2023年5月26日2 分
Grain-mur, Brise d’été 風薫る 2022.
日本ワイン、特に長野県や北海道のワインを飲む時に、単純な銘柄や味わいとは別のちょっとした楽しみがある。
その楽しみとは、裏ラベルに小さく書かれた「製造者」の欄にある。
極小生産規模のワイナリー(ワインレーベル)にとって、大変お金のかかる醸造設備を整えるのは簡単ではない。
また、醸造設備をもてたとしても、経済的なことを考えれば、少量生産ではなかなか難しい。
ワイン特区制度などの緩和策によって醸造所を構えるハードルが下がっているとはいえ、どちらにしても、「量」は大切なのだ。
そんな極小ワインレーベルと小規模ワイナリーの事情が、実にwin-winな関係となって成立しているのが、「委託醸造」である。
我々ワインファンとして注目したいのは、この委託醸造における「醸造家のスタイル」だ。
全ての委託醸造がそうではないが、多くの場合、醸造は委託先の醸造家に任される。
そうなると、どのワインレーベルであっても、必然的に「醸造家の癖」が見え隠れしてきて、なんとも楽しいのだ。
今回のワインメモに登場するのは、そんな委託先が素敵!なワイン。
長野県小諸市で育てられたシャルドネを、チャーミングさ全開のペット・ナットに仕上げたのは、現在非常に入手困難なカルト的ワインとなった、テール・ド・シエル。
センス抜群のクリーン&ナチュラルな醸造が、若さ溢れるシャルドネの魅力を最高にプッシュしている。
その味わいには、「醸造家のスタイル」が良い塩梅でにじみ出ているので、テール・ド・シエルのワインは入手が難しくても、このワインからその実力を体験することはできる。
もちろん、良い葡萄が合ってこその良いワイン。
しっかりと熟したシャルドネを育てた、Grain-murの情熱にも心を打たれるものがある。
栽培家のヴィジョンや努力と醸造家のセンスが、まるで掛け算のように組み合わさって生まれる「委託醸造系」ワイン。
こういう楽しみ方も、日本ワインの可能性を押し広げてくれるのでは、と期待している。