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Mission Impossible!? 火鍋とワイン
昨今の四川ブームで文字通り「火がついて沸き立つ」ような人気が出ている料理の一つ、火鍋。 火鍋は、中国・重慶市の郷土料理「重慶火鍋」に代表される「麻辣火鍋」(要するに、真っ赤な色をした強烈に辛い火鍋の類)だけとして食べることが伝統だったが、1980年代に入ると辛いものが苦手な人たちのために、内モンゴル発祥の濃厚な豚骨スープ(こちらは辛くない)を取り入れ、それぞれを「陰陽文様」を表した仕切りの左右に配置する「鴛鴦(ユアン)火鍋」が考案された。 筆者は日本で火鍋ブームが起きる随分と前に、香港で本場の味を体験しているのだが、正直なところ、実は「恐怖」として記憶に残っている。 失神しそうなほど辛かったのもそうだが、獄炎がごときスープに隠れた謎食材の数々こそが本当の恐怖だった。 おそらく何かしらの「ホルモン」と思われるその肉と思わしきものは、生粋のホルモン好きである私ですらも箸を置くほど強烈な見た目をしており、勇気をもってその謎肉を食べた私の後輩は、翌日見事に腹を下していた。 さて、今回の検証では(真っ当な)麻辣火鍋を題材にしていくのだが、これがワインにとっ

梁 世柱
2022年11月16日


ゴーヤチャンプルーに挑戦
私は無類の 沖縄料理好き だ。 ミミガー、ソーキ、ラフテー、タコライス、ジーマーミ豆腐、テビチ、海ぶどう、島らっきょう、沖縄そば、サーターアンダギーと、まさに大好物のバーゲンセール状態。 そんな沖縄料理の中でも、特に愛してやまないのが、 ゴーヤチャンプルー である。 スパム(豚肉)、木綿豆腐、卵、ゴーヤ、鰹節という食材を油で炒めるというシンプル極まりない構成ながら、塩、旨、苦味が高次元で融合するゴーヤチャンプルーは、日本の郷土料理を代表する一皿。 もちろん、泡盛やシークァーサーサワーが最高のお供なのだが、ワインで合わせるのも非常に楽しい。 しかも、ゴーヤチャンプルーへの合わせは、 ペアリングにおける複数の「例外パターン」が当てはまる ため、ペアリングの学びにとっても最適な一皿なのである。

梁 世柱
2022年11月4日


グリーンカレーとペアリング
世界が本格的に開き始め、海外への渡航も随分と容易になった。MySOSなるアプリを使用すれば、少々登録は面倒だが、日本入国時の検疫を楽々とスルーできるため、むしろ昔よりも(まだ空港が空いていたというのもあるが)遥かに早く到着ゲートを抜けることができる。成田空港への着陸からスカイライナーに乗り込むまでの所要時間は、わずか45分。 さて、そんな状況もあってか、突然の弾丸タイ訪問を決行したのは9月。もともとは宮古島で用事があったのだが、台風によって全てキャンセルになってしまったため、せっかく調整していたスケジュールを無駄にしまいと、出発前日にタイ渡航を 急 遽 手配 した。 バンコク を訪れるのは4年ぶり。騒がしく、雑多な街だが、 東京よりも遥かにインターナショナルでエネルギッシュ なバンコクは、大好きな場所だ。 そして何より、 とにかく食べ物が美味しい 。 ストリートフードはまぁご愛嬌といった感じだが(例外あり)、ちょっとした食堂でも十分に美味しく、それなりのお店に行けば、東京でもなかなか体験できないような美味に出会える。 タイの通貨であるタイバーツと

