2020年12月11日3 分

ペアリングの基本 <渋味>

最終更新: 2022年3月15日

ワインの渋味(タンニン)をペアリングの要素として考慮していく際に、最も重要となるのは、ワインの渋味と料理の苦味は相似しているという点です。ワインは、主に醸造時における果皮と果汁の接触と、樽によってタンニンを得ます。基本的には、果皮と果汁の接触が長期間に渡るほどタンニン量は多く(葡萄品種によっても大きく左右されます)、そして新樽の比率が上がり、樽熟成期間が長期間に及んだ場合もタンニン量は増えます。葡萄自体の凝縮度や成熟度が低い場合、過剰な樽の使用は、強いタンニンをワインに与えてしまう事も多々ありますが、ペアリングという視点に立った場合、あらゆる特徴はただの要素として判断すべきですので、「樽が強すぎる」状態であっても、あくまでも個性として捉えましょう樽由来のタンニンと魚介類の油脂分(貝類と大型の甲殻類は例外)は、極めて相性が悪い(銅を舐めたような味わいが生じる)ので注意が必要です。

主に赤、オレンジワインに適用される項目となります。

1. ハーモナイズ(調和)

ワインのタンニンと料理の苦味の相似性を利用し、料理に含まれる苦味の強さに合わせてワインの渋味を調整すると、調和の関係を成立させることができます。一部の野菜類に含まれる苦味、焦がすという調理方によって生じた苦味などが、この手法の主な対象となります。基本的には野菜類の苦味には、オレンジワインや、渋味の低い赤ワイン、焦げからくる苦味には、相応に渋味の強い赤ワインを合わせることをお勧め致します。応用例としては、青魚などをワタも一緒に食べる場合(サンマの塩焼き等)、赤ワインの渋味と調和の関係を成立させることが可能です。しかし、樽からのタンニンは相性が悪いため、この場合は、大樽や古樽で熟成したワイン(キアンティ等)を選ぶと成功率が上がります。例外としてチョコレートの苦味とは、調和を成立させることが非常に難しいため、注意が必要です。

こんがりと焼いたステーキには渋味の強いワインを

魚に赤は上級テクニック

2. カウンターバランス(中和)

ワインのタンニンには、料理の脂肪分やタンパク質と中和する性質があります。脂肪分が多い肉に、しっかりと渋味のある赤ワインを合わせることによって、過剰な脂の印象を和らげることが可能になります。また、重要な注意点として、ワインのタンニンには料理の中にあるたんぱく質を探そうとする特性が挙げられます。タンパク質が非常に少ない料理(葉物のサラダ等)に、高タンニンのワインを合わせてしまった場合、タンニンの働きが過剰になった結果として、ワインの渋味が不必要に強調されてしまいます。

肉の脂肪分にはしっかりとしたワインのタンニンで

3. アンプリファイ(増幅)

料理の塩味はワインのタンニンによって増幅される性質があります。料理や食材(ブルーチーズ等)に強い塩味が含まれている場合、高タンニンのワインは避けた方が無難です。しかし、ワインの酸味には料理の塩味をカットする働きがあります。酸によるカットの効果は、タンニンによる塩味の増幅作用よりも強いため、高タンニンのワインであっても十分な酸味があるのであれば、塩味の増幅作用を気にする必要はあまりありません。この酸味と渋味の力関係に関しては、ブルーチーズに対して、高タンニン高酸度のワイン(イタリアのバローロ等)と、高タンニン低酸度のワイン(ニューワールドのカベルネ・ソーヴィニヨン等)を同時に合わせてみると、容易に確認することができます。

ブルーチーズとの検証は分かりやすい