2021年5月23日3 分
ワインのアルコール濃度は、平均的に最も低いイタリアのMoscato d’Asti(5%~)から平均的に最も高い酒精強化ワイン(17~23%)と、醸造酒の中では非常に広いバリエーションが特徴と言える。
とはいっても、「普通の」ワインに関しては、ある程度狭い範囲に集約されており、辛口タイプの白ワインなら11~15%、赤ワインなら12~16%、ロゼワインなら11~13%、オレンジワインなら12~15%程度の範囲内に、ほとんどのワインが属している。
明確な定義は無いものの、12.5%以下はライトボディ、12.5~14%はミディアムボディ、14%以上はフルボディと考えて差し支えないだろう。
このアルコール濃度表示は、長年に渡って、愛好家にとっても、プロフェッショナルにとっても、ワインの「重さ」を推し量る重要な目安となってきたが、アルコール濃度表示に公然の秘密が隠されていることは、あまり知られていない。
そう、大多数のワインのアルコール濃度表示は正確では無いのだ。
EU圏のワインは、±0.5%の誤差が認められている。
つまり、アルコール濃度13%と表記されたワインは、実際には、12.5%~13.5%の範囲内ということになる。
しかし、0.5%の誤差は、規制としては筋が通っている。誤差も「重さ」を推し量る目安としては十分に機能する範囲内と言えるだろう。それに、アルコール濃度の計測も、計測機器が変われば多少の誤差が生じるため、この範囲内の誤差の許容は、ある意味当然とも言える。
問題はニューワールドのワインだ。
例えばアメリカでは、14%未満のワインは±1.5%の誤差、14%以上のワインは±1.0%の誤差が認められている。
そしてオーストラリアやニュージーランドでは、アルコール濃度に関わらず±1.5%の誤差が認められている。
(しかし、実際にはニュージーランド産ワインのアルコール濃度表示は、非常に誤差が小さいとされている。)
ニューワールドワインにおいて、これほど大きな誤差が認められている要因は、「イメージ造り」に他ならない。実際には15.5%あるワインを14.5%と表示するだけで、マーケットの幅が劇的に広がるからだ。
かつては、14%を境にして、税金の比率が変わる(14%以下だと税金が安くなる)国があったが、近年その制度は次々と撤廃されているため、既に過去のものとなっている。
毎年アルコール濃度表示を変えた新しいラベルを申請するのが面倒(金銭的な負担も含めて)という側面もあるが、やはりマーケット面での理由が大半を占めるのが実情だろう。
一方、アルコール濃度表示を0.1%以下の刻みで表示している場合は、ほぼ正確な数値の表記といって差し支えない。つまり、13.6%と表示されているワインのアルコール濃度は、実際にも13.6%に限りなく近いと言える。
一部の地域では、温暖化による影響が非常に大きく、アルコール濃度が年々高まっているため、以前よりもさらに誤差の隠れ蓑に入っている範囲が大きくなっている可能性がある。
EU圏のワインの場合は、心配するほどのことでは無いが、ニューワールドの多くの国々のワインは、0.1%刻みで表記されていない限り、実際のテイスティングを通じて、「重さ」を判断することが望ましい。