4月26日3 分
Nyetimber, Cuvée Chérie Demi-Sec NV.
高品質かつテロワールに正直なワインでさえあれば、基本的には「なんでもあり」な私だが、それでも販売に四苦八苦するタイプのワインというのは僅かに存在する。
中でも特に、Demi-Secタイプのスパークリングがそうだ。
もはや本家本元と言えるChampagneですら、Demi-Secが絶滅危惧種と化しつつあるほど、生産量が減っているのには、ちゃんと理由があると思う。
端的に言うと、時代に合わない、のだ。
甘さを残したワインの販売難には、ドイツ、ソーテルヌ、トカイですら匙を投げはじめているのだから、辛口な味わいを求める大衆の「集の力」はそれだけ大きいと言うこと。
しかし、グラスやボトルとしての販売は難しくても、ペアリングの文脈から戦略をたてるのは比較的簡単なのだから、まだ救いがある。発泡さえしていなければ。
発泡かつ甘い、となるとTPOが極端に限られてしまうのだ。
しかも、Champagneや今回のWine Memoとして取り上げるイギリスのスパークリングの場合、価格の問題まで入り込んでくる。
ピクニックやBBQでキリッと冷やして、爽快に楽しむ、と言う目的に甘口発泡ワインは最高にフィットすると思うが、その目的ならイタリアのモスカート・ダスティあたりで十分だ。
そのようなシチュエーションで、わざわざストラクチャーと奥深さのある高級品を飲もうと思うのは、よほどのモノ好きか、極一部のお金持ちくらいなものだろう。
甘さを活かして、スパイスの効いた東南アジア料理や、甘すぎないスイーツに合わせるという方法もあるが、ここでも価格がネックとなることは多いのでないだろうか。
コース料理のペアリングに組み込むにしても、スパークリングをコース中に2種類出すことになる可能性が高く、そのハードルをクリアするには、かなりのサーヴィス能力が求められてしまうだろう。
要するに、やっぱり難しい、のだ。
それでも私は、Demi-Secタイプの高品質スパークリングが大好きだ。
Gusbourneと双璧をなす、南イングランドを代表するスパークリング・ハウスNyetimberが手がけるDemi-Secも、その品質の高さにはただただ驚かされる。
南イングランドらしい強烈なシャルドネの酸を、濃厚なドサージュで中和するダイナミックな構成は、ミネラリーなシャンパーニュの表現とはまた違っていて、非常に興味深い。
甘いレモンタルトを思わせる味わいも実にチャーミングで、どことなくアフタヌーンティーとの親和性も感じるが、そもそもそのようなイギリスの貴族文化を楽しむ日本人がどれだけいるのか(流行り始めているのは知っているが、アフタヌーンティーの主役はあくまでも紅茶だ。)は、少々疑わしい。
個人的には、Demi-Secのブームでも到来したら面白いと思っているが、そんなことはまぁ、起こらないだろう、きっと。