2023年12月9日2 分

Wine Memo <17>

Quinta do Soito, Dão Espumante 2019.

 

私は世界中のありとあらゆるスパークリング・ワインの中で、シャンパーニュが最も好きだ。総合力で見れば、最も優れている、とも思っている。

 

散々権威主義的ワイン道に否定的な立場を取りながら、結局シャンパーニュか、と後ろ指を指されても仕方ないかもしれないが、「良いものは良い」と、どこまでもフラットであり続けることこそが、私なりのバランス感覚である。

 

しかし、高価なシャンパーニュを日常的に飲むことはできないので、シャンパーニュ・オルタナティヴは常に探している。

 

優れたものに出会えば、心踊る気分にもなる。

 

特に最近強い興味をもっているのは、シャンパーニュ品種ではなく、地葡萄を使用したタイプのもの。

 

つまり、ニューワールド諸国ではなく、ヨーロッパ産のスパークリングワインと言うことだ。

 

ポルトガル訪問時にも、様々なスパークリングワインに出会うことができ、中には素晴らしいと心から感じたものもあった。

 

今回訪問したダオンのスパークリングワイン(ダオン・エスプマンテ)は、赤や白に比べると格段に生産量が落ちるため、主流とはいえないスタイルではあるものの、そのポテンシャルはかなり高い

 

ダオン・エスプマンテの主要品種は白葡萄がエンクルサード黒葡萄がトゥリガ・ナシオナルとなる。

 

現地では、エンクルサード単一のブラン・ド・ブラン、トゥリガ・ナシオナル単一のブラン・ド・ノワール、両者のアッサンブラージュ、という3種類をテイスティングすることができた。

 

ブラン・ド・ブランに関しては、正直なところ、高評価をするのは難しい品質だ。

 

エンクルサードのフラットな特性が、スパークリングというフォーマットではさらに強調されてしまい、抑揚とストラクチャーのない、シンプルな(ミネラリーではあるが)な味わいとなる傾向を感じた。

 

一方のブラン・ド・ノワールは、屈強なストラクチャーと緻密なミネラリティ、他にはない個性が光る逸品に。ただし、少々のフレッシュネス不足が見受けられる。

 

そこで、やはりシャンパーニュ方式のお家芸である「アッサンブラージュ」が活きる。

今回のWine Memoの主役となるQuinta do SoitoDão Espumante 2019は、トゥリガ・ナシオナルのブラン・ド・ノワールを主体に、僅かにエンクルサードをアッサンブラージュした一本。

 

トゥリガ・ナシオナルがもたらす奥行きのあるストラクチャー、力強い果実味を中心に、エンクルサードがフレッシュ感と酸をブーストさせる、という構成だ。

 

その酒質は、見事のひと言に尽きる。

 

シャンパーニュ・オルタナティヴとして、十分な実力を誇る素晴らしいスパークリングだ。