2023年5月25日14 分

名声と呪縛 <トスカーナ特集:Montalcino編 Part.1>

あくまでも個人的には、としておくべきだろう。

私がこれまでにテイスティングしてきた膨大な数のサンジョヴェーゼの中から、仮にトップ10を選ぶとしたら、少なくとも上から3つは確実に、Brunello di Montalcinoがランクインする。むしろ4位から下は候補があり過ぎて、選定が難航するのは間違いない。つまり私は、Brunello di Montalcinoに対して、頭一つも二つも抜けた評価を、個人的にはしてきたことになる。

他者の評価や、世間的な名声ではなく、自身の体験に最大の重きを置く普段の私なら、Brunello di Montalcinoこそがトスカーナ最上のサンジョヴェーゼである、と断言してもおかしくは無いのだが、私はまだ確信にも核心にも至ってない

なぜBrunello di Montalcinoに、これほどまで心惹かれてしまうのか。

なぜBrunello di Montalcinoが、Chianti ClassicoとVino Nobile di Montepulcianoを上回っていると感じることが多いのか。

実はその理由が、私自身良く分かっていないのだ。

サンジョヴェーゼ100%だから。

飛び抜けて優れた造り手がいるから。

最もらしい理由に思えるかも知れないが、いくらでも反論ができる。

サンジョヴェーゼにとって、真に理想的なテロワールを有しているから。

おそらく、真実は結局そこにあるのだとは思うが、モンタルチーノのどの要素が理想的なのかも、仮説は立てることができても、いまいち釈然としないままだ。

それでも、Brunello di Montalcinoが、私個人にとって、最上であることは揺るぎそうにない。砂海からダイアモンドが見つかる可能性に等しい割合でしか存在していない至上のワインが、モンタルチーノにはある。

そして、そのようなワインを前にして、私はただただ正直でいるしか無いのだ。

若き銘醸地

モンタルチーノは、ワイン産地として歴史が浅い

この事実は、「モンタルチーノが最上」という見解への、強力な反論となり得る。

現存する最古のモンタルチーノ産ワインに関する記録は、1550年のもの。

ボローニャから来た修道士のレアンドロ・アルベルティが、「丘陵地で造られる良質なワインで知られている。」と書き残している。アルベルティの記述には、白ワインか赤ワインか明記はされていなかったが、その他の歴史的背景から、ほぼ間違いなく「モスカデッロ種から造られた甘口の白ワイン」だったと考えられている。

17世紀には、モンタルチーノ産モスカデッロに関する記述がより多く見られるようになるが、一貫して赤ワインのことは書かれていない。

現在のBrunello di Montalcinoに近いと考えられるワインが、ようやく出てきたのは1860年代のこと。

現代でもモンタルチーノ屈指の大銘醸として知られる、ビオンディ・サンティ家の二代目当主クレメンテ・サンティが、1850年代から研究し始めた赤ワインを徐々に世に出し始めたのだ。

クレメンテの研究は、三代目のフェルッチョ・サンティに継承され、1888年にはブルネッロ(1865年にクレメンテが生み出したとされる、サンジョヴェーゼの特殊なクローン)の名をワイン名として正式に冠した、Brunello di Montalcinoが誕生した。

モンタルチーノにおける赤ワインの誕生はおそらく1850年前後、そして、Brunello di Montalcinoの誕生は1888年。

つまり、モンタルチーノのサンジョヴェーゼは、少なくとも「表立った」という意味では、長くて170年程度の歴史しか無いのだ。

紀元前後には赤ワインが造られていたと考えられるモンテプルチャーノに比べると、1900年間近く引き離されている。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノと並んでイタリア三大赤ワインとされるバローロ、バルバレスコは、19世紀半ばに辛口ワインへとシフトしてから名声を得たものの、ネッビオーロの歴史そのものは13世紀にまで遡れる。