梁 世柱
2022年10月26日


日本ワインペアリング <7> 山幸
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第七回となる今回は、北海道で開発された 「山幸」(やまさち) を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 山幸は、北海道の池田町にある十勝ワイナリー(日本では初の自治体が運営しているワイナリー)が「寒冷地に適した葡萄」として開発に携わった葡萄です。 親にあたる葡萄は、片方がフランスで開発されたハイブリッド品種のセイベル13053を基にして1970年に誕生した 「清美」 、そしてもう片方は日本の在来品種である 「山ぶどう」 です。 山幸が完成したのは、清美の誕生から36年後。山幸の6年前に誕生した「清舞」を含めれば、なんと 20,000回を遥かに超える試験栽培 が繰り返されたそうです。 十勝の期待を一身に背負った山幸は、2020年、 OIV(国際ブドウ・ワイン機構) に、甲州、MBAに次ぐ3番目

梁 世柱
2022年10月1日


日本ワインペアリング <6> 小公子
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第六回となる今回は、西日本側で主に栽培されている 「小公子」 を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 小公子は、日本葡萄愛好会の澤 登晴雄氏 が開発した品種ですが、日本だけでなく、中国圏やロシア圏の「 ヤマブドウ 」も含めて ヤマブドウ系品種を複雑に交配 したものと考えられていますが、 詳細は依然不明のまま です。 一般的にはヤマ・ソーヴィニヨンや、ヤマ・ブランと同様にヤマブドウ改良種の範疇に入っていますが、独特の個性を得るに至っています。 そんな小公子の最大の特徴は、 ヴィニフェラ種に非常に近い特性 をもっている点です。 野趣溢れるアロマ、非常に濃い色調、高い糖度、豊かな酸とタンニン、力強い余韻。 非ヴィニフェラ種や、ハイブリッド品種に一般的に見られる特徴とは明らかに反する、非常にヴィニ

梁 世柱
2022年9月10日


日本ワインペアリング <5> 竜眼
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第五回となる今回は、長野県で主に栽培されている 「竜眼」 を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 竜眼はいまだに 謎の多い葡萄品種 で、明治初年に中国から長野県に渡ったという説や、奈良時代にまで遡れるという説もあったり、一時期は甲州の親品種と考えられていたり(現在は遺伝子調査によって否定されました)、中国にある同名の「竜眼(LONGYAN)」と同じはずなのですが、形態学的には異なる部分も非常に多かったり、そもそも中国原産ではなく、カスピ海周辺が起源ではないかと言われていたり、などなど、どうにもすっきりしません。 日本国内での名称も、竜眼、龍眼、善光寺ぶどう、善光寺竜眼、長野竜眼など統一感があるようで無いという微妙な状況です。(善光寺とも関連があるのですが、その話をすると長くなりますので割愛

梁 世柱
2022年8月28日


日本ワインペアリング <4> マスカット・ベイリーA
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第四回となる今回は、日本発祥のハイブリッド品種である 「マスカット・ベイリーA」 を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 マスカット・ベイリーA(以降、 MBA と表記)は、 川上善兵衛氏 によって、アメリカ系葡萄品種の ベイリー種 、そして、フランスやイタリアで主に生食用の葡萄として栽培されていたヴィニフェラの一種である ミュスカ・ド・ハンブール (イタリア語ではモスカート・ディ・アンブルゴ、英語ではブラック・マスカット)の交配品種として、1927年に開発されました。 日本では、 「ベーリーA」と表記される方がより一般的 で、「ベリーA」や稀にですが「ベーリA」という表記も見かけます。しかし、親品種であるベイリー種の綴りが「Bailey」であることから、 「ベイリーA」と表記するのが最も

