2月16日3 分
Ca di Pesa, Serafino 2021.
今年もまた2月のトスカーナにやってきた。
ニューリリースを祝うアンテプリマ展示会だ。
6日間ほど、ひたすらサンジョヴェーゼの海を泳ぎ続ける日々は実に楽しいが、なかなか辛くもある。
若いサンジョヴェーゼをテイスティングし続けるのは、実際にかなり骨が折れる。
数時間テイスティングすればもう、強い色素で完全にお歯黒状態となり、強烈な酸の刺激で舌が痺れ、分厚いタンニンが歯茎にびっしりとへばりつく。
初日の緩いレセプションを終え、今年のアンテプリマはキアンティ・クラシコからスタートした。
私はキアンティ・クラシコが大好きなのだが、少々偏った「好み」がある。
そう、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどがブレンドされたクラシコが、とにかく好きでは無いのだ。(このタイプのクラシコは、明らかに減少傾向にある。)
誤解されないように説明しておくが、ワインとしてダメとは全く思っていない。むしろ、クラシコに限らず、ボルドー品種がブレンドされたワインやボルドー品種だけのワインには、素晴らしいものが無数にあると思っている。
ただ、それらがキアンティ・クラシコである必要は無い、と思っているだけだ。
キアンティ・クラシコを名乗るのであれば、サンジョヴェーゼ単一、もしくはサンジョヴェーゼ主体で、ブレンドはカナイオーロ、コロリーノなどの地品種のみとし、国際品種を少しでも混ぜれば他のDOCやIGTとなる、といったルールであれば、クラシコの伝統と文化、歴史的価値が真に守られると、心から思うのだ。
さて、今回のワインメモは、妙なところで保守的な私が普段は論評の対象外としている「サンジョヴェーゼ + ボルドー品種」系のワイン。
キアンティ・クラシコの重要なUGA(サブゾーン)の一つであるPanzanoで、最も古いワイナリーの一つとなるのが、Ca’ di Pesa。
現在は若き11代目がワイン造りに参画している。
IGT ToscanaとしてリリースされるこのSerafinoは、11代目の祖父が植えた樹齢60年越えの単一畑から。
この畑に植えられているのは、サンジョヴェーゼとカベルネ・フラン。
60年以上前にカベルネ・フランというのもなかなか珍しい選択肢だ。
サンジョヴェーゼはコンクリートタンクで、カベルネ・フランは樽で熟成し、50/50でブレンド。
ボルドー品種の若樹がもつパワフル極まりない味わいに支配された、凡百のワインとは明らかに一線を画す品質だ。
華やかで多層的なアロマ、丸いテクスチャー、滑らかなタンニン、豊かな酸が、いかにもPanzanoらしい優れた調和を見せる。
サンジョヴェーゼ比率を増やしてキャンティ・クラシコとするのではなく、祖父へのリスペクトに溢れたワインとしてリリースしている点にも、好感しか湧かない。