4月11日3 分

Wine Memo <23>

Geheimer Rat Dr. von Bassermann-Jordan, Deidesheimer Kieselberg Riesling Trockenbeerenauslese 2015.

 

世界三大貴腐ワインといえば、フランス・ボルドーのソーテルヌハンガリーのトカイ、そしてドイツのリースリング・トロッケンベアレンアウシュレーゼ

 

トカイの最高級品であるエッセンシアは、飲むというより「舐める」ので、比較対象にそもそもならない気もするが、極甘口ワインがたまらなく好きな私にとっての最上は、トロッケンベアレンアウシュレーゼ一択だ。

 

平均して8%前後のアルコール濃度、濃密極まりない甘味を、時に12g/Lを上回る凄まじい酸で中和したダイナミックかつ超多次元的なストラクチャー、糖分と合わさって強烈な粘性を生む凝縮したミネラル、桃源郷の余韻。

 

この地球上に、これほど甘美な液体は存在しないと、最高のトロッケンベアレンアウシュレーゼと巡り合う幸運に恵まれる度に思い知らされる。

 

一口含むと、世界が変わる。究極の瞑想酒とはこのことだ。(個人的には、最高のマッカランもここに加えたいが。)

 

もう一つの最上クラスであるアイスヴァインは、気候変動の影響もあって、もはや幻と化してしまったが、個人的には常にトロッケンベアレンアウシュレーゼはアイスヴァインに遥かに勝ると思ってきたので、(文化的損失は横に置いておけば)あまり気にしてはいない。

今回のMemoに残しておきたいのは、ファルツ地方の大銘醸、バッサーマン=ヨルダントロッケンベアレンアウシュレーゼ

 

葡萄畑はドイツのグランクリュ格であるグローセス・ゲヴェクス(通称G.G.)に名を連ねる、Deidesheimer Kieselberg

 

そして、ファルツ地方の貴腐リースリングにとって史上最高のヴィンテージの一つとなった2015年

 

まさに「最高」が詰まりに詰まった、至極の一本である。

 

価格を調べてみたところ、現地ドイツのショップで約33,000円(ハーフボトル)と非常に高価だったが、どうしょうもなく少な過ぎる生産量と、あり得ないほどの高コスト、そして隔絶した品質を考えれば、仕方ないと納得するしかない。

 

Prowinの展示会場にて、早々にこのボトルへと辿り着いたのだが、もうその後に仕事(テイスティング)をするのが嫌で嫌で仕方なくなってしまうほど、現実世界へ戻ってくるのに時間がかかってしまった。

 

どのようなテイスティングコメントも、このワインの美を正しく伝えられると思えない。

 

ジャーナリストとして悔しく思うべきなのかも知れないが、ここまでくるともはや痛快だ。

 

同じ金額を、当たるか外れるかはギャンブル状態となるブルゴーニュの一級畑に投じるなら、確実に「生涯の記憶に残る」この一本を私は買いたいと心から思う。

 

一昔前に比べるとかなり値段は上がったものの、まだこの程度に抑えられているのは、世界中に蔓延する「辛口マッチョ信仰」のおかげだと、こういうときばかりは辛辣にならずに、素直に感謝しておこうと思う。