カリフォルニアで本格的かつ規模の大きいワイン生産が始まったのが、1848年のゴールドラッシュ以降。

オーストラリアでワイン造りが本格化したのが、ドイツ、イタリア系移民が増えた1840年代から。

モンタルチーノが、いかに「若い産地」なのか、お分かりいただけるかと思う。

ニュー・ワールド産地であれば、不思議なことでも無いが、モンタルチーノはオールド・ワールドの中でも指折りの歴史的銘醸地トスカーナ州の産地だ。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのずば抜けた品質を鑑みれば、この歴史の浅さを、ただ「偶然非常に長い間発見されなかった、例外的存在」と捉えるのは、どうにも腑に落ちない。

ヨーロッパにおける伝統産地の成り立ちとは、往々にしてそういうものでは無いのだ。

Brunello di Montalcino

Brunello di Montalcinoを名乗るためには、サンジョヴェーゼ100%、最低5年間(内24ヶ月の樽熟成)の熟成という、非常に厳しい規定をクリアする必要がある。

当然、リリースまでの5年という期間はワイナリーのキャッシュフローを圧迫するのだが、問題はそれだけではない。

古典的なBrunello di Montalcinoは、たかだか5年程度で、柔和な表情を見せたりなどしないのだ。

この難しさに対処すること、そして有力評論家によるポイント評価が、ワイナリーの浮き沈みに直結していた時代背景、アメリカというメインクライアントの性質、若い産地特有の強い成長意欲、それら全てが合わさって、特に1990年代中頃から2010年代初頭までのBrunello di Montalcinoは、葡萄を過熟させ、新樽の分厚い鎧を着せて、フィネスを犠牲に巨大なパワーを宿らせたワインが主流となっていた

その戦略は抜群の効力を発揮し、「ブルネッロ=パワフルな赤ワイン」という固定概念が、瞬く間に浸透していった。

2000年代にNYでソムリエをしていた私は、まさにこのパワー型ブルネッロ全盛期の当事者だった。レストランの種類を問わず、分かりやすい、外しにくい「重い赤」として、Brunello di MontalcinoがNY中のワインリストを席巻していたのだ。

その時代のBrunello di Montalcinoは、確かに高品質なワインだった。しかし、イタリアワインであることの、トスカーナのサンジョヴェーゼであることの意味は、ほとんど感じることができなかったのも確かだ。

冷静になってみれば、当時のBrunello di Montalcinoは、ワインマニアが喜ぶ、ナパ・ヴァレー産カベルネ・ソーヴィニヨンのオルタナティヴ・チョイスでしか無かったとすら思う。

2010年代に入ってから、徐々によりエレガントなワインも増えてきた印象だったが、2019年にモンタルチーノを訪れた時のことは、今でも鮮明な記憶として焼き付いている。

2019年の展示会は、2014年ヴィンテージのお披露目だったのだが、近年でも稀に見る冷涼で雨の多い年だったため、その酒質からパワーがすっかりと抜け落ちていた。

欧米の評論家たちは口を揃えて酷評し、早々にテイスティングを切り上げる人も続出した。会場でも、生産者たちの表情には深い影が落ちていた。

なぜなのか、全く理解ができなかった。

私にとって2014年ヴィンテージは、エレガントでしなやかで、美しいワインの宝庫だった。

パワー一辺倒の、押し付けがましく、暑苦しい味わいよりも、遥かに良かった。

「ブルネッロ=パワフルな赤ワイン」という固定概念は、モンタルチーノにとって、呪縛でしかない

冒頭で述べた、私にとってのサンジョヴェーゼTop3を独占するBrunello di Montalcinoは、例外なく極めてエレガントなワインである。ステロイドで増強したかのような違和感たっぷりのパワーとも、品種も産地も行方不明な濃厚味とも無縁の、優美に、繊細に、軽やかにテロワールを讃える、美しいワインなのだ。

Rosso di Montalcino

リリースまで5年、というBrunello di Montalcinoの制約は、前述した通りワイナリーのキャッシュフローにとっては非常に重いものだ。さらに、リリース時の「硬さ」も好印象へと繋がりにくい恐れがある。

それらのリスクを回避しつつ、ワイナリーの「名刺代わり」として極めて重要性が高まったRosso di Montalcinoは、結果的に、全イタリアでも屈指のコストパフォーマンスを誇るワインとなった。

