2021年10月17日6 分
最終更新: 2021年11月5日
ソーヴィニヨン・ブランをテーマとします。このシリーズに共通する重要事項として、葡萄品種から探った場合、理論的なバックアップが不完全となることが多くあります。カジュアルなペアリングの場合は十分な効果を発揮しますが、よりプロフェショナルな状況でこの手法を用いる場合は、ペアリング基礎理論も同時に参照しながら、正確なペアリングを組み上げてください。
テロワール、栽培、醸造に対して非常に敏感に反応する性質がありますが、ブラインド・テイスティングでも容易に判別できるほど、ソーヴィニヨン・ブラン特有の個性も強い品種です。世界各国で栽培されている人気の高い国際品種ですが、そのスタイルは意外とシンプルにまとめることができます。一つは単一品種で造り、樽の影響を効かせないロワール型、もう一つは他品種(最も一般的なブレンド相手はセミヨン)とブレンドし、新樽もしっかりと効かせるボルドー型(グラーヴ型とも)です。
ペアリングにおいては、ロワール型はソーヴィニヨン・ブラン特有のカヴァー範囲の広さと、特殊な対応力を発揮する一方で、ボルドー型は、また異なる範囲を広範囲にカヴァーします。
つまり、2つの主要なスタイルを合わせれば、単体の葡萄品種としては、あらゆる白葡萄の中でも最も広範囲に対応できる品種でもある、と言うことです。
ですが実際には、ソーヴィニヨン・ブラン(特にロワール型)は、その爽やかな香りと高い酸によって、食前酒(アペリティフ)的な扱いを受けることが非常に多い品種でもあります。ソーヴィニヨン・ブランの万能性を理解すれば、ペアリングでこれほど使いやすい品種は滅多にありません。ぜひ、マスターしてください!
よりミネラルの印象が強いフランス・ロワール産のスタイルと、トロピカルフルーツやハーブの風味が強いニュージーランド産のスタイルに大別することができますが、どちらのスタイルでも、野菜、ハーブ、海鮮を中心に圧巻の万能性を発揮します。
ある程度適当に合わせても、満足感のあるペアリングが実現できるのは、ソーヴィニヨン・ブランの大きなアドヴァンテージではありますが、果実、野菜、ハーブ系風味の特徴をしっかりと捉えると、格段に精度が上がります。
例を挙げると、グリーンサラダに何も考えずに合わせても普通に上手くいきますが、ディルやフェンネルが入ると格段にレベルアップする、といった感じです。
風味的な特徴は以下の通りです。
果実(ロワール):グレープフルーツ、レモン、ライム
果実(NZ):パッションフルーツ、グアヴァ、グースベリー
野菜、ハーブ(共通):グリーンピース、グリーンオリーヴ、セロリ、ケッパー、フェンネル、ディル、ミント、レモングラス
ミネラル:火打ち石、石灰
このスタイルのソーヴィニヨン・ブランが最も輝くのは、野菜類やハーブとのペアリングです。特に、ピーマン、ズッキーニ、きゅうり、ネギといった「青味」を伴う野菜との相性は抜群で、意外なところではナスやトマトとも好相性を発揮します。また、アスパラガスやアーティチョークといった難食材とも、(グリューナー=ベルトリーナーほどでは無いですが)卒なくペアリングさせることが可能です。ハーブは、フレッシュ感のあるハーブ(フェンネル、ディル、ミントなど)とは最高の相性を誇りますが、ソーヴィニヨン・ブランの特性を最大限に活かすのであれば、レモングラスとの相性は見過ごせません。東南アジア系のお料理と合わせる際には、真っ先にソーヴィニヨン・ブランを候補にあげても良いでしょう。一部、相性が悪い野菜がありますので、そちらは最後のNG例で記載しておきます。
野菜、ハーブ類以外では、あらゆる魚類、中型までの甲殻類、磯風味の強い貝類(牡蠣、サザエなど)と好相性です。また、薄いスライスや小さいカットの白身肉(鶏肉、豚肉、ハムなど)もロワール型のソーヴィニヨン・ブランが得意とする食材です。
チーズとの相性も幅広く、特にソフトなタイプのチーズは得意です。フェタ、リコッタ、ゴートチーズは、その中でも特筆に値する相性を誇ります。
単一品種よりも、ソーヴィニヨン・ブランを主体として、他品種とブレンドされることが多いボルドー型は、新樽もしっかりと効かせたものが主流です。ソーヴィニヨン・ブランらしい味わいを残しながらも、ヴォリューム感のあるテクスチャーと樽由来の風味が加わるため、ペアリングの対象も変化します。ブレンドタイプはボルドーに多く、単一品種のタイプの典型は、アメリカのナパ・ヴァレー産です。共に、樽の効いたシャルドネがカヴァーする範囲は、問題なくカヴァーします。
風味の特徴も見ていきましょう。
果実:りんご、青リンゴ、メロン、甘い柑橘(レモネード)、グリーンバナナ
野菜:グリーンオリーヴ、アスパラガス、獅子唐
ハーブ:レモンヴァーベナ、タイム、ローズマリー
樽:薫香、ヴァニラ、トースト
風味の中に、野菜やハーブの要素もありますが、ロワール型に比べると明確に控えめになります。ペアリングに用いるときは、それらの風味はあまり気にしなくても大丈夫です。
野菜に向いたロワール型に比べると、ボルドー型のソーヴィニヨン・ブランは、白身肉向けのワインとなります。鶏肉、豚肉、仔牛肉は、ほとんどの調理法でボルドー型ソーヴィニヨン・ブランと楽しむことができますが、ローズマリー等のハーブと一緒にローストすると、まさに完璧なペアリングとなります。
魚介類に対しても使いやすいワインですが、ボルドー型の場合、生の魚介類はNGです。必ず何かしらの方法で火の通った魚介類にしましょう。貝類の場合は、帆立のように甘味が強いものがおすすめです。
一つ、ボルドー型が無類の相性を発揮する海の食材があります。ロブスターを筆頭とする大型の甲殻類です。シンプルにグリルにしたり蒸したものでも美味しいですし、ビスクも最高です。特定の葡萄と食材の組み合わせの中でも、最も完成度の高いものの一つですので、機会があれば是非お試し下さい。
チーズに関しては、ロワール型よりも濃厚で熟成感の強いソフト系が良いでしょう。チーズをふんだんに使ったリゾットとの相性も抜群です。
・赤身肉全般
・甘味の強い料理や食材(砂糖を使用した料理、調理によって甘味が強く出る食材)
・一部の野菜(玉ねぎ、ニンニク、根野菜全般)
・そのまま飲む!(ほとんどのソーヴィニヨン・ブランは、食事と合わせた方が輝きます)
ソーヴィニヨン・ブランの利点は、シャルドネよりも広範囲に対応できること、入手が容易なこと、そして価格が全体的に安いことです。多数の食材や料理が一皿に乗っている(オードブル盛り合わせ、八寸など)場合は、ロゼ系と並ぶ抜群の対応力を見せてくれるでしょう。また、風味がはっきりとしているので、同じタイプの風味や、相乗効果を狙える風味の組み合わせ(きゅうりに対して、ディルの風味をもったロワール型を合わせる等)も狙いやすいです。食中酒としては、過小評価されている品種ですが、実は最強レベルの万能選手なので、ぜひお試し下さい!