2022年11月4日3 分

ゴーヤチャンプルーに挑戦

私は無類の沖縄料理好きだ。

ミミガー、ソーキ、ラフテー、タコライス、ジーマーミ豆腐、テビチ、海ぶどう、島らっきょう、沖縄そば、サーターアンダギーと、まさに大好物のバーゲンセール状態。

そんな沖縄料理の中でも、特に愛してやまないのが、ゴーヤチャンプルーである。

スパム(豚肉)、木綿豆腐、卵、ゴーヤ、鰹節という食材を油で炒めるというシンプル極まりない構成ながら、塩、旨、苦味が高次元で融合するゴーヤチャンプルーは、日本の郷土料理を代表する一皿。

もちろん、泡盛やシークァーサーサワーが最高のお供なのだが、ワインで合わせるのも非常に楽しい。

しかも、ゴーヤチャンプルーへの合わせは、ペアリングにおける複数の「例外パターン」が当てはまるため、ペアリングの学びにとっても最適な一皿なのである。

さて、早速だがゴーヤチャンプルーを分解していこう。

まず例外パターンその1、「豆腐は無視」が当てはまる。

豆腐は多くの粉物(麺、生地などなど)と同様に、基本的にペアリングにおいては存在ごと無視することができる。その理由もシンプル。粉物と同様に、豆腐もまた「調味料が入り込む媒体」であるため、最終的な味だけを気にしておけば問題ないからだ。

次に当てはまる例外パターンが、「肉と野菜の関係性」である。

基本的にペアリングにおいては、同じ料理内に肉と野菜が入っている場合、肉(もしくは魚介類)を優先する。しかし、この肉が「加工肉」であった場合、優先順位が反転するのだ。

スパムやハム、ソーセージといった加工肉はペアリングでは肉の味そのものよりも、脂肪分と塩分として単純計算することができる、というのが理由だ。

例外パターンはさらに続く。「卵と調味料」である。

卵はワインペアリングにおける難食材の一つとして知られ、最も有効な対処法は低亜硫酸ワイン及び、火山性土壌の影響が極めて強い地域のワインで合わせることとされている。しかし、この卵に強い油と調味料が入った場合、この法則を無視することができてしまう。つまり、豆腐と同様に、ゴーヤチャンプルーにおいては、卵は存在ごと無視して良いということになる。

最後の例外パターンは、「野菜の苦味とワインの渋味」となる。

料理に含まれる苦味は、ワインの渋味と極めて似たものと考えることによって、調和の関係性を成立させることができるのだが、この手法は基本的に赤ワインで使用するものだ。

しかし、野菜由来の苦味の場合、例外パターンとなる「オレンジワイン」が適用される。

不思議なことに、赤ワインの渋味よりも、オレンジワインの渋味の方が、野菜の苦味とは遥かにナチュラルに馴染むのだ。

以上の例外パターンを全て含めて、ゴーヤチャンプルーの味わいを、塩味、油分、そして鰹節がもたらす強い旨味、と考えると、必然的に、合わせるワインは、オレンジワイン(その中でもジョージアや北イタリアなどの旨味が強いクラシック系)が最有力候補となる。

余談だが、スパムではなく豚バラ肉などを使用した場合、「肉と野菜の関係性」が通常通りの肉優先となるため、合わせるワインが変化する。

この場合は、ゴーヤの苦味に対する別アプローチとしてワインの甘味による中和を採用するのが最もおすすめで、豚肉との相性も抜群であるリースリングが使いやすい。目安としては、キャビネット程度の半甘口、もしくはハルプトロッケン、ファインハルプなどの半辛口が良いだろう。

家庭でも簡単に再現できる、実はテクニカルでハイレベルなペアリング。ぜひ、お試しくださいませ。