1月8日3 分

2024年トレンド予想と課題

2023年の国内ワイン市場を襲った価格高騰は、2024年には更なる構造改革を市場に迫ってくる可能性が高い。

 

超高級ワイン(仮に、一本2万円以上としておく)の中でも、有名産地や有名銘柄に関しては、これまでとほぼ変わらず、高騰による売れ行きへの影響はミニマムに収まると考えられるが、それ以下の価格帯に関しては、難しくなるケースもさらに増えるだろう。

 

特に、一本1万円前後(仮に、高級ワイン)と、一本4千円前後(仮に、準高級ワイン)の価格帯で人気を得ていたワインは、2023年に起こった「前ヴィンテージ比1.2~1.5倍」という高騰によって、ターゲットとなる購買層が変化してしまった。

 

 

前者(高級ワイン)には、主に「ヨーロッパ伝統国の銘醸ワインとの比較」という文脈の中で、その地位を固めてきた産地が多い。

 

アメリカ・カリフォルニア州はその典型例だが、長年に渡って築き上げてきたブランドイメージもあるため、ダメージは多少なりとも緩和されているだろう。

 

一方で、同じ米国内でもオレゴンやワシントン州、他国なら南アフリカ、オーストラリア、NZなどの高級ワインは、一部の人気銘柄を除いて、根本的な販売戦略の見直しを迫られる可能性は十分にある。

 

「ブルゴーニュやボルドーに比べて」という、コストパフォーマンス面で発揮されていたアドヴァンテージの効果が、そのワイン自体の価格が上がることによって薄れてしまうのは当然のことだ。

 

2024年は、それらのワインを「比較」から一刻も早く脱却させ、そのオリジナリティの価値そのものを上げていくべきなのでは無いだろうか。

 

要するに、「南アフリカのピノ・ノワールはブルゴーニュに比べるとコストパフォーマンスが高い。」といった類の捉え方から、「エルギンのピノ・ノワールには、○○のような個性があり、それは世界でも類を見ないものだ。」という価値判断へと切り替えるべき、ということだ。

 

個性には価値が宿る。

 

多様性社会のアドヴァンテージを、今こそ最大限に活かすべきではなかろうか。

 

 

後者(準高級ワイン)の価格帯を日本国内で主戦場としてきた国々は、ヨーロッパではイタリア、スペイン、ドイツ、オーストリアなどが該当し、ニューワールドでは南アフリカ、オーストラリア、NZ、アメリカ・NY州などが該当する。

 

冷静に見ると、これらの国々のワインは、むしろ「適正価格」に近づいた、という見解が正しく思えるが、3,800円で売られていたワインが、突然5,200円に値上がりした、というインパクトは、決して小さくない。

 

このラインは、ワインショップにおいても十分に意味合いの大きなものであるが、飲食店においては、販売価格が1万円を切るか切らないかという、より大きな影響を及ぼす。

 

高級ワインと同様に、オリジナリティに基づいた価値の見直しは、より重要度を増していくだろう。

 

さらに、国を問わず、多くがこの価格帯で戦ってきたナチュラル・ワインにとっても、値上がりは深刻である。

 

クラシックな味筋を好む愛好家層にも十分アピールできるようなクリーン・ナチュラルは、増加の一途を辿っているが、市場の理解がまだそれに追いついていない

 

ナチュラル・ワイン人気を広く支え続けてきた中流階級のファン層が、どこまで価格高騰に耐えられるかは、なんとも予測し難い部分だ。

 

 

一方で、価格高騰によって「戦うステージ」が変わった恩恵を受ける産地もある。

 

ヨーロッパでは主にポルトガルとギリシャ、ニューワールドではチリ、アルゼンチン、そして日本も該当するだろう。

 

ポルトガル、ギリシャ、チリ、アルゼンチンなどは、その「安さ」がネックとなり、本来の実力よりも下の階級で戦わざるを得なかったが、いよいよ真っ当な評価を受けるチャンスが訪れたと考えられる。

 

日本に関しては、他が高騰したことによって、価格がほぼ据え置きの日本ワインは、相対的に「リーズナブル」なものと感じられるようになるだろう。

 

 

2024年、国内ワイン市場にどのような変化が訪れ、どの産地が新たなスタートなるのか、興味深く見守っていこうと思う。