2021年1月14日7 分

SommeTimes Académie <3>(おすすめのワイン入門書 Vol.2)

最終更新: 2021年1月27日

Vol.2ではおすすめのワイン入門書をさらに3冊ご紹介いたします!

【本の選定基準】

➀誰でも手に入りやすい本であること。

➡本屋に行き、あえて吟味しすぎることなく選ぶことで、皆様の立場での本選びを心掛けた。

➁「入門」、「初心者」、「やさしい」にフォーカスしていること。

➡難しい本をいきなり読んではダメ。ステップアップが大切。

また、私の解説文に加え、以下の項目に添って、☆5つで点数をつけていきます。

読了時間:短ければ短いに越したことはないが、内容の充実度とは反比例になることもある。

読みやすさ:字の大きさ、レイアウト、言葉の言い回し、イラストの有無、印刷が白黒かカラーかなど、ワイン入門書として最も大切な基準であると考える。「本」としての総合点とも言える。

難易度:難しいのはダメ。でも簡単すぎて物足りないのもやっぱりダメ。絶妙な難易度が要求される。

学べる知識量:ワイン入門書=試験対策本ではないのが難しいところ。知識の「量」はもちろん、「正確さ」も必要不可欠か。

【3冊目】ワインを楽しむ教科書

教科書と銘打っているだけあり、イラストを加え、わかり易く構成し直した「教科書」となっています。目次も、まさに王道のワイン教科書的な順序で並んでおり、その為学べる知識量は、入門書の中においては豊富であるといえるでしょう。本文中において、この本が対象としている人物は明記されていないが、どうやらワインラヴァーの様子。ただ、私が読んだ印象では、まさに「今年資格試験の受験を控えている受験生が、1~2月の時点で読むべき本」といった印象。筆者独自の視点や言い回しがもう少し加われば、面白さと、読みやすさが増えたかもしれません。しかし、奇をてらわない王道な側面を持ちつつも、少ないページ数と少ない読了時間で全範囲を網羅できてしまう、優れた速習本となっています。最後のチャプターである、「ワインリスト」からは、筆者のソムリエとしてのバックボーンが垣間見れる。普段から世界中の様々なスタイルのワインに、分け隔てなく接している様子。「ワイン入門書」は、そういう方が書かれた本を読みたいものですね。

読了時間:2時間30分

読みやすさ:★★★☆☆

使用されている言葉やフレーズに新しさはない。装飾されている言葉をそぎ落とし、コンパクトにまとめなおした印象。後半にいくにつれ面白くなってくるため、読者にとっては冒頭の醸造部分がやや読みづらさを伴うかもしれない。全ページにわたりイラストが盛り込まれており、文字量が適切で、「教科書」であるにもかかわらず楽しく学べる一冊。

難易度:★★★★☆

ところどころ、コンパクトにまとめすぎており、疑問が解決されない部分が見受けられるのが気になってしまう。教科書的な体裁をとってしまったことのデメリットと言える。

学べる知識量:★★★★★

知識の網羅ではなく、理解が伴うよう丁寧に解説されている。受験シーズンがはじまれば、強引な暗記が必要な場面がどうしても出てきてしまう。数多くの入門書に手をだすよりも、この本を何度も読み直し、隅々までしっかりと理解するという手もありだろう。

【総評】

個人的に、資格試験受験を考えている方に、最もオススメしたい一冊である。ただ、帯に「レストランでも、お店でも、家飲みでも役立つ!」とあるが、もう少し対象を絞り構成し直すことで、より優れたワイン本になるように思う。2018年初版のため、比較的最新の知識が学べるのも、入門書ではなかなかないこの本のメリットの一つ。

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【4冊目】これが最後のワイン入門

本書は、ワインはよく飲むし好きなのに、いつまでたっても初心者気分という方への“再入門書”として有効である。初心者の方でも十分理解できる内容となっているが、“ワインは好き”という前提で読んだ方がより楽しめる内容となっている。筆者自身の体験が随所に盛り込まれており、“エッセイ”のような感覚で読み進めることができる。この本最大の魅力は、“目次”に表れている。例えば、「シャトー・ラトゥールも地酒」「飲み残しは、明日の楽しみ!」「チリは品種の性格を掴むのにうってつけ」「人は見た目が9割、ワインは5割」など、紛れもない筆者自身の言葉でその内容が綴られている為、他の本のコピーに陥ることがない。

