2022年11月25日3 分

ボルドーのワイン不正

僅か10年ほどの間に、産地全体の約8割が認証を取得するという、世界でも前例の無いほどの大々的なサスティナブル化に成功したボルドーは、再び世界最先端の銘醸地へと返り咲こうとしているように思えた。

C.I.V.B(ボルドーワイン委員会)を中核としたこの驚くべき変化に関しては、以前の特集記事でも詳しくレポートしたが、今回届いたニュースは、その喜びも、賞賛も、努力も、何もかもを木っ端微塵に破壊してしまいかねないものだった。

2022年10月27日、ボルドーの裁判所で、2016年から2019年に渡って行われた「重大な不正行為」に関する裁判が行われた。

この4年間に、総量約38万ケース相当という量の「スペイン産ワイン」が秘密裏にボルドーへと運ばれ、ボルドー産ワインとブレンドされた上で、栄えあるボルドーAOCの名の下に販売されてきたというのだ。

このような越境ブレンドは、原産地呼称制度が整備される以前は非常に一般的に行われていたもので、当時は合法だったが、現在では当然違法行為となる。

厳しい規制の目を掻い潜って行われたこの不正行為は、綿密な計画によって成されたと考えられている。

きっかけはボルドーにとって厳しいヴィンテージとなった2013年。

巨大協同組合Tutiacに属する Celliers Vinicoles du Blayais(CVB)のセールスマネージャーであり、クルティエ(ワインの仲買人)でもあったミシェル・ギリンが、ボルドーのネゴシアンDefi Vin代表のジャン=セバスチャン・ラフレッシュに接触し、悲惨なヴィンテージを補うために安価なスペイン産ワインを密輸入することをもちかけた。

ギリンとラフレッシュはシャラント地方のネゴシアンであるダニエル・バンシュローが所有する輸送会社を利用して、スペイン産ワインを輸入したが、バンシュローの会社を隠れ蓑にして、数多くの偽書類を作成した上で、幾層にも重なる複雑な偽装工作を施した。

スペイン産ワインは、Defi VinにもCVBにも届けられず、実際には北メドックのベガダネ社に運ばれ、ここで最終的に「ボルドー産」のラベルが貼られることとなった。

このトライアルに味を占めたゲリンとラフレッシュは、2016年以降、さらに大きな規模で不正行為を継続的に行い、大きな利益を得たと考えられている。

裁判の結果、首謀者のゲリンとラフレッシュには懲役5年(執行猶予2年)と20万ユーロの罰金が課され、バンシュローにも罰金が課された。

世界の王者へ返り咲こうと懸命な努力を続けてきたボルドーの数え切れない生産者や、ワイン産業関係者全ての情熱を冒涜し、(ワインに詳しくない)消費者を嘲笑うかのような卑劣極まりない行為は、断じて許されるべきものではない。

この不正はあくまでも数人の私欲に塗れた人々によって行われたものであり、ボルドーという産地全体をおとしめるようなものでは無いが、世界市場がどのようにこの事件に対して反応してしまうのか、不安は拭い切れない。