2022年9月20日4 分

Coravinの有用性

抜栓したワインの品質をできるだけ長く維持するためのガジェットは、様々なフォーマットで、膨大な数のアイテムが開発されてきた。

それなりに有用なものもあれば、疑問点が多々あるもの、実に珍妙なものまで、そのヴァリエーションもまた非常に興味深く、ガジェット好きには興味の尽きないジャンルのアイテムとなっている。

そんな中で、まさに革命的なガジェットとして登場したのが、Coravinだ。

すでにかなり認知されてはいるが、Coravinは、ワインを抜栓しないままコルクに細い針を刺し、ガス注入と同時に針からボトル内のワインを吸い上げ、コルクの自然収縮を利用して針穴を閉じる、という仕組みになっている。

その効果は「正しく使えば」まさに絶大で、Coravinの発明によって、超高額ワインのグラス販売や、超多数のグラスワイン販売(200種類以上をグラスで提供という例もある)といった夢のようなプログラムを、非常に低いリスクで叶えることが可能になった。

また、家庭で保管してある大切なワインを少しずつ長期に渡って楽しむ、という凄いことまで出来てしまう。

さて、先ほども述べたが、この効果を最大化するには、何よりも「正しい使い方」が重要だ。

詳しくは、Coravinの公式YouTubeの動画でご確認いただきたいが、要点をまとめると以下の通りとなる。

1. 使用後はすぐに針を抜き、ボトルを縦にする。

2. コルク表面にみ出てきたワインを拭く。

3. コルクの穴が閉じた後、ボトルの管理は必ず「横向き」で行う。

の3点が特に重要となる。

正しい使い方を守れば、Coravinを使用したワインは、少なくとも2年程の期間、非常に微細な劣化(2年後の劣化度合いは5%程度と考えても問題ない)で品質を維持することができる。もちろん、Coravinが防ぐのはあくまでも酸化であって、経年変化では無いことは重々頭に入れておくべきだ。

また、ガスを使用してワインを抜き出すことから、ガス代が気になるという方も多いだろう。

Coravin用のガスカプセルは、2個入りがおおよそ3,510円(一個あたり1,755円)、6個入りがおおよそ9,720円(一個あたり1,620)となる。

ガス効率を最大化する方法もCoravinの公式YouTube動画で公開されているため、ぜひ確認していただきたい。

コツをまとめると、ガス注入レバーは細かく2~3度プッシュして、ワインの抽出スピードがかなり落ちるまでは再プッシュしないこと、なるべく少ない容量での抽出を繰り返すこと、となる。

公式では150mlのワインをガスカプセル一個で15回抜き出せるとしているが、日本において150mlを抜き出すケースは少なく、100ml程度での使用の方が圧倒的に多いだろう。

理論的には100ml抽出の場合、20回程度の使用が可能と考えられるため、ボトル約3本分をカプセル一つでまかなえる。

つまり、ガスを最大効率で使用した場合、2個入りでカプセルを購入した場合は、1ショットあたり約88円、6個入りで購入した場合は81円となる。

ガス効率をうまく最大化出来なかった場合は、100円程度かかると考えておけば良いだろう。

この1ショット当たりの価格を高いと捉えるか、安いと捉えるかは、飲むワイン次第といったところだろうか。

当然、1,500円のワインを7回に分けて飲むのに、6回のガス注入(最後の一杯は普通に抜栓する)で最大600円もかけてしまうのは意味が無いと考える人も多いだろうから、基本的にはより高価なワインに対して使用することになる。

メリットに満ちたCoravinだが、流石に万能というわけではない。

Coravinを長年愛用してきた筆者の経験から、Coravinが苦手としていることや、出来ないことを以下にまとめておく。

1. 非常に繊細なタイプの赤ワイン(例えばブルゴーニュの赤)では効果が落ちる。

2. 白ワインでは赤ワインよりもやや効果が落ちる。

3. 20年以上熟成したワインでは効果がかなり落ちる。

4. ボトルを立てた状態で保管すると効果がかなり落ちる。

5. グラス製のキャップや、プラスチックコルクでは使用不可。(DIAM等は可能)

6. スクリューキャップ用の専用キャップがあるが、品質の維持は最大でも2ヶ月程度。

7. 特殊な形状のボトル(瓶口から瓶肩部までの距離が短いもの)には使用不可。

8. 還元臭や揮発酸を飛ばすのに、非常に時間がかかる。

9. ネズミ臭(マメ臭)発生の遅延は可能だが、防ぐことは出来ない。

10. (粘性が高い)デザートワインには不向き。

11. ボトルを揺らしながら長距離持ち歩くと効果が落ちる。

12. 定期的に針が折れる上に、針がなかなか高価。

となる。

筆者としては、これらの点を踏まえても、メリットが圧倒的に上回るのがCoravinの凄さだと感じている。

味わいの劣化に関しては、よほど飛び抜けて繊細な味覚の持ち主でない限り、ブラインドテイスティングで100%の精度で看破するのはほぼ不可能

そのケースに該当しない場合は、そもそもガジェットに対する猜疑心から(必ず劣化するという)強い思い込みを捨てきれない人の意見と考えるのが妥当だ。

余談だが、普通に使用する分には現行のModel6で十分。

より安価なシリーズのPivotは効果が激減するため、Coravinの有用性を最大化出来ないため、推奨しない。