SommeTimes’ Académie <39>（ワイン概論35：ポート2）

一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのがSommeTimes’ Académieシリーズ。初心者から中級者までを対象としています。今回は、ポートについてさらに深く学んでいきます。

醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。
 
 

試験後に忘れてしまった知識に意味はありません。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「記号」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「何を意味するのか」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。SommeTimes Académieでは、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「リアル」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。

今回からは、ポートワインのスタイルを確認していきます。

ポートは画一的なキャラクターだと感じている方もいると思いますが、実は非常に多様なワインです。スタイルを理解することで、飲み方や提供の仕方についても理解できるのではないでしょうか。

ポート全てに当てはまることですが、糖度とアルコールが高いため、提供温度が高すぎると強く感じられすぎてしまうことがあります。冷やし目での提供が好ましいですが、ルビーやトゥニーなどは冷蔵庫の温度では低すぎます。抜栓したあとの管理も、セラーで行いたいものです。

・分類

まずは、ルビー、トゥニー、ロゼ、ホワイトの大きく4つに分けることができます。

スティルワインと同様に、黒ぶどうから造られるのがルビーとトゥニー、白ぶどうから造られるのがホワイトです。ルビーとトゥニーのスタイルの違いは主に熟成の方法から生まれます。ロゼは一般的に短時間のマセレーションを行い造られます。

- ルビー

黒ぶどうから造られるポートのうち、酸化を避ける熟成を行うのがルビーです。そのため時に数万リットルの容量まで入るほどの大型の樽で熟成を行い、酸化を避けます。ルビーでは樽での熟成は10年を超えることはありません。色は若い赤ワインのような濃いガーネット色をしており、生やコンポート、ジャムのようなフルーツのフレーヴァーとスパイスのニュアンスがあります。特に低価格なものについてはスピリッツの香りも。一般的にポートで最も力強く、ブルーチーズやダークチョコレートなどとの相性が有名です。

- トゥニー

ルビーとは対照的に、酸化的に長期間の熟成を行うのがトゥニーです。長いものでは数十年、あるいはそれ以上の樽熟成を行うこともあり、使用される樽は大きなものよりも酸化しやすい、ピパシュと呼ばれる600L程度の比較的小さいものになります。熟成の長さによっても変わりますが、一般的に色調は褐色を呈しドライフルーツやナッツのようなフレーヴァーが特徴。特に熟成が長いものは滑らかでアルコールの強さを感じません。ナッツやアイスクリーム、焼き菓子と合わせるのが特におすすめです。

- ロゼ

21世紀に入ってから生まれた新しいカテゴリー。イチゴやチェリーを思わせるフレッシュなフレーヴァーがあり、クラッシュアイスを入れて飲んだり、カクテルの材料としても楽しめます。熟成も非常に短く、ほぼ全てがカジュアルな価格帯。

- ホワイト

白ぶどうから造られるポート。多くは低価格で、大別して二つのスタイルがあります。

一つは比較的糖度が低く、還元的。フレッシュですっきりしたもの。

もう一つは糖度が高めで、やや酸化的。よりリッチな味わいのあるもの。生産者によっては両方のスタイルのホワイトを造っていることもあります。

特に前者のスタイルのものは、トニックウォーターで割り、クラッシュアイスを入れてライムを絞る「ポルトニック」という簡単なカクテルが現地でもよく知られています。ストレートに氷とライムやレモン、オレンジなどの柑橘類のカットとミントなどのハーブを入れるだけでも簡単なカクテルとして楽しめます。気軽に楽しめるのがホワイトの魅力ですね。

またトゥニーと同様、長い樽熟成を経たホワイトも、特に近年注目を浴びるようになりました。

・スペシャル・カテゴリー

上記のベーシックな4分類の中に、以下のようなスペシャル・カテゴリーと呼ばれる特に品質の高いワインの分類があります。

- ルビー

ルビー・リザーヴ

レイト・ボトルド・ヴィンテージ（LBV）

クラステッド・ポート

シングル・キンタ・ヴィンテージ

ヴィンテージ

- トゥニー、及びホワイト

トゥニー・リザーヴ（ホワイト・リザーヴ）

熟成年数表示トゥニー（ホワイト）（10年、20年、30年、40年、50年）

コリェイタ

以上のようにポートは様々なカテゴリーがあり、味わいも使い方もまちまちです。

次回は特に重要なスペシャル・カテゴリーについて、より深めていきたいと思います。