2020年12月25日4 分

香箱蟹とギリシャの出会い

最終更新: 2021年1月27日

師走のこの季節。何だか慌ただしく感じるこの時期は、一気に寒さが厳しくなり冬の魚達はしっかりと脂がのり、あれやこれやと美味しい季節となります。そして、日本料理において冬の味覚といえば…そう、です!
 

 
一般的にはズワイ蟹と言われる季節の蟹、英語ではSnow Crabと呼ばれていて、みんな大好きな食材の1つ。そんなズワイ蟹を年内一杯は雌雄両方楽しめます!
 

 
雌の蟹はセコ(セイコ)蟹や、香箱蟹などとも呼ばれ、この時期(猟期が11/6〜12/31)だけ楽しまれる貴重な食材です。当店でももちろんお出ししているのですが、ウチでは少し趣向を変えて、赤酢をきかせた温かい蒸し寿司にしてお出しています。
 

乃木坂しん で提供している香箱蟹の蒸し寿司


 
そしてそんな香箱蟹に合わせるのは日本酒を…それも熱燗を合わせて~、なーんて話しだと記事が終わってしまうので、他の日本料理屋さんにそこはお任せし、当店らしくワインを合わせて、違った楽しみ方をご提案させていただきたいと思います。
 

 
今回合わせるワインは、Thymiopoulos / Rosé de Xinomavroです。

生産者:Thymiopoulos / ティミオプロス

ワイン名:Rosé de Xinomavro

葡萄品種:クシノマブロ

生産国:ギリシャ

生産地:Macedonia,Trilofos マケドニア トリフォロス村

ヴィンテージ:2018

希望小売価格:¥2,200(税込)
 
インポーター:Racines
 
©︎Racines


 
ギリシャ本土のNoussa(ナウサ:*1)にあるこのワイナリーは、自然環境の中で独自にビオディナミやビオロジック栽培をおこなっているそうです。
 

 
品種名はクシノマヴロといい、ギリシャ独自の黒葡萄品種です。クシノマヴロは「酸っぱく、黒い」という意味だそうで、赤ワインに仕立てた場合、しっかりとしたボディと豊かな酸が特徴の本格派になります。この生産者はそんなクシノマヴロをあえてレイト・ハーヴェスト(*2)にしたものをロゼとして作り、最後に樽も使って仕上げています。なぜそうしているのかは会ったことが無いので、いつかお話を聞いてみたいなと思っておりますが、ロゼと言えばライトなワインが多い中で、このワインはしっかりとヴォリューム感があり、質感もとても滑らかです。
 

 
ワインは石灰岩由来のミネラリーな味わいと香り、木苺模様の甘酸っぱい香りと、酸味はあるものの、落ち着き感があり、フランボワーズ・ヴィネガーなどを使った鯖のマリネ青背の魚たち鰹や鮪の赤身の魚貝類、そしてなんと言っても赤酢の酢飯とピッタリですので、お鮨とは言わずもがな相性抜群です。
 

 
価格もとってもリーズナブル!この素敵なワインは、汎用性も高いのでペアリングコースの中でも大変ユースフルなアイテムになること間違いありません。ちょっとした変化球アイテムとしても最高ですね!
 

 
ご家庭でももちろん大活躍してくれます!ロゼですから幅広い家庭料理と楽しめますし、このワインならではのヴォリューム感は、ちょっとした肉料理でも問題なく合わせられるでしょう。是非是非テーブルワインとして楽しんでみてください。でもあまり使われすぎると私の分がなくなりますので、ほどほどに~。
 

 
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

 

 
(*1)ナウサ:ギリシャ北部のマケドニア地方にある小さな産地。生産者数も少ないが、この地の土着葡萄であるクシノマヴロが、世界的に大きな注目を集めている。その他の土着白葡萄からも素晴らしい品質の香り高いワインが作られている。
 

 
(*2)レイト・ハーヴェスト:通常の収穫時期よりも遅く収穫することによって、葡萄の糖度を上昇させる。糖度が上がり過ぎると酸度が落ちたり、病害が発生するリスクもある。


 
<ソムリエプロフィール>
 
飛田 泰秀 / Yasuhide Tobita
 
The Flying Stones LLC
 
乃木坂しん オーナーソムリエ
 

1974年東京都出身

19歳で単身渡英し習得した語学力をもとに、都内イタリアンレストランサービススタッフとして飲食業界でのキャリアを開始する。

2002年 東京・銀座フランス料理「オストラル」。 同店移転オープニング業務にも携わる。

2006年 オストラル閉店に伴い、南青山のフランス料理「ランベリー」開業。支配人として2年間レストラン開業準備から運営の経験を積む。

(在職中、ミシュランガイド東京2008にて1つ星)

退職後、各種レストランの開業運営コンサルタントとして携わり、その経験を活かし、フランス料理「ラ・ロシェル溜池山王」入社。シェフソムリエとして新店舗開業を成功へと導く。

2012 年 東京・銀座日本料理店(当時3つ星)に支配人兼シェフソムリエとして入社。グループのフランス・パリ店の開業に伴い渡仏。開業準備から営業オペレーションなど全ての礎を築く。(在職中1つ星)

2016 年 6 月 日本料理「乃木坂 しん」を開業し独立。オープンから半年でミシュランガイド東京2017において1つ星を獲得。以降1つ星を維持

様々なイベントの企画や開発、育成、ワインスクールでの指導など幅広く活動している。

<乃木坂しん>

東京は赤坂、乃木神社にほど近い赤坂通り沿いに、料理人である石田伸二氏とともに開店させた会席料理店。お料理に合わせたワインや日本酒とのペアリングコースも楽しめる。

ミシュランガイド東京において1つ星の日本料理店