その理由を紐解くと、Rosso di Montalcinoの価値がさらに高く感じることだろう。

モンタルチーノには、約3500haの葡萄畑があり、そのうちの約2100haがBrunello di Montalcino用、約510haがRosso di Montalcino用の畑となっている。

Brunello di Montalcinoの平均的な生産量は年間約13000hlであるのに対し、Rosso di Montalcinoは、約35000hlとなっている。

これらの相反するデータが示す結論はただ一つ。

Rosso di Montalcinoには、本来ならBrunello di Montalcinoを名乗れる葡萄が、相当なヴォリュームで含まれている、ということだ。

生産者からしたら苦渋の選択なのかも知れないが、消費者にとってこれほどありがたいことはない。

確かに、名刺代わりとなるRosso di Montalcinoは、どのワイナリーも丁寧に、しっかりと手間をかけて造るものだが、それ以上にそもそもの葡萄が良い。

様々なワイナリーにヒアリングしてみたが、Rosso di Montalcino用の区画が明確にある、というケースの方が遥かに少なかった。基本的にはBrunello di Montalcinoにするためのスタンダードで栽培、醸造されたものから、テイスティングチェックによって、どちらに回すか判断する、というケースが圧倒的に多いようだ。

もちろん、Rosso di Montalcinoを「セカンド・ワイン」として機能させることは、「ファースト・ラベル」であるBrunello di Montalcinoの品質を向上させることにも繋がる。

日常のRosso、ハレの日のBrunello。

この完璧な棲み分けは、品質面において、世界に並び立つケースが非常に少ない。

繰り返そう。

Rosso di Montalcinoは、全イタリアで最高レベルのコストパフォーマンスを誇る、素晴らしい赤ワインだ。

テロワールとスタイル

既に小地区(UGAs)が実質的に導入されたChianti Classico、その準備の最終段階にあるVino Nobile di Montepulcianoは、より緻密にテロワールを表現するワインとして、産地全体が同じ目線をもちつつある。しかし、「左を向け、と言われれば右を向く」イタリア人たちが、このような団結を見せることの方が珍しいということは、よりフラットな目線から見るためには、知っておくべきだろう。

そう、Brunello di Montalcinoに同じような動きが見られないことはむしろ、ただただイタリアらしいだけのことなのだ。

そしてもちろん、制度が無いこと自体が、テロワール・ワインの有無と直結しているということも無いのだが、Brunello di Montalcinoに限って言うのであれば、飲み手側の理解不足によって、「アイデンティティ崩壊の瀬戸際」に立っていると考えざるを得ない部分も、確かにある。

一つ、私見として強く申し上げておきたいのは、Brunello di Montalcinoの「あるべき領域」に関して、だ。

確かに、1990年代以降の「ブルネッロ・ブーム」によって、伝統エリアの外側にBrunello di Montalcino用の葡萄畑が大拡大したのは間違いない。

また、それらのワインの生産量が多かったことから、Brunello di Montalcinoというワインの一般的なイメージが、大きく変化していったのも間違いない。

伝統派にとっては、決して面白くない事実だろう。

しかし、そんなことは世界中のいたるところで起こっていることだし、同州のChiantiは比較にならないほど拡大してきた歴史がある。

私自身は、(限度はあるが)Brunello di Montalcinoの拡大に関しては、「テロワールの多様性を押し広げた」と要因として、ポジティヴに捉えた方が良いと考えている。

その上で、最終的にモンタルチーノとサンジョヴェーゼが導き出すテロワールの優劣という絶対的な結果を、冷静に見定めれば良いだけのことだ。

技術はテロワールを凌駕できない。

ワイン界の普遍の真理は、例外なくモンタルチーノにも当てはまるのだから。

Brunello di Montalcinoの小地区

モンタルチーノにも、慣習的にUGAsの役割を果たしてきた非公式の小地区は存在しているのだが、栽培、醸造の両局面におけるスタイルの幅広さ(造り手単位の個性の強さ)、時に数10m単位で組成が変化するハイパーモザイク型の土壌、多方向にうねる丘陵、小地区間でブレンドをする伝統といった様々な要因が複雑に絡み合い、小地区ごとの特性が見えにくくなってしまっている