梁 世柱
2022年7月30日


テロワールペアリングの真価
ワインに宿るテロワール。 今回は、ペアリングという目線に限定するために、かなり 定義を絞って お話ししていこうと思う。また、現時点での 科学的根拠というものを、相当程度無視 していることもご承知いただきたい。 ペアリング理論におけるテロワールの捉え方は、 「内陸」と「水辺」 に大別した上で、内陸であれば、 平地、丘陵地、山岳地 に細分化し、水辺であれば、 湖畔、川辺、海辺、島 と細分化させると分かりやすい。 不思議なことに、 それぞれに宿ったテロワールの強さは、内陸であれば、平地から山岳地に向かうほど強くなり、水辺であれば、湖畔が最も弱く、島が最も強い 。 厳密にいうと気候や土壌も絡んでくるが、話がややこしくなる上に、そこまでの深い「こだわり」を理解できる消費者もごく稀と言えるだろうから、正直なところ、あまり深く考えない方がテロワールをペアリングの要素として使う際には、はるかに簡単になる。 さて、がっかりするかも知れないが、実は テロワールの要素は、ペアリングの構築において、かなり優先順位が低い 。

梁 世柱
2022年7月16日


日本ワインペアリング <3> ブラック・クイーン
本シリーズの第一回 で書いた通り、文化としてワインが根付いていない日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、特別な関係性は極めて生じにくいと言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、冷静さであり、素直さです。 本シリーズの第三回となる今回は、日本発祥のハイブリッド品種である「 ブラック・クイーン 」を題材にして、ペアリングの可能性を検証していきます。 ブラック・クイーンは、より有名な マスカット・ベイリーA と同様に、 川上善兵衛氏 によって、 アメリカ系葡萄品種のベイリー 、そして、 イギリスの食用ハイブリッド品種であるゴールデン・クイーン の交配品種として、1927年に開発されました。 親であるゴールデン・クイーン自体も、ヨーロッパ系ヴィニフェラ種とハイブリッド系品種の交配葡萄であることから、ブラック・クイーンに残った(一般的にワイン醸造に向いているとされる) ヴィニフェラ種の遺伝子割合は、かなり少ない ことがわかります。 そして、この遺伝的特徴は、ワインにも確かに現れてきます。 さて、ワインになった時の、一般的なブ

梁 世柱
2022年6月20日


日本ワインペアリング <2> 甲州
本シリーズの第一回 で書いた通り、 文化としてワインが根付いていない 日本では、地の食である日本料理と、日本で造られたワインの間に、 特別な関係性は極めて生じにくい と言えます。 ペアリングの真髄にとって重要なのは、 冷静さであり、素直さ です。本稿では、日本の土着品種とも言える 「甲州」 を題材にして、甲州ワインを使ったペアリングを冷静かつ素直に分析していきます。 甲州は、現時点でのDNA鑑定(この手の鑑定は、覆ることがしばしばあります)では、 欧州種 (ヴィティス・ヴィニフェラ種)が 東洋系欧州種 (ヴィティス・ダヴィディ種)と自然交雑した後、 さらに欧州種と交雑 したことによって誕生したと考えられています。この鑑定結果が正しければ、 甲州の3/4は遺伝子的にヴィニフェラ種 であるということになります。 ヴィニフェラ種と中国系野生種との交配がきっかけで誕生したため、 起源は日本ではありません が、 7世紀 (奈良時代最初期)に山梨県甲州市にある大善寺を建立した時に発見されたという説と、 12世紀後半 (鎌倉時代最初期)に同じく甲州市の上岩崎で

梁 世柱
2022年6月4日


日本ワインペアリング <1> 巨峰
かねてより非常にリクエストの多かった、 日本ワイン を題材としたペアリング記事の新シリーズをスタートいたします。 まずは、このシリーズをお読みいただくにあたって、ご理解いただきたいことがございますので、最初に述べさせていただきます。少々厳しい意見かも知れませんが、ご容赦くださいませ。 特定の地方や国の料理と、同じ地で生まれるワインの間 には、 切っても切り離せない関係性 が生まれることがあります。これらのペアリングは「 クラシックペアリング 」と呼ばれることも多く、現代に至ってもペアリング理論の基礎を、部分的ではありますが(全てのクラシックペアリングが優れているわけではありません)、確かに担っています。 しかし、これらのクラシックペアリングは、 必ず同じ条件の元に生じます 。それは、 その地のワインが、その地の食文化の中に、何百年もの間、深く根差し続けてきた、という条件 です。 その何百年もの間で、地方の料理と地方のワインが同じテーブルに並び続けた結果として、相互が自然と寄り添うように変化し合い、クラシックペアリングが生まれます。 さて、ここで一

