2020年12月20日4 分
最終更新: 2022年3月15日
ワインに含まれるアルコールの濃度は、料理とのペアリングの際に、極めて重要な考慮要素となります。
本記事においては、ワインを以下のように大まかにカテゴリーを分けます。
①重いワイン:14%〜
②中庸なワイン:12.5%〜13.9%
③軽いワイン:〜12.4%
また料理に関しても以下のように分けておきます。
❶重い:口内が相応に一杯になる程度体積があるもの
❷普通:❶と❸の中間だが、範囲は比較的広い
❸軽い:葉物やスープといった体積の小さなもの
料理の❶〜❸を牛肉に例えるなら、
❶は厚切りのステーキ
❷はサイコロステーキ
❸はしゃぶしゃぶ
といった塩梅になります。
ワインのアルコール濃度はワインの質量とほぼ同義と考えましょう。例外(*後述)も存在しますが、基本的にはアルコール濃度が上がる程、比例してワインの質量も増加していきます。ペアリングの際には、料理の質量とワインの質量を同程度に合わせる事で、どちらかが支配的になる状況を防ぐことができます。同じ質量の塊同士をぶつければ、どちらかが弾き飛ばされることなく、拮抗状態になるということです。
基本的にはワインが重い場合(①)は、料理も重いもの(❶)、料理が軽い場合は(❸)はワインも軽く(③)して、対応させていきます。非常にシンプルですが、重要度はかなり高いので、どのようなペアリングにおいても、アルコール濃度と料理のハーモナイズは意識しておいた方がベターです。
最終的にどの大きさにカットするかは、非常に重要。
また、全く同じアルコール濃度で赤、オレンジ、ロゼ、白、泡を比べた場合、以下のように微調整をすると、より精度が高まります。
赤:アルコール濃度そのまま
オレンジ:赤に比べて-0.2%程度
ロゼ:赤に比べて-0.4%程度
白:赤に比べて-0.5%程度(樽がしっかり効いたタイプの場合は-0.2%程度)
泡:赤に比べて-0.5%程度
つまり赤ワインなら13%程度で合わせたい料理に、樽のしっかり効いた白ワインを使うのであれば、13.2%程度を目安にすると良いということです。これは最終的なワインの質量には、渋味の量も多少関係してくるからです。(質量という観点においては、アルコール濃度の方が格段に重要度が高い)
亜硫酸の添加量が少なくなればなるほど、質量のハーモナイズを無視することができます。亜硫酸とは、ワインにとっての一種の膜や壁に近い存在です。この亜硫酸が少なくなる、もしくはほとんど無くなることによって、ワインは食材に対する強い浸透力を得ます。
ナチュラルワインが、ペアリングにおいて非常に高い汎用性をもつ最たる要因です。
ナチュラルワインの浸透力がこの質量ハーモナイズの法則を無視するのは、強力な利点。
料理の塩味には、ワインのアルコール感を増幅させる特性があります。普通の料理(塩味の強さという意味で)であれば、基本的に気にする必要はありません。しかし、ブルーチーズといった極端に強い塩味を伴ったものの場合、アルコール濃度が高い①のタイプのワインを合わせてしまうと、非常に強くアルコールを感じてしまいます。
塩味の強い料理にワインを合わせる際は、この増幅作用を念頭に置きつつ、ワインの酸味による料理の塩味をカットする効果(詳しくは、ペアリングの基礎<酸味>を参照)を併用して、塩味による過剰な増幅を防ぐようにしましょう。
つまり、塩味の強い料理に対して、アルコール濃度が高く酸の低いワインは、NGということです。
チーズやシャルキュトリー類は要注意
高いアルコール濃度と強い辛味の相性は非常に悪く、まさに火(スパイス)と油(アルコール)の関係です。アルコール感とスパイスの辛味が共に極端に増幅されてしまいます。基本的には料理やワインのバランスを破壊してしまうので、この組み合わせはNGです。しかし、より強い刺激を求める場合、あえて高アルコール濃度のワインを激辛料理に合わせるという手段も考えられます。アルコール濃度が13%を超えたあたりから、この増幅作用が強まってきます。この作用の最大の利点は、アルコール濃度を13%以下に抑えた場合、辛味の刺激の増幅を抑えつつスパイスの風味を引き立てる、という二次的効果が現れることです。
麻婆豆腐とのペアリングは、アルコールとスパイスの関係性を知る上で非常に参考になる。