特に、スタイル面における振れ幅は大きく、そのスタイルが相当程度はテロワールに基づいたものではあるにしても、少なくとも現時点では、Brunello di Montalcinoは、小地区単位の特徴を前提にしつつも、詳細と実際の酒質は、生産者単位で見た方が良いように思える。

参考までに、非公式小地区の大まかな特徴を書いておくが、前述した理由によって、「Brunello di Montalcinoにおいては、その特徴通りになるとは全く限らない」と認識しておくべきだろう。

各小地区の簡単な解説と共に、そのエリアを代表するワイナリーを抜粋して列挙していくが、北西部のBoscoに限ってはワイナリーが2軒しかないため、今回は割愛させていただく。

また、Brunello di Montalcinoでは、ワイナリー名と銘柄名が異なっているケースが多いため、今回は分かりやすさを重視して、銘柄名で表記する。

Montalcino

Brunello di Montalcinoの「生まれ故郷」であるMontalcino周辺は、平均標高が350~500mと高く、Brunello di Montalcinoの中でも、もっともアロマが強く、エレガントかつ複雑性の高い長熟型のワインとなることが多い。また、際立って強く分厚い酸、強力なタンニンといった特徴も宿る。

Montalcinoの街を中心に、南側により多くの銘醸ワイナリーが位置しているが、冷涼感と葡萄畑の傾斜がさらに強まる北側にも、素晴らしいワイナリーが多い。

基本的には、エレガントさの中に力強さも宿る南側よりエレガントさとミネラル感が強調された北側、と考えると良いだろう。

その歴史的背景と、際立った酒質でもって、Montalcino周辺エリアは、南側、北側共に、文句なしのグラン・クリュ候補と考えて差し支えない。

Montalcino南側の造り手

Biondi Santi

Conti Costanti

Pian dell’Orino

Gianni Brunelli

Salicutti

La Cerbaiola

L’Aietta

Montalcino北側の造り手

Il Marroneto

Ridolfi

Le Gerla

Il Paradiso di Manfredi

Canalicchio di Sopra

Fuligni

Le Chiuse

Torrenieri

北東部に位置するTorrenieriは、何かと議論の的となる小地区。歴史的に、重粘土土壌のこの地は、葡萄栽培には不向きとされてきた場所でもあり、実際に1990年代半ばまでは、わずか一軒のワイナリーしか無かったが、以降のブルネッロ・ブームによって、葡萄畑が急拡大した。

小地区を全体として見れば、確かにBrunello di Montalcinoには相応しくない、と思うかも知れないが、そこに大きな落とし穴がある点もまた、この地らしいと言えるだろう。

モンタルチーノのハイパーモザイク型土壌組成は、重粘土主体のTorrenieriであっても、葡萄栽培に向いた、いや、サンジョヴェーゼ栽培に向いたポケットを形成しているのだ。

高品質なワインは標高300m近辺の畑に多く、粘土含有率の高さから、やや重心が低く腰の座った味わいとなる傾向がある。

Torrenieriの造り手

Sasso di Sole

Abbadia Ardenga

Casanova di Neri

Innocenti

Tavernelle

標高300~350m付近、水捌けの良い岩がちな土壌、暖かく乾燥したマイクロ気候、エリアを吹き抜ける冷たい夜風によって生じる大きな寒暖差。Tavernelleが、モンタルチーノ屈指の銘醸エリアとされてきた理由は、このテロワールがあってこそだが、それ以上に、モンタルチーノ最上とすらされるあまりにも偉大なワイナリーの存在が大きい。

そう、Tavernelleらしいエレガンスとパワー、緻密さと大胆さが宿る、立体的な優美さを象徴しているワイナリーは、故Gianfranco Solderaが率いたCase Basse(個人的にも、至高のサンジョヴェーゼの一つ)で間違いないのだ。

小地区全体としてはバランス型のワインが多く、インパクトには欠けるかも知れないが、その奥深さを知るにつれ、強く深く惹き込まれていく。

Tavernelleの造り手

Case Basse

Caprili

Pieve Santa Restituta

Camigliano

平均的な葡萄畑の標高が低く、モンタルチーノの中でも、最も温暖で乾燥したエリアの一つとなるCamiglianoは、そのテロワール通り、低めの酸と高めのアルコール濃度、熟した果実感というパワー型の典型的特徴が現れやすい。

