直訳すれば「灰色ワイン」。
今日は淡いロゼのような色合いの「Vin Gris(ヴァン・グリ)」というカテゴリーのブルゴーニュワインをご紹介します。
「ヴァン・グリ」はフランスでは昔から造られているワインですが、近年あまり見かけなくなり、日本へ輸入しているインポーターさんも少なくなりました。
最近だと日本の甲州を使用した淡い色のワイン(グリ・ド・グリなどと書いてあるワイン)やニュー・カリフォルニアと呼ばれる生産者がラベルにVin Grisと記載してリリースしているものもありますが、基本はロゼワイン、いまいちヴァン・グリとして世の中に認知されていないのが現実。
今一度理解すべく色々と買い、調べながら飲んでいたのですが、「ブルゴーニュ地方」で「ピノ・グリ」を使った「ヴァン・グリ」がとても美味しくてビックリしました・・・。
ブルゴーニュのワインであれば注目度も高く、面白く、皆様のワイン会にも使いやすいかな、と思い、この機会に紹介してみる事にしました。
まず『え?ヴァン・グリって何?ロゼじゃないの?』と思われる方も多いと思います。
フランスには昔からあるカテゴリーなのですが、いかんせんマイナーすぎて聞き慣れない言葉。
一体どんなワインなのでしょうか?
フランス農業省の定義によると
「ヴァン・グリは『白い果肉で金色の果皮』の葡萄(ピノ・グリなどの灰色の品種と呼ばれるもの)や黒葡萄を直ちに圧搾して、白ワインと同じように造られるワインの事である。」
「白葡萄のみから造られる辛口の白ワインをブラン・ド・ブランと呼ぶのと同様に、ピノ・グリのような灰色の葡萄のみから造られるワインをグリ・ド・グリと呼び、これは“独特の色の薄さが特徴となるロゼワインの事”である。」
「美しいサーモンピンクの淡い色合いで、スグリやカシスのような赤い果実のアロマを纏ったワインが多く、生き生きとした味わいが感じられる。 冷やすとより風味が際立ち、若い内から楽しむべきものである。」
と記載があります。
一応ロゼはロゼでも、グリ色の果皮を持つ葡萄品種や黒葡萄を直接圧搾して、果皮は漬け込まずに造られた、淡いオレンジ~ロゼ色のワインの事。
黒葡萄で造る場合は少し黄色~オレンジがかったブラン・ド・ノワール(黒葡萄で造る白ワイン)、のようなイメージでしょうか。
比較的有名・・・でもないですが、知られているのは「フランス3大ヴァン・グリ」と呼ばれるワインで
『ピノ・ムニエから造られるオルレアンのワイン』
『ロワール上流域ルイィで仕込まれるピノ・グリのワイン』
『ロレーヌ地方でガメイやピノ・ノワール、オーセロワから造られるグリ・ド・トゥール』
の3種類。
この地方、地区では何人かの生産者が同じ方向を向き「ヴァン・グリ」と呼ばれるワインを造っています。
そして、今回ご紹介するのはブルゴーニュ地方北部(シャブリの北西)で造られるピノ・グリを使った、フランスのもう一つの「ヴァン・グリ」!
生産者:アラン・エ・ジュリアン・ヴィニョ
ワイン名:ブルゴーニュ コート・サン・ジャック ピノ・グリ
葡萄品種:ピノ・グリ100%
ワインタイプ:ヴァン・グリ(ロゼ)
生産国:フランス
生産地:ブルゴーニュ
ヴィンテージ:2019
インポーター:アズマコーポレーション
参考小売価格:2,890円(税抜) 3,179円(税込)
シャブリの北西に位置するコート・サン・ジャックという地区は1975年に認められたブルゴーニュのAOPで、栽培面積は僅か12haほど、3名の生産者しかいないという小さな小さな産地。
アラン・エ・ジュリアン・ヴィニョの現当主アラン・ヴィニョ氏の祖父が1934年にこの土地で葡萄栽培を始め、代々コート・サン・ジャックを造り続けています。
淡いオレンジのような色合いで、黄桃や若いパイナップルのような果実味とグレープフルーツのような酸が乗り、樽の香ばしさも心地よい。
少しモダンな樽の効いたシャルドネの要素と、アルザスの華やかな品種が合わさったような、ワイン単体で飲んで美味しいワイン。
コート・サン・ジャックでは今は白ワインや赤ワインも造られていますが、その昔はピノ・グリを用いたこのヴァン・グリが主流だったとの事。
あまりに美味しく「これで私の中でフランス4大ヴァン・グリになってしまった・・・」と唸りました。
あまり見かけないワインですが、これでブルゴーニュワイン会のラインナップが一つ増えるのではないでしょうか?
「クレマン・ド・ブルゴーニュ」
「サン・ブリ ソーヴィニヨン・ブラン」
「ブーズロン アリゴテ」
「ピノ・ブーロやピノ・ブラン」
「シャブリ」
「マコネーのシャルドネ」
「コート・ド・ニュイのシャルドネ」
「コート・ド・ボーヌのシャルドネ」
「コート・サン・ジャック ピノ・グリ」
「マルサネ ロゼ」
「クリュ・ボージョレ」
「ブルゴーニュ・パストゥグラン」
「イランシー」
「コート・ド・ボーヌのピノ・ノワール」
「コート・ド・ニュイのピノ・ノワール」
「ヴィレ・クレッセの貴腐ワイン」
「リキキ(ボージョレ地方で造られる甘口)」
「ラタフィア・ド・ブルゴーニュ」
など、泡から甘口まで色々揃えられるのもブルゴーニュ地方の楽しいところ。
細かく分けるとキリがありませんが、マイナーなブルゴーニュだけのワイン会ができたら面白そうだなぁ・・・なんて考えながらこの新型コロナ禍を過ごしております。
ロゼだけ揃えて楽しむ時に1本入れてもよし、何か面白いワインを持って行く時に使ってもよし、ソムリエさんへのブラインドテイスティングで試すもよし。
ピンク色のロゼワインとは違う、「ヴァン・グリ」というカテゴリーのワイン、どこかで出会えたなら、1本試してみてはいかがでしょうか?
それでは。
<ソムリエプロフィール>
沼田 英之 / Hideyuki Numata
WINE MARKET PARTY 店長
1978年東京生まれ。
ホテルのレストラン、バーで経験を積み、イタリアのトスカーナへ留学。
帰国後ホテルのフレンチレストランでソムリエとして従事し、フランスワインを勉強する為、2008年にフランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。2012年より姉妹店であるWINE MARKET PARTY店長として働く。飲食店へのワインリスト制作、料理研究家の方向けのワイン講師、企業向けのワインセミナー、個別のワインサロンなども多数行っている。
<WINE MARKET PARTY (ワインマーケット・パーティー)>
恵比寿ガーデンプレイスにあるワインショップ。100坪ある店内は常時1,200種類以上のワインを揃え、世界中のワイン、食品、雑貨、書籍などを取り扱う。
併設している姉妹店フランスワイン専門店ラ・ヴィネにはマニアックなフランスワインを含め1,000種類近いワインが並ぶ。
計2,000種類以上のワインが揃う、日本屈指の大型ワインショップ。
テイスティングコーナーも併設しており、常時25種類以上のグラスワインが楽しめる。
Comentários