2月9日3 分

日本酒ペアリング基礎理論 Part.5 <酸味&アルコール濃度>

Part.1で解説した通り、日本酒ペアリングにおいては、ペアリング構築の優先順位がワインとは大きく異なります。

 

4番目に優先順位が高い要素となるのは、「酸味」

5番目に優先順位が高い要素となるのは、「アルコール濃度」となります。

 

 

まずは、ペアリングにおける「酸味の基礎理論」が、日本酒にどのように適用されるかを見ていきましょう。

 

ワインペアリングにおいては最も優先度の高い要素である「酸味」の活用は、日本酒では大きく優先順位が下がりますが、完全に無視できるわけではありません。

 

カット(清新)

塩分、油分、脂肪分、軽度のスパイスに対し、飲料の酸味はそれらを「カット」する働きをし、爽快な印象を与えます。

 

酸が低い日本酒の場合、この効果は限定的になりますが、生モト、山廃モト、菩提モトであれば、強い乳酸によってある程度の効果が期待できます。

 

ワインと同様にペアリングをする際は、塩分、油分、脂肪分、軽度のスパイスと日本酒の酸味は比例関係にあると考えます。

 

ハーモナイズ(調和)

料理と飲料の酸味のレベルを近づけることで、味わいに調和が生まれる効果となります。料理に酸味が含まれている場合、重要な項目となりますが、日本酒ペアリングでは効果が限定的な代わりに、甘味による酸味に対する中和効果が働きますので、それほど気にする必要はありません。

 

カウンターバランス(中和)

料理の苦味を、飲料の酸味で中和することによって、苦味を抑え込むことができます。一般的に日本酒の酸味はこの効果を期待できるほど強くありませんが、甘味による苦味に対する中和効果がありますので、気にする必要はありません。

 

ハイライト(強調)

繊細で淡い味わいの料理がもっている特徴や風味を、飲料の酸味で引き立たせることができます。ここでもやはり、日本酒の効力は限定的です。

 

 

まとめると、日本酒で酸の効果を利用したい場合は、生モト、山廃モト、菩提モトを中心に考えていく、もしくは近年増えてきた酸味が強いタイプの日本酒を使うのが良いでしょう。どちらにしても、酸味よりも甘味が強い日本酒においては、あくまでサポート的に酸味の活用を行うのが良策と言えます。

 

 

次は「アルコール濃度の基礎理論」を見ていきましょう。

 

アルコール濃度に関連した要素は、日本酒特有の「飲み方」が大きな利点となります。

一般的にワイングラスよりも遥かに小さな容器(お猪口など)で飲む日本酒は、一口の量(アルコールの総量)をコントロールしやすい飲み物となります。

 

ハーモナイズ(調和)

料理の重さ(一口の質量=体積と密度によって決まる)に対して、アルコール濃度を調整することによって、料理と飲料のパラーバランスを整える手法です。ワインの場合はシビアにコントロールすべきものですが、先述の理由で日本酒の場合は比較的寛容度が高くなります。料理の重さと日本酒のアルコール濃度の間に、あまりにも大きなギャップが生じないようにだけ気をつけましょう。

 

アンプリファイ(増幅)

料理の塩味と辛味に対して、アルコールはそれらを増幅させる性質があります。ワインの場合は主にNG項目として考慮すべきものとなりますが、日本酒の場合はそれらに対する甘味による中和という、より強い効果が働きやすいので、極辛口、大辛口タイプの日本酒を使用する場合にのみ注意しておけば十分です。

 

 

その他ワインペアリング適用されることがある、「テロワール」、「質感」に関しては、日本酒ペアリングの考慮対象外となります。

 

日本酒ペアリングは、甘味と風味を骨格として、旨味、酸味、アルコール濃度を補助的に考慮していくと、最も簡単に完成度の高いペアリングを組み上げることができます。