この地に葡萄畑を構える生産者のイメージから、パワー型のインターナショナル風スタイルが先走っているようにも感じられるかも知れないが、根底にはしっかりとテロワールがある

ワイナリーの数は8軒程度と少ないが、生産量の総数はBrunello di Montalcino全体の約20%にものぼるため、一般的なBrunello di Montalcinoのイメージを実質的に牽引している小地区の一つとなる。

Camiglianoの造り手

Castel Giocondo -Marchesi di Frescobaldi-

Pian delle Vigne -Antinori-

Tenuta La Fuga

Sant’Angelo

南部にあるこの小地区の特徴を一言で現すなら、「全てがMontalcinoと真逆」となるだろうか。モンタルチーノの中でも最も温暖で乾燥しており、起伏も緩やかなSant’Angeloのワインには、熟した果実とアーシーなアロマ、低い重心と酸、屈強なボディ、控えめなミネラル感といったテロワールの特徴が明確に現れる。

また、全体の約35~40%を生産しているエリアでもあるため、Camiglianoと合わせて、少なくとも過半数のBrunello di Montalcinoが、この両産地に共通する特徴(熟した果実味、低い酸、高いアルコール濃度のパワー型)を宿しているということにもなる。

Camiglianoと同様に、大型の生産者が多いこともあってか、ワイン通の間では賛否両論あることは承知しているが、随分と誤解が入り混じっているのは確かだろう。

モンタルチーノの中でも、温暖化の影響を最も強く受けているSant’Angeloの生産者たちは、その対策にも油断が無い。

歯止めが効かない高アルコール濃度化に対して、いかにして「軽やかさ」を維持し続けるのか

その研究がSant’Angeloで最も進んでいるという事実は、この地に葡萄畑を拓いた生産者たちの最新ヴィンテージを注意深くテイスティングすれば、容易に確認できるはずだ。

Sant’Angeloの造り手

Banfi

Col d’Oricia

Campogiovanni

Lisini

Il Poggione

Castelnuovo dell’Abate

モンタルチーノの南東部に位置するCastelnuovo dell’Abateは、個人的に最も「特別なもの」を感じる小地区だ。

南側にあるため、基本的には温暖だが、西側の小高い峰が海からの熱風を防ぎ、下部に流れるオルチア川からは冷風が運ばれてくる。

土壌はハイパーモザイク型の究極で、一つの葡萄畑の中に、極めて多様なテロワールが生じやすい。

これらの要素が合わさった結果、Castelnuovo dell’Abateのワインには、奥深いアロマ、しなやかな果実味、繊細な酸、柔らかいタンニン、そして驚くべき多層性に満ちたミネラル感といった特徴が宿りやすい。

また、モンタルチーノを代表するクラスの造り手もひしめいているため、この地においては造り手間のスタイル的多様性も、最高のポジティヴ要素として現れる。

Montalcino小地区と並んで、文句なしのグラン・クリュ候補エリアと考えて差し支えないだろう。

Castelnuovo dell’Abateの造り手

Poggio di Sotto

Stella di Campalto

Mastrojanni

Ciacci Piccolomini d’Aragona

Uccelliera

Podere Le Ripi

La Magia

来たる変革の時

保守的というよりは、各生産者が思い思いにワイン造りをしている、という印象が強いモンタルチーノだが、この地にも今、強力な変革の風が吹き始めている。

世代交代だ。

オーガニック転換に熱心で、より軽やかな味わいを好む新世代が、結果としてよりテロワールを精密に表現したワインを生み出して行くのは間違いない。

ただ、その変化を数多くのBrunello di Montalcinoから感じ取るには、(リリースまでの熟成期間規定の関係上)まだまだ時間がかかるため、まずはRosso di Montalcinoを試していくのが良い。

おそらく今から約10年後、Brunello di Montalcinoは、次のフェーズに全面突入するだろう。

後編では、モンタルチーノで訪問したワイナリーのストーリーを追っていく。