2022年1月16日3 分

出会い <5> 衝撃のオレンジ

Vinyas d’Empremta, Rabassa 2019. ¥5,200

オレンジワインの復興は、北イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州とスロヴェニアの国境付近から始まりました。

復興が始まったばかりの1990年代後半は批判も多かったのですが、2000年代に入ると徐々に理解を得るようになり、2010年代から一気に世界各国に拡散、今では第4のカテゴリーとして完全に確立したと言っても過言ではありません。

そして同時に、そのスタイルも、爆発的に多様化しました。

ほとんど白ワインと見分けがつかない色、ほぼ茶色のワイン、確かにオレンジ色に見えるものなど、色だけでも多種多様。

味わいも、古典的な旨渋味型、モダンなフルーティー型、いいとこ取りのバランス型と、大きく分けても3種類。さらに、濁っていたりいなかったり、泡立っていたりいなかったりと、これはもう確かに、一つの立派な大カテゴリーとしての確立を実感させられます。

中でも、筆者が特に注目しているのは、混植混醸(一つの葡萄畑に植わった多種類の葡萄を、全て混ぜて醸造する)タイプのオレンジワインです。

オレンジワインは古い手法。

混植混醸も古い手法。

掛け算にすると、まさに古代ワイン!?

この手のワインは、80歳以上くらいのヨーロッパ人ならノスタルジーを感じる人もいるかも知れませんが、日本人にとっては、まさに体験したことのない味わいでしょう。

今回出会ったワインは、そんな混植混醸オレンジですが、あまりの美味に絶叫しそうになりました!

ナチュラル・ワインの新たなホットゾーンとして大きな注目が集まっている、スペインのカタルーニャ州。まだまだ凄いワインが眠っている予感はありましたが、物凄いモンスターワインがやってきてしまいました。

ビニャス・デンプレンタは、カタルーニャ最小のワイン産地として知られている(いや、むしろ全く知られていない、という書き方が正確ですが)、「バジェス」という秘境感が漂う産地で、親子二代でワイン造りを行うワイナリーです。

父は20年以上、趣味でワイン造りをしていたそうですが、2011年に息子とワイナリーを立ち上げてからは、葡萄畑に植わっていたフランス系国際品種やテンプラニーリョに、土着品種を次々と接木して行きました。

さらに、古い石垣に囲われた、放棄されたままの古い葡萄畑を購入したり、畑を開墾していたら、地中から1000年以上前の岩の発酵槽が発掘されたりと、そのストーリーは、なんとも浪漫に満ち溢れています

さて、このワインは、大昔の畑からのものです。

混植された、マカベオ、マルバジア、パンセラ、ピカポイ(後者二つは筆者も知らない葡萄です)という葡萄の平均樹齢はなんと120年。

マセラシオンは20日間と、控えめでも長くもない絶妙な塩梅。発酵槽はステンレス・タンクだそうで、抽出もソフトタッチ、亜硫酸は無添加。

ローズマリー、フェンネル、ディルといったハーブ感に、梅しそや潮の香りが絡み合ってきます。渋みはダージリンのファーストフラッシュを思わせる優しさ。豊かなコクと、ほのかな苦味、バランスの良い酸、じわりじわりと染み込んでくる心地よい余韻。ネガティブな要素が襲ってくる気配もありません。

そして何より、モンスター級のミネラル!

スペインは本当に、興味が尽きない国です。

これからもきっと、こんな宝物ワインが、日本の優秀なインポーターによって発掘され続けることを、心から願っています。

オレンジワインの復興のお話はこちらから。

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「再会」と「出会い」のシリーズは、SommeTimesメインライターである梁世柱が、日々のワイン生活の中で、再会し、出会ったワインについて、初心者でも分かりやすい内容で解説する、ショートレビューのシリーズとなります。