3月24日3 分

再会 <57> (私的)普遍のNo.1ボルドー

Chateau Lafleur 2013. ¥145,000

 

どの国のどの銘柄かは伏せるが、最近テイスティングする機会に恵まれた国内販売価格30万円超のワインが、どうにもこうにも響いてこなかった。

 

ワインファン垂涎の超有名ワインであり、当然私もそれなりの期待をもってテイスティングに臨んだが、期待外れも良いとこだった。

 

いや、実際には間違いなく高品質なワインではあったのだが、同程度の品質のワインは、1/30以下の価格でも、国や産地に拘らなければ簡単に見つけることができる

 

「それだけの超高価格なのに、その程度の味わいなのか。」という落胆があまりにも大きく、すっかり気持ちが萎えてしまった。

 

ワインの価格とは、と考えさせられる機会に数えきれないほど触れてきた結果、私はいわゆる「ブランドもの」に対する興味を、ほとんど失ってしまっている。

 

仕事上で必要なテイスティングは継続的に行なっているし、もちろん、そういったワインの中に素晴らしいものが多々あることは、数多の経験も含めて十分に理解しているが、私のような庶民派にとっては、外すリスクと得るリターンのバランスが劣悪過ぎるのだ。

 

高いから、有名だから無条件良い、では無く、素直に心から素晴らしいと思ったワインが、たまたま高価で有名だった、という方がよっぽど真実味があると思う。

 

しかし、そんな私にも、機会(と経済力)があれば何度でも繰り返し飲みたいと心から思える超高級ワインが存在する。

 

今回の再会ワインとなる、ボルドー右岸ポムロール地区のシャトー・ラフルールはそういったワインの一つだ。

 

先日公開したポムロールの独自格付けでも、シャトー・ペトリュスと並んで第一級相当と評したシャトー・ラフルールは、私にとってあらゆるボルドーの中で、普遍のNo.1である。

 

ペトリュスのすぐそばに位置する僅か4haのラフルールは、ボルドーで最も高貴な輝きを放つ至高の宝石だ。

 

メルローが主体となるポムロールにあって、ほぼ同比率のカベルネ・フランをブレンドするラフルールは、このブレンドスタイルのワインとしては世界最高の評価を受けるサン=テミリオンのシュヴァル・ブランとオーゾンヌを、往々にして凌駕していると私は感じてきた。

 

まぁ正直、このクラスの品質領域になると、微妙な品質差などあってないようなもので、ほぼ純粋な好みの差なのだが、私はとにかくラフルールの優美極まりない味わいが、好きで好きでたまらないのだ。

 

そもそも畑が狭い上に、ヴィンテージによっては生産量の約4割がセカンド・ラベルのレ・パンセ・ド・ラフルール(*)としてリリースされるため、ファーストラベルのシャトー・ラフルールを探し出すのは容易ではない。

 

(*)余談だが、このセカンドラベルはメドック地区でいうところの第二級相当の品質となり、ボルドーのあらゆるセカンドラベルの中で、最も優れたワインである。また、レ・パンセ用の区画が明確に決められている。

久々に再会することができたラフルールは2013年ヴィンテージ。

 

比較的難しいヴィンテージではあるが、ワインには高貴なテロワールが満ち溢れ、流麗に千変万化する華美な味わいは、どこまでもラフルールらしいものだった。

 

後で調べて分かったことだが、2013年のラフルールは、ワインに対して(盲目的とすら言えるほどに)高い熟度と濃縮感、複雑性を求める海外の評論家によって、このシャトーとしては珍しく低評価されている。

 

私にはこのワインに与えられた93点という某媒体の評点が全く理解できないが、ある意味その評点のおかげで、グレートヴィンテージになると30万円を超えるラフルールが、ラフィット=ロートシルトと同程度の価格に収まってくれていると考えれば、むしろ感謝すべきなのだと思う。