2023年5月19日5 分

レッツィーナの面白い可能性

皆さまこんにちは。

乃木坂しんの飛田です。

最近では周囲に独立された素晴らしいソムリエ、ソムリエールが増えてきており、その働き方の多様性を間近で見ながらますます面白い時代になってきたぞと可能性を感じつつ、自分においては危機感を感じる日々を過ごしております(苦笑)。

とは言いつつ、私自身も店舗以外のお仕事の機会を少しずついただいているので、様々なペアリングを考えていく際に、何かこう、「困ったときのこれ1本」となる複数のポジションをこなせるユーティリティープレイヤー的存在をいつも探しており、今日はそんなワインの中から1本をご紹介させていただきます。

そう、それはタイトルにも上げた「レッツィーナ」というワインです。

ソムリエの方はもちろん知っているのですが、一般の方には全く馴染みのないワインでしょうか。いや、ソムリエさんも教本で読んだだけで知らない、テイスティングしたこともない、という方ももしかしたら多いかもしれません。かくいう私もそうでした(笑)。

松脂を醸造時に添加して造るレッツィーナは、ギリシャにおける伝統的ワインの位置づけで、広範囲の産地にわたって造られております。そういう意味では「テロワール」や「その土地の味」というものが感じづらいという意見はあるかもしれませんが、ギリシャというその国そのものや、その歴史を感じていただけるのではないかなと思いますし、数もそれなりにあり、香りと味わいの強弱も違い個性的なので、ぜひ気に入った1本(=お店の味にあったワイン)を見つけてみてください。

ギリシャワインは今から5年以上前になると思いますが、大橋MWがプロモーションをされていたこともあり、日本市場では着実に伸びてきている印象があります。

私も以前に、サントリーニ島のアシルティコについても書かせていただいております。

ソムリエサイドから見ても個性的、かつコストパフォーマンスの良いワインも多く、現代の日本の家庭の食卓は、地中海的なイメージの料理も多いので、とても合わせやすい印象です。

また、国際品種に向かわずに、土着品種を大切にしてきたということも、その要因にあるのではないでしょうか。

ワイン名:レツィーナ アンフォーラ/ RETSINA AMPHORA

ワイナリー: テトラミソス / TETRAMYTHOS

原産国: ギリシャ

地域:アノ ディアコプト

品種: 100% ロディティス

ヴィンテージ: NV

価格:¥2,382

さてこのワイン、もとは仲間のソムリエ達と、松茸料理に合わせるワインの候補として話していた中で使い始めたことがきっかけです。その後、タケノコ料理に使ったり、少しずつその幅が広がっていく中、昨年、とあるゲストのリクエストに応えるべくペアリングを構成していた際に、ふと「そうか、そうだよな、」と腑に落ちた感じ(私は神が降りたと言っています。年に一度あるかないかですが...。)がして試してみたところ、イメージ通りにハマり、よりそのユーティリティー性に注目するようになりました。

そう、今回のおすすめは日本の伝統的調味料である「醤油と味噌」です。特に醤油とは面白いと思います。とはいえ「醤油と味噌」はそのままだととても強いので、前提として造り醤油など、出汁などと割った「調理をし、組み合わせたもの」との相性になります。

悩みの種である「お造り盛り合わせ」に合わせるワインとしても重宝できて、おすすめです。

個人的には赤身のもの以上に、貝類、エビ、イカ、タコなどを造り醤油でいただく、そのほか酢締めにしたものともよいですし、山葵や生姜とも相性がよいと思います。また、このレッツィーナのベース品種は酸の高いロディティスなので、柑橘類を絞っても問題ありません。

ベースワインとなる柑橘のフレーバーやフレッシュネス、ミネラル感は素材との相性を演出し、醤油の旨味や味わいと香りには松脂のスモーキーさが良くマッチします。

もちろん全てのレッツィーナが合うとは思いませんが、このワインはとても現代的であり、松脂の香りを上手に載せて心地よく仕上げている、「真剣に向き合っているワイン」だと感じる味わいです。そして、意外とあと引きます(笑)。

まずは難しいことを気にせず試していただきたいので、気になる方はご自身で検索してみてくださいね。

近く、仲間とレッツィーナの会をやろうってマニアックな話しもしていますので、そこでの発見も楽しみに、何かの機会にレポートを発表したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

<ソムリエプロフィール>

飛田 泰秀 / Yasuhide Tobita

The Flying Stones LLC

乃木坂しん オーナーソムリエ

1974年東京都出身

19歳で単身渡英し習得した語学力をもとに、都内イタリアンレストランサービススタッフとして飲食業界でのキャリアを開始する。

2002年 東京・銀座フランス料理「オストラル」。 同店移転オープニング業務にも携わる。

2006年 オストラル閉店に伴い、南青山のフランス料理「ランベリー」開業。支配人として2年間レストラン開業準備から運営の経験を積む。

(在職中、ミシュランガイド東京2008にて1つ星)

退職後、各種レストランの開業運営コンサルタントとして携わり、その経験を活かし、フランス料理「ラ・ロシェル溜池山王」入社。シェフソムリエとして新店舗開業を成功へと導く。

2012 年 東京・銀座日本料理店(当時3つ星)に支配人兼シェフソムリエとして入社。グループのフランス・パリ店の開業に伴い渡仏。開業準備から営業オペレーションなど全ての礎を築く。(在職中1つ星)

2016 年 6 月 日本料理「乃木坂 しん」を開業し独立。オープンから半年でミシュランガイド東京2017において1つ星を獲得。以降1つ星を維持

様々なイベントの企画や開発、育成、ワインスクールでの指導など幅広く活動している。

<乃木坂しん>

東京は赤坂、乃木神社にほど近い赤坂通り沿いに、料理人である石田伸二氏とともに開店させた会席料理店。お料理に合わせたワインや日本酒とのペアリングコースも楽しめる。

ミシュランガイド東京において1つ星の日本料理店