2023年5月15日2 分
Living Roots, Session Sparkling White.
ハイブリッド品種のサスティナブル適正に関しては、SommeTimesでも度々触れてきたが、具体例はあまり出していなかったように思う。
私自身、ハイブリッド100%の場合、結構好き嫌いが出てしまうし、単純に料理と合わせることが難しくなると考えているが、ヴィニフェラとのブレンドに関しては、非常に高いポテンシャルを感じている。
それは、味わいにおいても、サスティナビリティにおいてもだ。
少しヴィニフェラを足すだけで、ハイブリッド特有の弱さ、物足りなさが相当カヴァーされるため、むしろ日常用のワインとしては、価格も含めてプラス要素が非常に大きい。
ワイナリーにとっても、収量が安定しやすいハイブリッドをベースにしたワインなら、キャッシュフローのやりくりも随分と楽になるだろう。
シンプルに美味しくて、消費者も生産者もWin-Winなら、文句など何一つない。
NY Wine レポートの後編でも紹介したLiving Rootsは、北アメリカで主に栽培されているハイブリッド品種のElvira(エルヴィラ)を主体に、僅かなリースリングをブレンドして、シャルマ製法にて発泡させたSession Sparkling Whiteを手がけている。
これがまた、実にドリンカビリティに長けた逸品。
Elviraは早摘みにして、フレッシュ感を最大化させつつ、低アルコール濃度に留める役割を担い、リースリングがミッドパレットと余韻を加える。
シリアスにならないシャルマ製法という選択も、このスタイルにとってはプラスだ。
難しいことは考えずに、喉の渇きを癒すように、ゴクゴクと飲む。
ワイングラスではなく、コップでも良いだろう。
実は、このタイプのワインは日本でも造られ始めている。
そして、日本のヴィニフェラにとってはなかなか難しい気候条件や、食用葡萄を育てる高齢農家の実情も考えると、もっともっと追求されても良いのでは、とも思っている。
確かに、ハイブリッド品種はイメージが悪いと思う人は多いだろう。
しかし、それはあくまでも、「ワインを学んだ人」の間だけの話だ。
チューハイの延長線上でワインを飲む若者たちにとって、シャルドネもリースリングも、デラウェアも関係ない。
美味しく飲めればそれで良いのだし、そのことが回り回って日本の農業や、収益化に苦心するワイナリーを救う一手になるのであれば、素晴らしいことだと私は思う。
偏見は、何も救わないのだ。