梁 世柱
2022年5月24日


魅惑のスリランカタンドリーとペアリング
昨今のオリエンタルカレーや、スパイスカレー人気の高まりもあり、いわゆる「インドカレー屋」は日本全国津々浦々に広がっている。 筆者も無類のインドカレー好きで、良く食べ歩くのだが、今回はインドカレーとは少し違う スリランカカレー の名店に出会った。 東京は足立区、 北千住 にある「 タンブリンカレー&バー 」だ。 北千住駅の西口から出て、左方向を見るとマクドナルドがある。そこを境目に右側の通りと左側の通りには、東京でも指折りのカオスな空間が広がっており、センベロ的な立ち飲み店や、世界各国の様々な専門料理店だけでなく、いわゆる「ピンクなお店」も狭い範囲に多数混在しており、またそれらのお店が絶妙な「場末感」を醸し出しているため、なんとも不思議な空間になっている。 人通りは多く、細かな路地にもお店がびっしりと入っており、なかなかの繁盛エリアだ。 ぶらぶらと歩いて、気になるお店に立ち寄って一杯ひっかけるだけでも、かなり楽しいエリアなので、東京のメジャースポットに飽きた人には、訪問を強くおすすめする。 筆者にとっても、生まれ育った大阪の鶴橋という街の高架下エリ

梁 世柱
2022年5月16日


ポッサムをワインで攻略
日本と韓国、そして中国は食文化的に共通しているものが実に多い。その最たるものは調味料類で、特に味噌(醬)と醤油は各国各地方に膨大なヴァリエーションが存在する。どこの国が起源か、という論争も根強くあるが、少なくとも1000年以上前から存在しているものを、現存する数少ない文献から起源を探っても、あまり意味は無いように個人的には感じる。 中国料理の中で選りすぐられたもの(世界三大料理の勇名は伊達ではなく、中国料理の奥深さは常軌を逸している)は、日本の食文化にも深く根付いているし、韓国料理にしても、キムチ、チヂミ、ピビンパ、スンドゥブチゲ、プルコギ、冷麺、タッカルビなど、広く一般的に日本で親しまれている料理は数多い。 今回、ペアリングのお題として取り上げたいのは、そんな韓国料理の中でも、ちょっとマニアックな一品である、「 ポッサム 」だ。 ポッサムという言葉自体は「 包む 」という意味なのだが、韓国料理の料理名はピビンパ(ピビン=混ぜる、パ=ご飯)のように、 調理法がほぼそのまま料理名になっている ことも多い。 ポッサムは、 皮付きで茹でた豚バラ肉 を薄

梁 世柱
2022年5月4日


オニオン・グラタン・スープという強敵(後編)
前編 でもNYでの思い出と共に語ったように、私にとってオニオン・グラタン・スープという料理は、ただのクラシックという枠に収まらない。それは、憩いの場にふさわしい料理であり、息抜きの瞬間にふさわしい料理であり、心の深いところが、じわじわと癒されていくような料理だ。 筆者が東京に来てから長らくの間、第二の家とも言えるような憩いの場にも、オニオン・グラタン・スープがある。しかも、絶品中の絶品だ。 東京都荒川区の町屋駅から徒歩7分ほどの閑静な住宅街の中、東京では絶滅危惧種となりつつある昔ながらの銭湯の真向かいに、一軒家レストラン「 おーどぶるハウス 」はある。 創業は1973年。家族経営の名店は、フランスに料理修行にも出た二代目マスターが引き継ぎ、私のようなローカル客と、区外からの訪問客で毎夜賑わっている。 二代目が引き継いで以降、「町の洋食屋」は、 ナチュラルワイン を豊富に揃えたレストランへと進化した。店の隅々には、過去に誰かが飲んだワインの空瓶が陳列され、まるでそれぞれのボトルに込められた瞬間瞬間のストーリーが、大切に保存されているかのようだ。

