2023年12月13日3 分
Part.1で解説した通り、日本酒ペアリングにおいては、ペアリング構築の優先順位がワインとは大きく異なります。
基本的に、優先順位がより高い要素は、「明確に強い効力を発揮する」ため、日本酒ペアリングにおいては、表の通り「甘味」を最優先に考えていきます。
日本酒そのものが「甘い」飲み物、というわけでは決してありませんが、ワインとの比較で考えた場合、酸味と甘味(果実味)のバランスが味わいの中核を成しているワインに比べ、日本酒はそのバランス感が甘味側に強く偏っています。
では、ペアリングにおける「甘味の基礎理論」が、日本酒にどのように適用されるかを見ていきましょう。
料理に相応の甘味(主に、砂糖などの甘味調味料を主体とした甘味であり、食材の“甘み”とは基本的に異なる点に注意)が含まれる場合、飲料の甘味はそれを僅かに上回っている必要があります。
飲料の甘味が、料理のそれを大きく下回った場合、口中で強い苦味が生じるため、非常に優先順位が高い基礎理論となります。
特に日本料理と合わせる場合には、合わせ調味料の一部として砂糖、ミリンなどが使用された料理に対して、非常に重要な要素となりますが、デザートの領域に入ってしまうと、さすがに一般的な日本酒では対応できません。
その場合は、貴醸酒などの特殊カテゴリー酒を用いるようにしましょう。
酸が強いワインの場合、甘味のハーモナイズを利用したペアリングは、どうしても大雑把なものになりがちですが、日本酒の場合は比較的狭い範囲に甘味のグラデーションが集中しているため、より精密なペアリングをすることもできます。
なお、日本酒度のみをベースに甘味を判断すると、特に-3~+8近辺の範囲内では、正確な情報源とならない場合も多いため、注意が必要です。
必ず日本酒度と、自身のテイスティングによる評価を合わせるようにしてください。
料理の酸味、辛味、苦味に対して、飲料の甘味は「中和」の効果を発揮することができる、というのが、ワインにおけるカウンターバランスの考え方ですが、日本酒ペアリングの場合は、ワインペアリングでは別要素扱いとなるコントラスト(対比)の技法が、カウンターバランスへと組み込まれます。
つまり、日本酒ペアリングでは、塩味に対して日本酒の甘味が明確な中和効果を発揮することができる、ということです。
この変化は、優先順位とも密接に関わっています。
ワインペアリングの場合、酸味が最優先となるため、酸味による塩味に対するカット効果が非常に強力に働きます。そして優先順位が高い酸味の効果によって、ワインの甘味は、甘口ワインや極甘口ワインの領域に入らない限り、塩味に対する効力の大部分を失います。
しかし、酸味の優先順位が低い日本酒であれば、日本酒の甘味が塩味に対して十分な効果を発揮することができるようになります。
また、ワインに比べても、日本酒ペアリングでは甘味によるカウンターバランスを用いるのが容易になります。ワインではかなり繊細な調整が必要になる、苦味に対する甘味による中和も、日本酒なら簡単です。
総合的に見ると、ワインペアリングの最優先技法となる「酸味によるカット」が、日本酒では「甘味によるカウンターバランス」へと置き換わる、と考えて良いでしょう。
まさに、日本酒ペアリングの中核となる理論ですので、集中的に習得してください。