2月24日3 分

聖地のオレンジワインとローカルフードのペアリング

1990年代半ばに、北イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州とスロヴェニアの国境地帯で始まったオレンジワインの再興から約30年。

 

現代では、オレンジワインという文化がそもそもあったかどうか疑わしい地域も含め、世界中のあらゆる場所で造られるようになり、赤、白、ロゼと並ぶ一つのカテゴリーとして完全に確立したと言える。

 

そして、オレンジワインを使ったワインペアリングもまた、非常に奥深く、面白い。

 

今回はせっかくオレンジワインの「聖地」であるゴリツィア周辺まで来たので、地元の伝統的な料理と、オレンジワインの組み合わせを試してみることにした。

 

チーズ、アンティパスタ、パスタ、肉料理など、いくつか試してみたのだが、鮮烈に印象に残った組み合わせが一つあった。(猪肉のパスタとのペアリングもかなり良かったが。)

写真の料理は、スモークしたポレンタ(トウモロコシ粉を練って煮た料理)と、この地方特有だというキャベツの一種であるヴェルツァを合わせたもの。

 

細かいシワが圧縮されたようなヴェルツァの見た目はなかなかのもの(パッと見ただけだと、小さな脳に見える)だが、味わいは実に良い。

 

凝縮した甘味と、じわりとくる苦味のバランスが絶妙で、単体で食べても美味いが、ポレンタと一緒に食べるとさらに美味い。

 

そして、何よりも最高だったのが、オレンジワインとのペアリングだ。

合わせたのは、地品種のヴェルドゥッツォ。微かな甘味と高い酸、そして充実しつつもしなやかなタンニンが素晴らしい、実にクラシックなスタイルのワインだった。

 

オレンジワインのペアリングにおける利点はいくつもあるが、その中でも最たるものと私が思うのは、料理の「苦味」に対する圧倒的な対応力だ。

 

料理に苦味とワインの渋味は互換関係にあり、それぞれの強さを揃えることで、素晴らしい調和が生まれる。さらに、オレンジワインであれば、一般的な赤ワインだと難しい「野菜系」の苦味に対しても、完璧な働きをしてくれることが多々ある。

 

今回のローカルペアリング検証は、まさにこの理論を証明していた。

 

ヴェルツアの心地よい苦味と、ヴェルドゥッツォの渋味が最高のハーモニーを奏でるだけでなく、ポレンタのスモーク風味やトウモロコシ由来の甘味も、グッともち上がる。

 

同席していたワインメーカーに聞いたのだが、この料理は典型的な「貧乏人の料理」だそうだ。

 

おそらく昔は、田舎の小さな農家が、この料理を素朴で粗野なオレンジワインと合わせて、1日の疲れを癒していたのだろう。

 

つくづく、ローカルペアリングの「必然」とは、奥が深いものだ。