SommeTimes Academie <16> 農法2でも簡潔に触れたが、本稿では一般的にオーガニックという言葉が用いられる際の基本となる、ビオロジックに関して、詳細を追っていく。
まずは改めて、ビオロジックの基本に再度ふれておく。
ビオロジックとオーガニック農法は、同一のものであると考えて問題ない。その基本は、化学肥料、化学合成農薬を禁じ、天然成分由来の有機農薬のみを限定的に認可する農法である。その点においては、ビオロジック=無農薬では決してないため、正しく理解する必要がある。
認可農薬
代表的なものとしては、うどんこ病対策の為の硫黄粉剤、ベト病対策のためのボルドー液が挙げられる。そして、これら二つの農薬は、ビオロジック農法が抱える本質的な危うさを象徴している。硫黄粉剤の一部はGHS(*1)の区分によると1A、つまり、人に対する発癌性が認められている農薬である。これは残留農薬という点よりも、散布者への危険度の方が深刻な問題となりうる。また、ボルドー液に含まれる銅は、土壌に蓄積し過ぎて地棲生物(主にミミズ等)に害を及ぼしたり、蓄積した銅が雨などで河川に流出し、その汚染水が灌漑用水等に使用されることによって、悪循環が生まれてしまう恐れがある。食品やワインが含むことができる銅の最大許容量は厳しく制限されており、ボルドー液への依存が高い地域からは、少なくない数で、許容量を大きく超えたワインが報告されてきている。
(*1)GHS:Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicalsの略。化学品の危険有害性を、世界統一ルールのもとに分類する機構。
ビオロジックで、なぜそのような問題が発生し得るのだろうか。それは、「可能な限り耕種的、物理的、生物的防除の適切な組み合わせによって対処する」、というビオロジックの大原則が、必ずしも厳格に守られているわけではないということだ。本来は最終手段として限定的に認められているはずの有機農薬も、節度を守らずに依存してしまうと、たちまち害をなすものとなってしまう。農薬を使えるからといって、楽をして良いわけではない。ナチュラル・ワインの造り手たちの中に、認証に対して否定的な者は決して少なくないが、彼らの多くは実質的には認証の規定よりも厳しい自己規定を設けて畑仕事をしており、認証にかかる費用と、認証の規定そのものの「緩さ」にも疑問を呈している。