梁 世柱
2022年4月22日


オニオン・グラタン・スープという強敵(前編)
豪 奢 なレストラン で、 アート のように飾られた一皿に込められた、 驚異的な技術と奥深い伝統 を体感する。ハレの日の 高級フランス料理 には、確かに特別なものがある。しかし、筆者は カジュアルなフランス料理 も大好きだ。カジュアル・フレンチには、 ブフ・ブルギニョン、エスカルゴ・ブルギニョン、キッシュ、スープ・ド・ポワソン、カスレ と筆者の大好物が目白押しなのだが、その中でも特に思い入れの強い料理は、 オニオン・グラタン・スープ だ。 フランス語では、 Soup à l’Oignon Gratin é e 。英語では、 French Onion Soup 、もしくは French Onion Soup Gratinee と呼ばれるこの伝統料理は、世界で最も完成されたカジュアル料理の一つ、と私は思っている。 私がニューヨークで働いていた頃、マンハッタンから、自宅のあるクイーンズへと戻る中間地点に、 Le Bateau Ivre というフレンチ・ワインバーがあった。 深夜3時頃まで営業していたLe Bateau Ivreは、厳しく激しいレストラ

梁 世柱
2022年4月14日


比内地鶏に挑む
日本にはかなりの数の「地鶏」がいる。 全国的に流通、もしくは地方の焼き鳥店などへ行けばそれなりに食べられる、という括りにすれば、その数は 60種類をゆうに超える というのだから、驚きだ。 その圧倒的なヴァリエーションゆえに、地鶏は日本という小さな国の異次元的に豊かな食文化を象徴する食材、とすら言える。 そして、その中でも日本三大地鶏と呼ばれているのが、鹿児島県の「 さつま地鶏 」、愛知県の「 名古屋コーチン 」、そして秋田県の「 比内地鶏 」である。 食べ比べをすれば誰でもわかるくらいに、地鶏によって味わいと肉質は大きく異なる。 最終的にはもちろん、人それぞれの好みの問題、となるが、 筆者にとっての至高の地鶏は、比内地鶏だ 。 濃密な脂と肉の旨味、絶妙な弾力のある歯応え、縦横無尽に広がる味わい、中心の圧倒的な力強さ。 どれをとっても、比内地鶏は「 グランクリュの味 」がする地鶏だ。 東京都内にも比内地鶏を売りにする焼き鳥の名店は多数あるが、先日訪れた根津の「 照隅 」もまた、比内地鶏のポテンシャルを最大化する極上の名店だ。

梁 世柱
2022年4月1日


至極の天麩羅とワイン
油が熱を宿していくと、扇情的なハイノートの旋律が流れ、徐々にその音色は音域を広げながらハーモニーとなり、やがて、小さな管弦楽団のような厚みとリズムが生まれる。つややかな衣を纏った食材が加わると、パーカッシヴな音に包まれたオーケストラへと変貌する。 何度も聴いてきた音だが、この日だけは何もかもが違った。 全ての音が、驚くほど鮮明に聴こえたのだ。 全ての音が、緻密な強弱と抑揚を讃えながらも、一つの壮大な音楽を奏でていたのだ。 それはまるで、天才指揮者 サイモン・ラトル が率いていた頃の、 ベルリン・フィル・ハーモニー の演奏のようだった。 コンサートホールの名は、 成生(なるせ) 。 静岡にある僅か8席の天麩羅料理店には、日本全国から筋金入りの美食家たちが集う。 食材は、ほぼ全て静岡産。 鮮度もそうだが、目利きも桁違いに凄い。 さらに、固定概念に捉われない自由な発想と、それを実現する技の圧倒的な練度。 時に揚げたてが供され、時に余熱を経たものが供される、千変万化の夕べ。 次の天麩羅が供されるまでの時間ですら、未体験のご馳走に思えた。...

