲み切るなど、それぞれのポートには、正しく楽しむためのルール(暗黙の了解)がある。

 

これらのルールは、特にヴィンテージ・ポートを非常に扱いの難しいものにしているように感じるかも知れないが、澱が大量に入っているヴィンテージを、Coravinとフィルターを駆使して長期間に渡って味わうなど、現代のガジェットを上手く使えば、その難しさも簡単に突破できる。

 

忘れられがちなことだが、ドウロ地方でもポート用として最上とされるサブリージョン、Cima-Corgoにある最も偉大な葡萄畑は、基本的にヴィンテージ・ポート用なのだ。

 

高価なのに扱いにくい、という理由だけで敬遠するには、ヴィンテージ・ポートはあまりにも偉大な飲み物である。

 

 

2つ目の問題は、ポートの古臭いイメージを、ポジティヴに活用できていないこと。

 

ポートはキアンティ(1716年)、トカイ(1730年)に次ぐ1756年に、世界で3番目のアペレーションとして認められた場所だ。その歴史は当然古く、深い。

 

もちろん、ポート・ワインメーカーたちは、その古臭いイメージを刷新するために、数々の努力をしてきたが、結果だけを見ると、なんとか延命できた、というところだろうか。

 

ホワイトとロゼはそれぞれ、古き良き「ポートニック」(ポートとトニックウォーターを1:2の割合で混ぜ、たっぷりの氷と共に楽しむクラシックカクテル)として楽しむという最適解があり、筆者も現地で久々に味わってみたが、そのドリンカビリティ抜群な美味しさに加えて、副材料による拡張性も非常に高く、リバイバルの可能性は十分にあると言えるだろう。

 

もちろん、甘い味わいがやや苦手な人に対しても有効なアプローチになり得るし、食前酒のオプションとしても高いポテンシャルを秘めている。

 

ルビーとトゥニーに関しては、やはりペアリングのさらなる研究が必須になってくるだろう。

 

トゥニーを普通の料理に合わせるのは、その強い熟成感もあって、かなり難しいので、どうしてもデザート専用となってしまうとは思うが、ルビーに関しては、料理にある程度以上の質量があれば、対象範囲をかなり拡大できるだろう。

 

ペアリングに様々な国のワインを使用するのが流行したように、泡→白→赤という古典的な順番に捉われないアプローチが流行したように、日本酒を入れ込むことが流行したように、魚料理に赤ワインを合わせるのが流行したように、筆者は今後、ポートを含めた酒精強化ワインを、いかにクリエイティヴな形でペアリングに組み込むか、がトレンドになると予測している。

 

 

ポートニックもそうだが、クリエイティヴなアプローチにとって、「古臭い」というイメージは、むしろプラス要素になるのだ。

 

ぜひ皆様にも、固定概念を外して、改めてポートを味わってみていただきたい。

 

そこには必ず、素晴らしい発見があるはずだ。