2022年1月4日5 分

葡萄品種から探るペアリング術 <7> ヴィオニエ

葡萄品種から探るペアリング術シリーズは、特定の葡萄品種をテーマとして、その品種自体の特性、スタイル、様々なペアリング活用法や、NG例などを学んでいきます。

今回は、ヴィオニエをテーマと致します。

また、このシリーズに共通する重要事項として、葡萄品種から探った場合、理論的なバックアップが不完全となることが多くあります。カジュアルなペアリングの場合は十分な効果を発揮しますが、よりプロフェショナルな状況でこの手法を用いる場合は、ペアリング基礎理論も同時に参照しながら、正確なペアリングを組み上げてください。

ヴィオニエのスタイル

ヴィオニエは品種自体の個性が非常に強く出ます。晩熟で気難しい性質があり、この品種が輝けるエリアは限られていますが、テロワールの特徴もしっかり反映し、「テロワールxワインメイキング」の組み合わせで、様々なヴァリエーションが楽しめます。品種そのもののポテンシャルも非常に高く、その真価が最も発揮される場所では、三大白葡萄品種(シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング)を脅かすほどの品質に達します。

どのエリアでもピーチ、アプリコット、カリンのようなトロピカルフレーヴァーが特徴として出ますが、冷涼産地では柑橘のタッチが加わり、より温暖な産地ではトロピカル感がさらに強まる傾向にあります。シャルドネとゲヴュルツトラミネールの両方の性質をもつ、とも言えます。

醸造上のスタイルでは、新樽をどれだけ効かせるか、が大きなポイントになります。ヴィオニエは新樽風味と非常に相性が良いため、伝統的に新樽は積極的に使用されてきましたが、古樽やステンレスタンクのみというケースも少なくありません。

アルコール濃度は高めな傾向があり、新樽と合わさればヴォリューム感のあるスタイルに仕上がります。また、非常にアロマティックでフルーティーな性質があるため、ワインが若い段階の方が、その魅力を余すことなく発揮することができると言えるでしょう。長期熟成したヴィオニエにも独特な素晴らしさはありますが、一般的には「超速飲み」タイプの葡萄になります。

生産量は極小規模ですが、遅摘みにした葡萄からデザートワインも造られ、甘美の一言に尽きる程、極上の品質に達します。

ヴィオニエの産地

ヴィオニエの聖地は、なんと言ってもフランス・北ローヌ地方です。特にコンドリューは名高く、単一の原産地呼称を与えられたシャトー・グリエは、一般的なヴィオニエに対する理解から見れば「最もヴィオニエらしく無い」とすら言えるほど異質(フルーティーな味わいが大きく減じ、分厚いミネラルが支配的になる)なワインですが、興味深いワインなので、機会があれば一度は体験してみると良いでしょう。フランスでは、アルデッシュ地方やラングドックでもヴィオニエは人気です。ただし、分厚い新樽のトリートメントに葡萄のポテンシャルが耐え切れるのは、一部の例外を除いてコンドリューだけと考えた方が良いでしょう。

ニューワールドでは、アメリカのカリフォルニア州、ワシントン州、ヴァージニア州で、やや温暖な気候から素晴らしいワインが散見されます。オーストラリアのイーデン・ヴァレーやクレア・ヴァレーでは冷涼気候の好例が、ヴィクトリア州では中庸の味わいが、バロッサ・ヴァレーでは温暖気候の典型的なスタイルが楽しめます。近年は南アフリカからも素晴らしいワインが続々登場していますが、やや冷涼寄りとなるものが多いです。

新樽の強さは、産地というよりも生産者次第と考えた方が安全ですが、コンドリューのようにほぼ全てのワインにしっかりと新樽が効いている産地もあります。

ヴィオニエの風味

基本的には風味の一貫性が見られます。柑橘のタッチは冷涼気候で現出します。果実味ではピーチが最も顕著で、ヨーグルトの風味もヴィオニエならではの特性と言えます。

果実ピーチ、アプリコット、カリン、レモン、ライム、ミカン、イエロー・プラム

ハーブ:アニス

:アカシア

スパイス:シナモン、クローヴ

:ヴァニラ、アーモンド、トースト

その他:蜂蜜、ヨーグルト

ヴィオニエのペアリングポイント

ヴィオニエを使ったペアリングは、気候タイプと新樽によって、4つの細かいパターンに別れますが、全タイプに一貫した共通ポイントをまずは抑えておくと良いでしょう。中央〜東南アジアにかけての料理は、ヴィオニエとマッチするポイントが非常に多く、細かいパターンもあまり気にせずに良いので、おすすめです。

共通ポイント

・基本的には魚介よりも白身肉向けの品種

・繊細な味わいの料理よりも、濃醇な味わいの方が得意

・控えめな甘味に対して有効

・中程度のスパイス感に対して有効

・ほぼあらゆるチーズをカヴァーできる

・激辛で無い限り、あらゆる国のあらゆるスタイルのカレーに対応

パターン別

新樽を使ったワインでは、共通ポイントからはみ出した特殊な例が出てきます。

1. 冷涼・新樽無し

・フルーツと甘いスパイスの組み合わせ(マンゴー・チャツネなど!)

・ケバブ

ヨーグルトを使った料理

2. 温暖・新樽無し

フルーツソースを使った料理は、全般的に非常に得意

・シナモンやクローヴを使った料理

・甘く炊いた野菜(ニンジン、カボチャなど)

3. 冷涼・新樽有り

燻製した白身肉

貝類と甲殻類(帆立、蟹、ロブスターなどは特に秀逸)

甘い芋類(特にさつまいも)

4. 温暖・新樽有り

・生、もしくは限りなく生に近い牛肉

NG例

・繊細な味付けの料理

・酸味の強い料理

・葉野菜、オリーヴ、ケッパー

・激辛料理

・魚料理(大丈夫な時もありますが、避けた方が無難です。青魚は特にNG!)

まとめ

ヴィオニエは、ワインそのものが高品質であることも多く、ペアリングではスタンダード品種とは違った、ユニークで楽しいペアリングを実現することができます。特に、アジアンテイストに対しては最良のチョイスになることが多いので、ぜひ試してみてください。また、チーズに対する圧倒的な汎用性の高さも見逃せません。多種多様なチーズにワインを合わせる時は、ぜひヴィオニエを候補ワインに入れておいてください。