梁 世柱
2022年3月30日


ペアリングの構築手順
ペアリングの基礎理論に関しては、一連の 「ペアリングの基本」シリーズ で説明してきましたが、実践になると、 理論をどのように順序立てて組み合わせて使っていくかが鍵 となります。 なお、あらゆる基礎理論を精密に組み合わせられるようになれば立派な上級者ですが、最終的に 「主観」 に落ちてしまうのがペアリングの本質でもありますので、 徹底的に理論武装したからといって、常に最適なペアリングになるとは思い込まないほうが良い でしょう。 実は、ペアリング基礎理論には、明確な 「優先順位」 があります。 これは、ペアリング理論に基づいた複数の効果が確認できる際に、より 優先度、もしくは支配度の高い項目が存在する ということです。 この優先順位を理解していないと、どれだけ基礎理論を単体の項目ごとにマスターしていても、完成度の高いペアリングにはあまりなりません。 では、優先順位の高い順から説明していきましょう。 また、スムーズな解説の流れになるように、各項目の詳細は記載しません。 「ペアリングの基本」シリーズ の中から、該当する詳細を学んでください。 優先順位No

梁 世柱
2022年3月15日


葡萄品種から探るペアリング術 <9> アルバリーニョ
葡萄品種から探るペアリング術シリーズは、特定の葡萄品種をテーマとして、その品種自体の特性、スタイル、様々なペアリング活用法や、NG例などを学んでいきます。 今回は、アルバリーニョをテーマと致します。 また、このシリーズに共通する 重要事項 として、葡萄品種から探った場合、 理論的なバックアップが不完全 となることが多くあります。カジュアルなペアリングの場合は十分な効果を発揮しますが、よりプロフェショナルな状況でこの手法を用いる場合は、ペアリング基礎理論も同時に参照しながら、正確なペアリングを組み上げてください。 アルバリーニョのスタイル アルバリーニョのスタイルは、(甘口が非常に少ないという点を除いて) リースリングとの類似点 が多く見られます。醸造方法や他品種とブレンドするか否かに関しては、世界各地で様々なヴァリエーションがありますが、ペアリングという局面において、アルバリーニョを用いる意味を踏まえれば、 考慮すべき基本スタイルは一つ しかありません。基本的には、 ステンレスタンクやコンクリートタンクといったクリーンでニュートラルな発酵槽と熟成

梁 世柱
2022年2月22日


葡萄品種から探るペアリング術 <8> メルロー
葡萄品種から探るペアリング術シリーズは、特定の葡萄品種をテーマとして、その品種自体の特性、スタイル、様々なペアリング活用法や、NG例などを学んでいきます。 今回は、 メルロー をテーマと致します。 同じボルドー品種である カベルネ・ソーヴィニヨン との共通点や違いも合わせて、読み進めてください。 また、このシリーズに共通する 重要事項 として、葡萄品種から探った場合、 理論的なバックアップが不完全 となることが多くあります。カジュアルなペアリングの場合は十分な効果を発揮しますが、よりプロフェショナルな状況でこの手法を用いる場合は、ペアリング基礎理論も同時に参照しながら、正確なペアリングを組み上げてください。 メルローのスタイル 品種自体の主張が非常に強いカベルネ・ソーヴィニヨン(以降、 CS と表記)に比べると、メルローは 主役としても脇役としても、落ち着いた輝きを放つ品種 です。CSと同様に、国際品種としては最も成功したものの一つですので、文字通り、世界中で栽培されています。 CSに比べると、 香りや風味の共通点は多い のですが、...

梁 世柱
2022年2月5日
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