リベラ・デル・デュエロ。
リオハやプリオラートと並び、スペインの三大赤ワイン産地の一角でもあります。
標高800mを越える一帯に開かれた産地であり、
夏には摂氏40度近辺まで上昇し、冬には-20度近くまで冷え込むという、
非常に極端な気候が特徴の一つです。
土壌は主に石灰質の上に粘土という、ヨーロッパ伝統産地の中でも「エレガント系」の組み合わせと言えます。
葡萄品種は、現地ではTinta del Paisと呼ばれるテンプラニーリョが75%以上である必要があります。
トップワインは単一品種であることも多いですが、他にブレンドされる品種がある場合、伝統的にカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、マルベックであることは、スペインの銘醸地の中でも、一際「インターナショナル風」の印象が強くなってしまっている主たる要因でしょう。
しかし実際には、標高の高さ、寒暖差の大きさ、土壌のタイプ、主葡萄であるテンプラニーリョの性質も合わせ、エレガントさこそが本来の特徴です。
ではSommeTimes厳選の10 Best Wines in Ribera del Dueroをご紹介いたします。

自社畑の半分は樹齢60年を越え、醸造所は最新技術で固めた現代的なワイナリーがティント・フィグエロ。低価格帯からトップ・レンジまで隙がなく、緻密なワイン造りのヴィジョンが見事に反映されています。トップワインのTinusは、樹齢90年以上の単一畑に育つテンプラニーリョのみから造られ、力強さとエレガンスが同居した見事なワインです。

1992年設立と若いワイナリーでありながら、明確なテロワール主義のヴィジョンと確かな技術で、瞬く間にトップワイナリーの一つとなったヴィーニャ・サストレ。複数の単一畑ワインをリリースしていますが、トップワインであるPesusが圧巻です。85%のテンプラニーリョにカベルネとメルローをブレンドし、フレンチオーク100%というスタイルは、極めて完成度が高く、インターナショナル派の大傑作の一つと言えます。

伝説的なマウロ・ペレスの跡を継いだ銘醸として名を馳せるのがヴィーニャ・ペドローサ。樹齢20年以下の若木から作られる最もベーシックなCepa Gavilanのクオリティにも驚かされますが、トップワインであるPeréz Pascuas Gran Seleccionの圧倒的な酒質が凄まじいです。若い時は濃厚なワインでもありますが、繊細さもしっかりと兼ね備え、スペイン御家芸の超長熟ポテンシャルも桁違いです。

ヴェガ・シシリアで30年間も醸造長を務めた、スペイン最高の醸造家の一人であるマリアノ・ガルシアが興したワイナリー。ヴェガ・シシリアとは本質的にワインのスタイルが異なる点も非常に興味深く、アールトのモダンで洗練されたテクスチャーとダークな果実味は、高樹齢の葡萄からくる凝縮感としなやかさを華々しく表現しています。

リベラ・デル・デュエロで三代に渡り家族経営を続けてきたエミリオ・モロは、規模を順調に拡大しつつも、その徹底的な品質主義を低価格から超高価格まで貫いている、この産地屈指の優良生産者。そのワイナリーとしての総合力こそ評価されるべきポイントではありますが、トップワインのClon de la Familiaは、間違いなくこの地指折りの極上ワインです。

今回ご紹介するワイナリーの中では、最も歴史が浅く(2010年設立)、最も若い造り手であるのが、ドミニオ・デル・アグイラ。ホルヘ・モンソンはDomaine de la Romanée-Contiの高名なベルナール・ノブレに師事した後に、リベラ・デル・デュエロに戻り、次はヴェガ・シシリアで働きました。まさに「華麗」な職歴を誇る彼が生み出したのは、この地に新世代の猛烈な旋風を巻き起こすかのような衝撃的ワイン。トップワインのCanta La Perdizは樹齢100〜150年の「自根」の区画から造られ、驚くほどの軽やかさと華やかな芳香を放つ大傑作ワイン。

標高1000mを越えるアタウタ村に拠を構えるドミニオ・デ・アタウタは、リベラ・デル・デュエロの数多い銘醸の中でも、特異な存在。アタウタ村に残るプレ・フィロキセラの超古木(当然、自根)は、極端に降雨量が少なく、昼夜の寒暖差が激しい過酷な環境を生き抜き、独特の個性をもつに至っています。ワイナリーはその特性を無理に味付けすることなく、ワインへと転化させることを信条としています。わずか1樽というトップワインのLa Rozaは、この畑の極度に乾燥した砂質土壌でしか生まれ得ない、驚くべき飛翔感と真円のテクスチャーが印象的な、リベラ・デル・デュエロの最高傑作の一つ。

ドミニオ・デ・アタウタと同じく、アタウタ村に拠点を置くドミニオ・デ・エス。トップワインのLa Divaは、樹齢140年の自根の区画から作られ、やはりこの地ならではの、独特の軽やかさが魅力的なスーパーワイン。今回ご紹介した2つのワイナリーを含めた複数の優秀なワイナリーの功績により、アタウタ村がリベラ・デル・デュエロにおける特級畑の筆頭格と目されるようになりました。

この地における最高価格を誇る銘醸中の銘醸が、ドミニオ・デ・ピングス。デンマーク人のピーター・シセックが率い、そのカルト的人気と、ロバート・パーカーJrによる高得点が嫉妬を呼び込み、パーカー風味に仕上げられたインターナショナルスタイルの非伝統的ワインを揶揄されもしましたが、実際のワインはそんな印象とは大きくかけ離れています。2000年からビオディナミに転換し、さらに高まったエネルギー感と長大な余韻は、まさにグラン・クリュ!醸造技術で作られたワインではなく、紛れもないテロワールのワインであることは、明確です。旗艦的ワインはワイナリーの名を冠したPingusですが、たった1樽だけ生産される、Ameliaという極めてレア(そして大変高価)なワインもあります。

スペイン最上のワインとして、古くから知られるヴェガ・シシリアのウニコ。もはや語り尽くされたと思われているワイナリーですが、実はかなりの秘密主義としても知られていて、未だにその全貌が明らかになっていない、神秘的な存在でもあります。なぜこんなにもウニコが凄いのか、その理由はありきたりの予想で答えるしか無いように思えます。ヴェガ・シシリアが有するウニコの原料となる畑は、まさに奇跡的な完全性を備えた、グランクリュ中のグランクリュに違いないということでしょう。