読了時間:3時間30分

読みやすさ:★★★★☆

ワインにまつわる知識をぶつ切りにして個別に紹介するのではなく、各テーマを文章で丁寧に教えてくれる。痒いところにすかさず手を伸ばしてくれる気持ちよさがあり、ワイン入門書にありがちな、新たな疑問の連鎖が起きることもない。

難易度:★★★☆☆

入門書のレベルを超える内容についてはコラムでまとめられており、読みやすさの工夫もされている。

学べる知識量:★★★★☆

学べる項目数は決して多くないが、その分、一つ一つの項目について充分に掘り下げている。

【総評】

本屋さんに置いてあるワイン本の8割以上は入門書である。その為、他と差別化する必要があるが、そのほとんどがレイアウトやイラストを用いることで独自性を打ち出しており、文章それ自体から学べることは少ないケースが多い。本書のように、表紙も中身も飾り気がないのは、内容が詰まっているからこそ。良いソムリエかどうかは年齢で決まるのではなく、経験の質と量で決まると思う。その両方を兼ね備えた筆者(ワインジャーナリスト)が、今まで書いてきた本の中で最も汗をかいたという力作。他の入門書と同内容であっても、それを異なる“視点”で学ぶことができる貴重な入門書である。ワインをこれから飲み始めるという方には向いていないかもしれないが、“初心者ゾーン”でくすぶっている人に真っ先にオススメしたい。

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【5冊目】The Wine

本書は、アメリカで大人気のワイン情報ウェブサイト“ワイン・フォーリー”のマデリーン・パケット女史によって書かれた本が、日本語に訳されたものである。ワイン・フォーリーの主な特徴は2つ。1つ目は、テーマとなる切り口が、日常のワインに対する疑問に置かれていること。2つ目は、地図などのイラストが効果的に用いられており、視覚デザインに徹底的にこだわっていることである。その2つの強みが、本書でダイレクトに表現されている。全世界で今、最も支持されている入門書と呼んで語弊はないだろう。しかし、読みやすさ、見やすさの点では完璧と言っても差し支えないだろうが、理解が深まるような内容で構成されてはいない。そもそも1ページ目から順番に最後まで読み進めるのを想定しておらず、一家に一冊、困ったときの辞書のようなイメージで傍らに置いておくといった趣旨の本である。そして、地図の大切さを教えてくれる。“ワイン産地を勉強する際は、必ず地図帳とセットで勉強すること”が私の口癖であるが、それは間違いなく万国共通の考え方であると再認識させられる。

読了時間:測定不能

読みやすさ:★★★★★

イラストの見やすさは世界中でお墨付き。また、解説の文章も最小限に短く留めようとしている傾向がみてとれる。

難易度:★★☆☆☆

視覚的にも易しく映る工夫がなされている。

学べる知識量:★★☆☆

世界中の国が幅広く網羅されているが、その分深堀りは一切されていない。断片的ではあるが、簡潔にまとまっており、頭に入ってきやすい。

【総評】

日本のソムリエ・ワインエキスパート資格の受験生にオススメするかと聞かれたら、、、私はオススメしない。その理由は、テイスティングの項目にある。テイスティングコメントとは、世界共通のものであるべきであり、それが他の言語に訳されることによって、世界中のソムリエと会話ができるというのが本質である。しかし、国や団体の違いによって、ほんの少しのズレが生じる。これを私は“流派の違い”と呼んでいる。テイスティングの方法や考え方は同じであっても、文化やその目的の違いによって、コメントのフォーマットに違いが生じる。つまり、本書はアメリカ、ないしは筆者のマデリーン・パケット女史が所属する、現地のソムリエ団体のフォーマットに添ってコメントがなされているのである。国内の資格試験を目指す方であれば、日本ソムリエ協会のフォーマットを学ぶべきであって、少なくとも、この本を学習の一冊目にしてしまうのは少々アヴァンギャルド過ぎると言わざるを得ない。

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「ワイン入門書」は決してワイン初心者の方の為だけに非ず、私のようなワインに触れて長い年月を経過した方でも十分に学ぶことは多い。新しい知識に出くわすことは決して多くないものの、かえってその分、「言い回しなどの伝える技術」や「お客様のワインに対する日常の疑問点」などを学べ、そして入門書の根底にある「ワインの裾野を広げる」ということの大切さを再認識させられる。これは全てのソムリエが共有しているテーマではないだろうか。

次回、最終編のVol.3をお届けします!!!