シラフをどう楽しむか - Sober Curious

「飲めるけど飲まない」という選択肢

緊急事態宣言でお酒がレストランで提供できないのとは別に、*Sober Curious(ソーバーキュリアス)と言うワードがじわじわと飲食業界に広まりつつある。


簡潔に言うとSober=シラフCurious=好奇心シラフを楽しむと言い換えられる。お酒が飲めないわけではなく、あえてお酒を飲まないという選択によって人生が豊かになる、そんな意味をもつ。皆さんもお酒の飲み過ぎで失敗したことは必ず1回や2回はあるはずだ…。(人によっては数え切れない)そんな失敗がなくなったらいいなと思ったことはありませんか?


また、ミレニアム世代の酒離れから始まり、今は飲まないことが”COOL”という時代はすぐそこまできている。我々のような毎日お酒と接している人間からすると、『そんな馬鹿な!』と感じられる方は多いかもしれないが、少し昔を振り返ってみよう。近年の愛煙家の肩身の狭さとは裏腹に、昔テレビで男性の仕草のカッコいいランキングに煙草を吸っている仕草が入っていたことを。煙草とお酒は別だよ!と叱られるかもしれないが、同じような感覚で『お酒?まだ飲んでるの?』そんな事を、真顔で若者に言われる恐ろしい時代がくるかもしれない。



ソーバー・キュリアスは人生を豊かにする?

ワインをメインに取り扱うことを生業としている我々ソムリエからすると、ソーバー・キュリアス?そんなの僕たちに関係ないし…と声が聞こえてきそうだ。実際筆者も最近までそのような感覚でいたが、お酒を提供できない期間が一ヶ月続き、ノン・アルコールドリンクを提供しているうちに新しい飲食店のカタチも見えてきた


ソムリエがワインだけでなく、様々な飲料のスペシャリストであること、そして店舗のビバレッジの売上を把握&管理する者であることを考えると、飲食店におけるノン・アルコールドリンクの売上は無視できない。最近では「ノン・アルコール・ペアリングってありますか?」という問い合わせも多くなった。このようにノン・アルコールを求めているお客様(ソーバー・キュリアス)にどう対応するかというのもソムリエの腕の見せどころなのではないだろうか。


この『アルコール』と『ノン・アルコール』の融合こそ、ニューノーマルの時代に生きるソムリエの新たな挑戦となるのではないかと筆者は考えている。現在、東京のとある繁盛店ではお茶とワインをミックスした「ミックス・ペアリング」が大人気だ。交互に出てくるおかげで酔いも少なく、水を沢山飲んでアルコールをお腹の中で中和して薄める必要もない。体験した感想は、シラフのおかげで会話も料理もしっかりと覚えていて適度な酔いが心地よい。

(飲み足りなくて、二軒目に行きたくなってしまうのは心に秘めておくとしよう…。でもそれぐらいが丁度良いってこと)



ワインをアルコール度数で選ぶリスト

とある海外のレストランに訪れて、素晴らしいワインリストだ!と思ったことがある。そのリストはなんとアルコール度数が全て記載されているのだ。

なぜ素晴らしいリストかというと、アルコール度数が低いワインを決して選びたいのではなく、同じ生産地や同生産者の畑違いのワインが並んでいた場合に、アルコール度数によってそのワインの特徴が見えてくるからだ。ブドウからできるワインは当然ブドウの糖度が高ければアルコールが高くなる。そうするとアルコールが高い方がよく成熟したブドウで造った事になる。ただ、アルコールが高いと酸味が反対に低かったりするので、アルコール高い=良いワインとはならない。その特徴が少なからず、アルコール度数で見えてくるのだ。そこがまたワインの面白いところでもある。


また、ボトルワイン一本飲むと酔いすぎてしまうという方には、『ロー・アルコール ワイン』というカテゴリーも存在する。海外のスーパーマーケットでは最近当たり前になってきたが、日本でも渋谷の東急本店のワイン売り場では専用の棚が存在する。健康意識が高いNew Zealandなどオセアニアでは、大手生産者も造り始めている。需要がもっと高まれば日本にもどんどん入ってくるだろう。

スピリッツ業界でもジンの「ビーフィーター」やウィスキー「バランタイン」を製造するペルノ・リカール社が今年1月、アルコール20度の「ビーフィーターライト」と「バランタインライト」を発表した。アルコール度数3%ぐらいにしてライト・ジン・トニックなどのネーミングで売り出せばバカ売れしそうだ。



井黒のおすすめロー・アルコール・ワイン

私が2017年にカナダのワイン産地を訪問した時に一番印象に残ったワインが、このTidal Bayというワイン。カナダの東海岸に位置するノヴァスコシア州の冷涼な気候で育ったブドウで造られる。この厳しい気候で生き抜くには、品種改良されたドイツ系のハイブリッド品種やアイスワインで有名なヴィダルなど寒さに強い品種でないと生き残れない。これらの品種はアロマティックなものが多いため、香りがとても華やかなのが特徴。またその寒さゆえ、レモンを思わせる強靭な酸味がある。この酸味とのバランスを取るために甘みを少し残し、オフ・ドライ(半辛口)に仕上げるのが特徴で、カナダの特産物でもある塩ゆでしたオマール海老と最高の相性をみせます。これからの真夏に向けた、密を避けたアウトドアで楽しむには最適かつ最高の一本です。(スクリューキャップであることも重要)甘みが気になる方はフレッシュレモンをグラスに絞って氷を足してカクテル風でも気に入ってもらえるはず。

ENJOY WINE, ENJOY LIFE!



生産者:Lightfoot & Wolfville Vineyard / ライトフット&ウルフヴィル ヴィンヤード

ワイン名:Tidal Bay / タイダル・ベイ

ワインタイプ:白ワイン

葡萄品種:ラケディ・ブラン、シャルドネ、ガイゼンハイム318、ヴィダル・ブラン

生産国:カナダ

生産地:Nova Scotia / ノヴァ・スコシア

ヴィンテージ:2019

希望小売価格:¥2,970(税込)

インポーター:ヘヴンリーヴァインズ


*「ソバーキュリアス(Sober Curious)」とは、お酒を飲める人があえて飲まないこと、あるいは少量しか飲まないことを言う。またそのような人やライフスタイルのことを指す言葉。

*主に3年ほど前からロンドンやニューヨークなど都市部で広まりつつあるムーヴメントで、Ruby Warringtonという英国のジャーナリストが考えた造語。


<ソムリエプロフィール>


井黒 卓


国際ソムリエ協会(A.S.I.)認定ソムリエ

米国Court of Master Sommelier認定ソムリエ

2020年 JSA主催 第9回全日本最優秀ソムリエコンクール 優勝

2021年 ASI主催 アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール 日本代表