2022年5月28日5 分

SommeTimes’ Académie <27>(ワイン概論23:オレンジワイン醸造 1)

一歩進んだ基礎の学び、をテーマとするのがSommeTimes’ Académieシリーズ。初心者から中級者までを対象としています。今回は、一般的なロゼワインの醸造フローを学んでいきます。

なお、日本のワイン教育においては、醸造用語としてフランス語を用いるのが今日でも一般的ですが、SommeTimes’ Academieでは、すでに世界の共通語としてフランス語からの置き換えが進んでいる英語にて表記し、英語が一般的で無いものに限り、フランス語で表記します。また、醸造の様々な工程に関しては、醸造家ごとに異なる意見が散見されます。本シリーズに関しては、あくまでも「一般論の範疇」とご理解ください。


 

試験後に忘れてしまった知識に意味はありません。ワインの勉強は、難しい外国語由来の単語との戦いでもあります。そういった単語をただの「記号」として覚えることにも、意味はありません。その単語が「何を意味するのか」を知ってこそ、本来のあるべき学びとなります。SommeTimes Académieでは、ワインプロフェッショナル、ワイン愛好家として「リアル」に必要な情報をしっかりと補足しながら進めていきます。試験に受かることだけが目的ではない方、試験合格後の自己研鑽を望む方に向けた内容となります。SommeTimes’ Viewをしっかりと読み込みながら進めてください


 

 

前提

現状、オレンジワインというカテゴリーは正式には認められていません。小さな原産地呼称制度単位では、明確化される例も出てきていますが、赤ワイン、白ワインのような、大元のカテゴリーとしては成立していないため、実際には白ワインの一種として扱われています

製法

白ワインとオレンジワインを隔てる境界線は曖昧なままです。しかし、あくまでも一般論としてですが、オレンジワインの領域に踏み込むラインは確かに存在します。議論の余地は十分にありますが、重要なポイントを以下にまとめておきます。

1. 葡萄品種

白葡萄、及びグリ系葡萄(ピノ・グリなど)を使用している。

2. 果皮浸漬

破砕後に、果汁と果皮(種子や梗が含まれることも)が、発酵が始まる温度帯で、3日以上接触している。

SommeTimes’ View

グリ系葡萄を用いたオレンジワインは、かつてはロゼワインの一種とカテゴライズされていましたが、現在ではオレンジワインに含めるのが一般的と言えます。

特殊な例として、混醸がありますが、こちらに関しても、葡萄品種に関する基本ルールを適用すれば問題ありません。つまり、白葡萄と黒葡萄を混醸した場合は、どれだけ白葡萄の比率が高くても、オレンジワインとはならず、白葡萄とグリ系葡萄を混醸した場合は、オレンジワインになり得ます。

その他の例では、ブレンドがあります。例えば、普通に白ワインとして造ったシャルドネと、オレンジワインとして造ったシャルドネを、50%ずつ混ぜるという方法です。このタイプのワインをどちらにカテゴライズするかは微妙な部分ですが、ワインの特性上はオレンジワインとしての要素の方が強く出てくることが多くなりますので、オレンジワインとしてしまっても良いでしょう。

果皮浸漬に関しては、温度帯が特に重要となります。発酵が始まらない低温で浸漬した場合、白ワインやロゼワインの技法として存在する「低温浸漬」との区別がなくなってしまうからです。

浸漬期間を三日以上とましたが、この部分は議論の余地が大いに残されています。浸漬が二日間でも、オレンジワインと呼んで差し支えない特性を備えるケースもありますし、逆に1ヶ月でもその特徴が見えにくいケースもあります。

この辺りは、浸漬時の温度帯(高いほど抽出が早い)や、葡萄品種(果皮の性質によって、同じ期間でも抽出の度合いが異なる)などと複雑に絡んできますので、浸漬期間が長いから濃いオレンジワインになるとは限らないという、難しさや分かりにくさも同時に生じます。

三日以上というのは、あくまでも一般論として捉え、例外に遭遇した場合は、柔軟に判断していきましょう。

製法には含まれないもの

オレンジワインをカテゴライズする時の指標となる「製法」には含まれない、つまり本質的にオレンジワインとは無関係な要素についても触れていきます。

1. 低亜硫酸など、ナチュラルなワインメイキング

慣行的な造りのオレンジワインも多々存在します。

2. アンフォラ等の土器の使用

大樽などを使用したオレンジワインも多々存在します。

3. 酸化的特徴

酸化的特徴がほとんど見られないオレンジワインも少なからず存在します。

SommeTimes’ View

これらの要素を、オレンジワインの製法と混同してしまうのはご法度です。オレンジワインは、赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、スパークリングワインと同様の、「製法によるカテゴリー」の一種として将来的にしっかりと分類、規定されるべきワインですので、カテゴライズするための要素は、他のカテゴリーと同様に、極限までシンプルに絞るべきです。

オレンジワインの造り手に、ナチュラル派が多いのは事実ですが、それは彼らの多くが過去回帰的な思想や、より自由な発想によるワインメイキングを求めており、その哲学がオレンジワインと一致する部分が多いというだけのことです。

アンフォラについても同様です。分かりやすいイメージに引っ張られるかも知れませんが、根本の製法とは無関係の部分になりますので、注意してください。

酸化的特徴は、発酵開始以降の温度(高いほど酸化的特徴が強まる)と、補酒の頻度(低いほど酸化的特徴が強まる)に加え、葡萄品種の特徴発酵、熟成時の容器の特性などが複雑に影響しあった結果として生じます。つまり、酸化的特徴が強いオレンジワインもあれば、極めて低いオレンジワインもあるということです。

次回、オレンジワイン製法2では、多様化するオレンジワインのスタイルについて、学んでいきます。