1月18日3 分

Wine Memo <18>

Bodegas Fulcro, Albariño “A Cesteira” 2021.

 

昨年12月のVinho Verdeツアーには、日本から2名、イギリスから2名、そしてカナダから8名が招待されていた。

 

主にソムリエを中心に集められたメンバーだったため、いつもの海外訪問よりは年齢層が低い(海外でも、若いジャーナリストはユニコーンだ。)とは予想してはいたが、カナダから来ていた一人の若者には大いに驚かされた。

 

職業はモデル、と言われても全く疑わない程の美貌に恵まれた彼女は、なんと21歳。

 

ソムリエとしても現場に立っているそうだが、彼女はInstagramでフォロワー約29万人を抱える、いわゆる「インフルエンサー」という仕事もしている。

 

彼女のことを良く知る前は、「なんだ、そういう枠か」と思った(個人的に、ブロガーや自称インフルエンサーなる人々とは、あまり良い思い出がない。)ことを正直に告白するが、ツアーの最中、誰よりも熱心に質問(しかも非常に鋭い!)を繰り返し、テイスティングの際は高い集中力で真剣にワインと向き合い、その知識量は年齢詐称を疑いたくなるほど凄まじく、恐怖を覚えるほど聡明で、良い意味で思いっきりエキセントリックな彼女は、あっという間に旅の中心にいた。

 

カナダから来ていた2名のMaster of Wineも彼女を大変気にかけていて、ノンストップで乱れ飛んでくる質問の嵐に、丁寧に答え続けていたのは印象深い。

 

彼女があの場にいたのは、インフルエンサーだからではなく、純粋にその実力と情熱によるものだと理解するのに、全く時間はかからなかった。

 

同時に、実力主義とは全く言い切れない日本の現状を思うと、悲しいような、悔しいような、置き所の無い感情が湧き上がってもきた。

 

ツアーの最終日の夜、ポルトに残ったメンバー全員で、評判のワインバーを訪れた。

 

目移りの止まらないコレクションだったため、全員で協議していると、いつまで経ってもワインが決まらないと判断。

 

各々が飲みたい(みんなに飲んでほしい)ワインを購入し、皆とシェアする、という形を取ることになった。

素晴らしいワインのオンパレードで、実に楽しく充実した時間が過ぎていく中、最も印象に残ったものの一つが、このアルバリーニョだった。

 

選んだのは、先ほど紹介した若き天才だ。

 

「Monção e Melgaço(Vinho Verdeのサブリージョンで、非常に高品質なアルヴァリーニョで知られる)でたくさんテイスティングしてきたから、Rias Baixas(スペイン・ガリシア地方にあるアルバリーニョの名産地)との違いを確認したかった。

 

という理由で選んだそうだ。

 

疲れ果てた最終日の夜というタイミングで、まだ探究心が燃え盛っていることに心から感心したが、ワインも実に素晴らしかった。

 

肉付きの良いVinho Verdeとは対極的な、シャープでソルティーなRias Baixasの個性が、非常に洗練された表現でまとめられていた。

 

未知のワイナリーであったため調べてみたが、所有面積わずか1.1haという葡萄畑はRias Baixas最古にして最上の小地区Salnesにある。

 

検索した限りでは、日本にはまだ輸入されていないようだ。