2023年1月14日2 分
ナチュラルワインは熟成するのか。
実に興味深いテーマだ。
答えを先に言うと、「ワイン次第」とはなってしまうのだが、これは慣行的に造られたクラシックなワインでも同じなので、ナチュラルワインだからどうと言う話でもない。
だが、極一部のナチュラルワインが、完全に常軌を逸したレベルの長期熟成能力をもつに至ることがあるのは、紛れもない事実である。
「常軌を逸した」とは、明らかに一般的な範疇から大いにはみ出していると言うことである。
大袈裟ではない。私は、何度も何度も体験してきたのだから。
偉大なブルゴーニュ、ボルドー、バローロ、リオハがもつ超長期熟成能力が比較にすらならないほどの、この世のものとは思えないような神秘に、私は確かに巡り合ってきた。
どれだけ優れたクラシックワインであっても、ヴィンテージから10年も経過すれば、それなりに熟成感が出てくる。ヴィンテージによっては、枯れ始めていることも珍しくはない。
古典的なバローロのように、数多のクラシックワインの中でも、例外的に超長命なワインはあるが、それでも限界はある。
しかし、「理の外側」にある特殊なナチュラルワインは、ヴィンテージから20年経っても30年経っても、あり得ないほど若々しい姿を保っていることがある。
理由は完全には定かでは無いが、発酵時に多数の微生物が陣取り合戦を行なった結果、極稀に、堅牢極まりない耐性を得てしまうことがある、というのがナチュラルワイン界の都市伝説的仮説だ。
そして、今回出会ったワインも、そのような例の一つである。
ロワール渓谷の名手として知られるジュリアン・クルトワが手がけるアンセストラルは、コー(マルベック)、ガメイ、ガスコンの3種をブレンドして造られるワイン。
個人的には、クルトワの最高傑作として愛飲してきたワインでもある。
幸運なことに、そのアンセストラルの2002年ヴィンテージに出会うことができたのだが、ワインを口に含んだ瞬間、私は時が止まったかのような錯覚に襲われた。
ヴィンテージから21年という時が経過しているにも関わらず、そこには存在しないはずのフレッシュで快活な果実味と酸が押し寄せてきたのだ。熟成感は、余韻にかすかに感じられる程度。
亜硫酸はおそらく完全無添加。そして、2002年当時のジュリアン・クルトワは、僅か24歳である。
まさに、理解の範疇を超えた異質で偉大なワインだった。
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「再会」と「出会い」のシリーズは、SommeTimesメインライターである梁世柱が、日々のワイン生活の中で、再会し、出会ったワインについて、初心者でも分かりやすい内容で解説する、ショートレビューのシリーズとなります。