2021年11月14日3 分

出会い <2> ピエモンテのライジングスター

Nicholas Altare, Langhe Nebbiolo 2019. ¥4,900

イタリアのピエモンテ州といえば、なんといってもネッビーロという黒葡萄から造られる、バローロバルバレスコが有名です。イタリアに数多くある最高の赤ワインの中でも、頭ひとつ抜けた存在といえるワインですが、2つほど難点があります。

1. 安くはない

2. 飲み頃の判断が難しい

偉大な産地のネッビオーロを、古典的なタッチで造るとどうしても超長期熟成型になりますし、多少最近風のタッチが加わったとしても、まだまだ若い間は固さが残りがちです。ワインショップでパッと買ってきて気軽に飲むには、残念ながら、なかなか難しいワインなのです。

ならば、ちょっと広い範囲で見れば近所のエリア(ランゲ地区)にある畑で栽培されたネッビオーロから造られた「ランゲ・ネッビオーロ」というワインはどうでしょうか?

これがまた一筋縄ではいかないワインでして、価格はバローロやバルバレスコに比べれば、ある程度抑えられてはいますが、品質的には玉石混合。

どうも、ネッビオーロには難しさが付きまといます。フランスのブルゴーニュと一緒ですね。

私自身、心から美味いと思うランゲ・ネッビーロには、そう多く出会ってきませんでしたが、今回驚きの出会いがありました。

造り手の名はニコラス(ニコラ)・アルターレ。

華やかなバラとレッドチェリーやラズベリーの香り。弾けるような軽快な酸が非常に心地良く、果実味もフルオープン。タンニンにも、若いネッビオーロによくある厳しさがありません。まさに究極的な早飲み型のネッビオーロ。

初めてテイスティングした時は、グラスから彼の天才的なセンスが溢れ出すようなワインに、しばらく言葉を失ってしまいました。

全く未知の造り手だったので、少し調べて見たところ、ニコラスはなんと1990年生まれの若者でした。

しかも、若干15歳で家業の葡萄栽培を引き継いだそうで。

大手への葡萄販売から、自らワイン造りの道へと切り替えるために叩いた門戸は、ピエモンテ州きっての、ナチュラル派の銘醸であり、パイオニアのフェルディナンド・プリンチピアーノ

はい、ここまで調べて、思いっきり納得しました。

私が過去に出会ってきた数少ない「美味しいランゲ・ネッビオーロ」の一つ、というか筆頭格こそ、フェルディナンド・プリンチピアーノの手によるものだったのです。

ニコラスは畑での農薬使用を完全に止め(そもそも、彼のお父さんが若くして病に倒れたのも、農薬が原因だったそうで)、醸造時には、瓶詰め前にだけ必要最小限の亜硫酸(酸化防止剤)添加を行うのみ。

それでいて、ネガティブな要素は皆無

これは本当に、天才かも知れません。

ピエモンテ州で「アルターレ」といえば、高名なエリオ・アルターレが真っ先に名が挙がりますが、あと10年したら、ピエモンテのアルターレといえばニコラス、となるかも知れませんね。

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「再会」と「出会い」のシリーズは、SommeTimesメインライターである梁世柱が、日々のワイン生活の中で、再会し、出会ったワインについて、初心者でも分かりやすい内容で解説する、ショートレビューのシリーズとなります。