2021年2月26日3 分

ペアリングの基本 <質感>

最終更新: 2022年3月15日

ペアリング理論の多くは、客観的かつ固定的な要素だけを論理的に組み合わせて用いていくことができるが、質感という要素はその中でも例外的な存在。質感をペアリング上で意識して使っていくためには、それなりの知識、経験と感性が必要となってくる。

その根幹は、料理や食材の質感を、ワインが含む要素と対応させていくことにある。

つまり、「シャキッとした食感」といった表現が、ワインのどの要素と連動しているのかを把握していくということになる。細分化しすぎると、無限とも言えるほどに選択肢が生じてしまうため、なるべく簡潔に理解していくために、大きなカテゴリーの特徴を把握していくのがベスト。なお、質感を要素として用いる技術は、一般的に難しいとされるスープ(液体)とのペアリングにおける最重要項目となり得る

下記の要素は、実際には複合的なものであるため、一つの要素だけを切り取って使用すると不完全になることも多いので注意が必要だ。以下は最も重要な3つの大カテゴリー

硬い⇄柔らかい

タンニン、酸、ミネラルと主に関連。全て、高いほど硬く、低いほど柔らかい。

シャープ⇄マイルド

酸、MLFの有無、発酵槽と熟成容器と主に関連。酸は高いほどシャープに、低いほどマイルドに、MLF無しだとシャープに、有りだとマイルドに寄っていく。発酵槽と熟成容器はシャープに偏るステンレスタンク、マイルドに偏る小樽(特に新樽)、その中間となるコンクリートや大樽等によって、最終的なスタイルが大きく左右される。

ライト⇄リッチ

アルコール濃度、新樽比率、残糖度と主に関連。全て、低いほどライトに、高いほどリッチになっていく。

さらに詳細な項目を考えていくことも可能であるが、この3要素だけでも、十分に実用に足る。

ハーモナイズ(調和)

料理の質感に合わせて、同様の質感の特徴をもったワインを合わせていく手法。難しく考えすぎないことが、最大のコツ。例えば、シャキッとした食感の新鮮なグリーンサラダを「シャープでライト」と捉えて、それに対応するワインを探し出す際には、以下の要素に着目するとわかりやすい。

1.酸が高い

2.ステンレスタンク発酵

3.MLF無し

4.アルコール濃度低い

5.新樽無し

6.辛口

アディション(追加)

料理に対して、その料理には無い質感をもったワインをあえて合わせることによって、質感の新たなレイヤーを作り出し、複雑なペアリングを実現する方法。理論的には十分可能だが、特にワインの質感を正確に把握することが求められ、実際に味わう際も、口内で料理とワインを合わせるタイミングが非常にシビアとなるため、難易度は極めて高い。質感によるアディションを行う際は、事前の詳細な意図の説明も欠かせない。また、料理そのものへの相当程度深い知識も要求される。