2月11日3 分

再会 <54> 熟成ナチュラルVinho Verde

Aphros, Ten 2012.

 

Vinho Verdeは高い長期熟成能力を有する。

 

その事実は、先日レポートしたSoalheiroにおける大垂直テイスティングでも、Vinho Verde特集記事後編で紹介した、Sem Igualにおける垂直テイスティングでも確認することができたが、果たしてナチュラル志向なワインの場合はどうだろうか?

 

ナチュラルワインの長期熟成能力は、適切な(時に過剰な)亜硫酸添加によって守られたクラシックなワインよりも、ランダム性が強いことは間違いない。

 

低アルコール濃度で、高酸度のワインを造ることを目的とした不用意な早摘み発酵・熟成時の不適切な管理、自然の力に対する精緻な観測を無視し、盲目的に信じ込んでいるかのような亜硫酸無添加など、「そもそも長期熟成に向いたテロワールと葡萄品種の組み合わせではない」こと以外にも、ナチュラルワインが長期熟成能力を著しく失する要素はある。

 

一方で、完全な調和に至ったナチュラル・ワインは、一般的なクラシック・ワインを遥かに凌駕する、圧巻の超長期熟成能力を得るのもまた事実だ。

 

もちろん、ヴィンテージのコンディションによって、多少のブレは出てくるが、それは世界中のどこの銘醸地であっても同じだ。

 

さて、今回の再会は、私がかねてから愛飲してきたナチュラル派Vinho VerdeのAphrosが主役。

 

17世紀から続く荘園(Sub-RegionのLimaにある)を2004年に引き継いだ、建築家のヴァシュコ・クロフトが率いるAphrosは、多雨多湿Vinho Verdeでは極めて難しい(リスクが高い)はずのビオディナミ農法を長く実践してきたパイオニアである。

 

当たり前のように酒質が矯正され、大量の亜硫酸が添加されるVinho Verdeで、極限の低介入を貫いてきた稀有な造り手でもある。

 

現地試飲したLoureiro単一のキュヴェであるTen 2012年は、ワイナリー蔵出しとあって、抜群のコンディションにあった。

 

良く熟した高濃度の柑橘系アロマ、躍動感溢れる酸、エネルギッシュな果実味、野太い旨味のグリップ、奥深く多層的でエキゾチックな風味。

 

ヴィンテージから12年近く経過したワインだが、いわゆる「熟成感」と呼べるような酸化的ニュアンスは皆無であり、アロマから余韻までの全てが、最高潮に「生き生き」としていた。

 

もちろん、ビオディナミ農法はこの結果に関連していると考えられるし、Aphrosの思慮深い醸造も同様だが、この葡萄畑はLoureiroがそのポテンシャルを余すことなく発揮できるLimaにある、という点も決して忘れるべきではないだろう。

 

Aphrosとの再会を通じて、かつてフランス・ロワール渓谷の賢人マルク・アンジェリが私に語って聞かせた言葉を思い出した。

 

「良いナチュラル・ワインを造るためには条件がある。優れたテロワール、正しい葡萄品種、献身的かつ自然に寄り添った栽培、恵まれたヴィンテージ、適切な収穫、そして注意深い醸造だ。」

 

そのワインが他と比べて明らかに優れていると感じる場合、必ずそのワインの向こう側には、そうなった「理由」があるものだ。

 

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「再会」と「出会い」のシリーズは、SommeTimesメインライターである梁世柱が、日々のワイン生活の中で、再会し、出会ったワインについて、初心者でも分かりやすい内容で解説する、ショートレビューのシリーズとなります。