3月16日3 分

欠陥的特徴の経過観察 <1>

ナチュラルと言える造りをしたワインでも、かなりクリーンな味わいのものが増えてきたのは、(少なくとも個人的には)大変歓迎できる傾向だ。

 

亜硫酸無添加でしか成し得ない、ギリギリの妖艶さ、清濁併せもった味わいの深淵さ、無制限の浸透力といった魅力は私自身も数多く体験してきたし、その素晴らしさと唯一無二の世界観にはいつも心踊らされるが、残念ながら隣り合わせとなるリスクが大き過ぎる

 

破棄せざるを得ない状況が、かなりの頻度で発生することを鑑みれば、造り手、インポーター、酒販店、レストラン、購入者の全てにとって、経済的な意味でもサスティナブルではないことは明白だ。

 

無論、「無駄にすること」自体が、どうしようもなくアンチ・サスティナブルであることは言うまでもないだろう。

 

赤、白、ロゼ、オレンジ、スパークリングなど、あらゆるスタイルのナチュラルワインに発生し得る欠陥的特徴が、本来造り手が大切にしようとしていたはずの「葡萄畑の最も自然な味わい」を、分厚いヴェールで覆い隠してしまうという結果もまた、矛盾としか言いようがない。

 

長年に渡ってこの問題に対し、多角的かつ総合的に考え抜いた私は、「亜硫酸は最低限でも添加して欲しい」というスタンスに至っている。

 

ワインをリリースするまでに造り手が辿る、数々の困難や努力を理解しているからこそ、「ワインがゴミとして捨てられる」状況に、心の痛みが抑えきれないのだ。

 

 

期間限定の新シリーズとなる「欠陥的特徴の経過観察」では、とあるナチュラルワインに生じた問題が、どれくらいの時間で「沈静化」(経験上、完全消失する可能性は低い)、もしくは変化するのかを、約2ヶ月おきに検証していく。

 

本企画の検証対象となるスパークリングワインは、同ケースのロットで11本入手したため、瓶差という可能性は極限まで排除できていると考えて良いだろう。

 

亜硫酸は極少量添加したそうだが、添加量が足りなかったのか、欠陥的特徴を抑えきれていない。

 

検証対象とする欠陥的特徴の項目は、揮発酸、還元臭、ブレタノミセス、ネズミ臭とし、五段階評価(1が最も弱く、5が最も強い。)で記録していく。

 

また、ネズミ臭に関しては、抜栓後に欠陥が顕在化したタイミングも合わせて記録していくこととする。

 

*各欠陥的特徴の詳細は、過去記事をご参照いただきたい。

 

 

試飲日:2024年3月10日

 

揮発酸:3

やや強めの揮発酸が出ている。不快かどうかが人によって分かれるギリギリのラインだと思うが、除光液を思わせる強烈なニュアンスではなく、かなり酸っぱいパッションフルーツのような味わいとなっている。

 

還元臭:2

フリント系(火打石)の還元臭であるため、欠陥とするのは厳し過ぎるだろう。しかし、揮発酸の香りと混ざった結果、少々不快なニュアンスも出ている。

 

ブレタノミセス:2

アロマでの確認は難しいレベルだが、ミッドパレット辺りで独特のファンキーな香味が顔を覗かせてくる。こちらも単体というよりも、揮発酸、還元臭と合わさることで、不快なニュアンスが強まっている印象を受ける。とはいえ、欠陥とするには厳し過ぎるとは思う。

 

ネズミ臭:4(発生タイミング:抜栓後30分)

ネズミ臭の強さはさほどでも無い(人によっては感じないレベル)が、発生タイミングが抜栓後30分と非常に速いのが大問題。大人数で抜栓後にすぐ飲みきるなら全く問題ないが、レストランでグラスワインとして提供したり、少人数でゆっくりと飲むのは極めて難しいだろう。

 

欠陥的特徴総合評価:3.5

ネズミ臭発生タイミングの速さが最大の問題点だが、揮発酸、還元臭、ブレタノミセスがピンポイントでアンバランスな状態にあるのも良くない。ネズミ臭を感知できない人にとっても、どこか違和感を拭いきれない味わいとなっている可能性が、非常に高いと考えられる。

 

 

次回の検証は5月中頃を予定している。